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「独身男性=極端に短命」というミスリード


数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う

 独身男性(67.2歳)の寿命は、有配偶者(81.6歳)のそれと比べて14年も短い的な通説があるが、大学で統計を学んだことで典型的な「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」パターンだと、穿った味方をする様になった。

 一説では独身だと食生活云々でどうとか抜かしているが、別に家事が苦手な女性が居るなら、逆にそれらを得意とする男性も居るだろう。あまりにもステレオタイプが過ぎるため説得性に欠ける。離別が72.9歳となっていることから、熟年離婚された場合に、そのケースが当て嵌まる可能性は無きにしも非ずだが、それでは死別の88.4歳と整合性が取れない。

 死別に関して掘り下げるなら、死別したから長生きする訳ではなく、妻を看取るほど長生きしたから死別となり、結果として4分類で最も長生きとなっているものと捉えるのが自然だろう。因果関係が逆だ。

 独身男性早死に説も同様で、既婚者の年齢分布は初婚年齢の平均値(31.1歳)から死亡までなのに対して、未婚者の年齢分布は15歳から死亡まで括られる構造上、母集団の属性が明確に異なり、単純比較しようがない。

 女性は未婚(81.6歳)、離別(80.9歳)、有配偶(78.6歳)、死別(91歳)と、先述した死別の性質を鑑みれば、他の3分類は大差ないため、男女差があるのは事実だが、男性は3K(キツい、汚い、危険)仕事に従事する割合が女性比で圧倒的に高いことも考慮する必要がありそうだ。

 危険の伴う現場仕事では、経験の乏しい若手の方が、ベテランと比べて危険予知能力が十分ではないことで死亡事故に遭う確率が高いことが想定され、若くして亡くなった場合は未婚に分類される確率も高い。

 そもそも生命保険の職業別危険分類からも窺えるように、3K仕事に代表されるブルーカラーは危険が伴うため保険料が割高な傾向にある反面、賃金水準は低い傾向にあり、逆にホワイトカラーは死亡リスクが低く、その上で高給な傾向にあることから、男性の年収と婚姻率の相関性を鑑みて前者が未婚、後者は既婚となる確率も高そうに思える。

 この論考は男女の自殺率の違いでも応用できそうだ。何かしらの問題を抱えている男性が自殺に至る前提であれば、何ら問題を抱えていない男性と比べた時に、前者が未婚、後者は既婚となる確率も高そうだ。やはり母集団の属性が明確に異なり、単純比較しようがないように映る。

 だからこそ、長生きしたいなら結婚せよ的な安直かつ(婚活市場における)強者の論理で煽ることが、子ども達に将来、ちゃんとした形で妻を持てる男になるべき的なプレッシャーを与え、それがどうにも実現できなそうだと悟った瞬間に悲観や絶望感に支配されれば、悪戯に自死を助長して、却って統計上の未婚男性の平均寿命を縮める可能性すら考えられ、「独身男性=極端に短命」は悪意のあるミスリードに映る。

既婚や長寿が良いこととされる風潮に違和感

 ここまでの背景を考えると、独身男性が早死にするのではなく、早死にする要素を持ち合わせている男性ほど、結果として未婚に分類される傾向にある可能性も十二分に考えられる。

 長生きしたいなら婚姻するべき論を発端とした弱者男性煽りも、その理屈なら婚姻したとて、離別された瞬間に寿命が9年縮むことになり、これだけでもちょっと何言ってるか分からないのに加えて、未婚比で寿命が5年強伸びたところで、婚姻期間中に自分ひとりの時間が無くなる代償を天秤に掛けたら、人生トータルの可処分時間は変わらないどころか、むしろマイナスとなる可能性も考えられる。

 更に刺激サイコパス的な発想を加えると、仮に故意に死別させても7年弱、未婚比で21年強も長生きできることになるため、不本意でも一度婚姻契約を結び、10〜20年程度の実刑判決を食らってでも死別した方が、未婚のまま居るよりも可処分時間がプラスとなる、末恐ろしいロジックとなる訳で、これがいかに頓珍漢なこじつけかが窺える。

 ここまでの屁理屈みたてが正しければ、独身男性を婚姻させるよりも、男女平等政策を徹底的に推し進めて、ホワイトカラーに限らず、ブルーカラーの男女比率もほぼ半々を義務付けて、労働内容も完全に同一とした方が、独身男性の寿命は伸びるだろう。労災の死亡事故と、男性稼ぎ手規範に起因するであろう自殺は減るのだから。

 参考までに、先述した母集団の年齢分布を考慮した上で2020年の統計を用いると、差は3.37年に留まる。孤独が寿命を縮めると言っても、14年も縮まる訳では無いということだ。

 何ならエビデンスとなっている論文も、私の読解力が残念でなければ、誰かと同居していれば、万が一急病で倒れても早期発見されて助かった命が含まれているが、独居だとそれがないみたいな物理要因と、社会的接点が無いことに依る精神要因、ふたつを統合して死亡率を出しているため、3.37年分の差の全てが後者とも断定できない。

 ここでも刺激サイコパス的な発想を加えると、既婚者になるほど稼ぎが良かったでのあれば、自ずと年金収入も手厚くなる一方で、医療費は高額療養費制度で上限が決まっている構造上、胃瘻や人工呼吸器を使ってでも、出来る限り長く生きて貰った方が、家族が経済的に助かる。

 故に無理矢理にでも長生きさせられてしまう、尊厳死の逆パターンで最期を迎える末恐ろしい可能性も考えられる訳で、先述した末恐ろしいロジックは違法なのに対して、こちらは合法であることを鑑みると、既婚や長寿が良いこととされる風潮に違和感すら覚えるが、いかがだろうか。


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