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誰でもわかる「よいしょ」と認知症予防の関係

「よいしょ」は、ただの口ぐせなのか

椅子から立ち上がる時に、思わず出る「よいしょ」。

床の物を拾う時。
階段を上がる時。
車から降りる時。
布団から起き上がる時。

何気なく聞き流している言葉ですが、僕はこの「よいしょ」には、その人の身体と脳の状態が少し表れている気がしています。

家族としては、つい「また言ってるな」と思うかもしれません。
でも、その一言の奥には、筋力、バランス、痛み、不安、集中、そして「今から動くぞ」という準備が隠れていることがあります。

「よいしょ」は、弱さの言葉ではなく、身体と脳が動き出すための小さな合図なのかもしれません。

立ち上がるだけでも、脳と身体は忙しい

椅子から立ち上がる。
これは簡単そうに見えて、実はとても複雑な動作です。

足を床につける。
身体を少し前に倒す。
太ももやお尻に力を入れる。
バランスを崩さないように立つ。
立ったあと、次にどこへ動くか考える。

ただ足の力だけで立っているわけではありません。
「立つ」という動作には、身体の力だけでなく、タイミング、注意、姿勢の調整、次の行動への判断も関わっています。

だから、立ち上がりに時間がかかるようになった時、それは単に「足腰が弱った」というだけではないかもしれません。

動き出すまでに時間がかかる。
立った後に少しふらつく。
何かにつかまらないと不安。
立ったはいいけれど、次に何をするか一瞬止まる。

こうした変化は、身体機能と認知機能の両方を考えるきっかけになります。

座っている時間が長くなると、暮らしも小さくなる

高齢になると、知らないうちに座っている時間が増えます。

テレビを見る。
食事をする。
少し休む。
そのまままた座っている。

もちろん休むことは大切です。
でも、座っている時間が長くなりすぎると、立ち上がる機会そのものが減っていきます。

立ち上がらないと、足の筋肉を使う機会が減る。
歩く回数が減る。
外に出るきっかけが減る。
人と話す機会も少なくなる。

つまり、座りっぱなしは身体だけの問題ではなく、生活の広がりにも関わってきます。

認知症予防というと、脳トレや記憶の話に目が向きやすいです。
でも実際には、「立つ」「歩く」「外に出る」「人と会う」という動きの積み重ねが、脳と暮らしを支えているのだと思います。

「よいしょ」が増えた時に見たいこと

もし身近な人の「よいしょ」が増えてきたら、ただ年齢のせいにする前に、少しだけ様子を見てみてもいいかもしれません。

立ち上がる時に手すりを探していないか。
椅子が低すぎないか。
足元が滑りやすくないか。
膝や腰に痛みがないか。
立ったあとにふらついていないか。
動くこと自体が面倒になっていないか。

ここで大切なのは、「ちゃんと運動して」と責めることではありません。

椅子を少し高くする。
立ち上がりやすい場所に手を置けるようにする。
床の物を減らす。
座りっぱなしの時間を少し区切る。
一緒にお茶を入れに立つ。
郵便物を取りに行く。
玄関まで一緒に歩く。

そういう小さな工夫で、「立つ機会」は少し増やせます。

立ち上がることは、生活をひらくこと

立ち上がることは、ただ姿勢が変わるだけではありません。

トイレに行く。
台所に行く。
玄関に向かう。
外に出る。
誰かに会いに行く。

すべては、立ち上がるところから始まります。

だから僕は、「よいしょ」と言いながらでも立ち上がれることは、すごく大事な力だと思っています。

軽やかに立てる日もあれば、時間がかかる日もある。
声を出さないと動き出せない日もある。

それでも、立ち上がるという行動の中には、「まだ自分で動こうとしている力」が残っています。

認知症予防は、特別なことだけではありません。
日常の中で、座ったままの時間を少し減らすこと。
立つきっかけを増やすこと。
動いた先に、人との会話や役割があること。

そういう小さな積み重ねが、脳と身体と暮らしを支えていくのだと思います。

最後に

「よいしょ」は、ただの年齢のサインではないかもしれません。

それは、身体が動き出すための合図であり、脳が次の行動に向かう準備でもあります。

大切なのは、「よいしょ」と言わなくなることではなく、
「よいしょ」と言いながらでも、自分で立ち上がれる暮らしを守ること。

その一歩が、トイレに行く力になり、台所に立つ力になり、外に出る力になり、人とつながる力になるかもしれません。

皆さんの身近な人は、今日どんな「よいしょ」をしていますか?


参考資料

・WHO「Physical activity」
身体活動は高齢者の転倒予防、認知的健康、睡眠、メンタルヘルスなどに関係するという視点を参考にしました。
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/physical-activity

・WHO「WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour」
高齢者を含む成人に対して、身体活動を増やし、座りすぎを減らすことが健康に重要であるという考え方を参考にしました。
https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128

・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
高齢者における身体活動、筋力トレーニング、座位行動を減らすことの重要性について参考にしました。
https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf

・CDC「STEADI - 30-Second Chair Stand Test」
椅子からの立ち上がりが、高齢者の下肢筋力や持久力を見る一つの評価として使われている点を参考にしました。
https://www.cdc.gov/steadi/hcp/clinical-resources/index.html

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