見出し画像

小説版ネオ・セラフィス 第4話「喪失」

「発見」

機械みたいな声だった。

「対象コード確認――朝霧柊弥」

空気が凍る。

「……は?」

意味が分からなかった。

どうして、
自分の名前を知っている。

兵士が迷いなく銃口を向ける。

赤い照準光が、
柊弥の胸元に重なった。

桜乃が小さく息を呑む。

「柊弥くん――」

その瞬間だった。

銃声。

世界が、
爆ぜた。

何が起きたのか分からなかった。

ただ、
強い衝撃と一緒に、
桜乃の身体がこちらへ倒れ込んできた。

「……え」

時間が止まる。

桜乃の手が、
柊弥の制服を掴んでいる。

細い指が、
微かに震えていた。

「……さ、くら……の?」

声がうまく出ない。

白いシーツの上に、
赤が広がっていく。

信じられないくらい、
鮮やかな赤だった。

桜乃は何かを言おうとしていた。

けれど、
うまく声にならない。

柊弥の頭の中から、
音が消えていく。

心電図の音も、
警報も、
兵士の足音も、

全部遠かった。

ただ、
桜乃の唇だけを見ていた。

「……ご、め……」

違う。

謝るな。

そんな言葉、
聞きたくなかった。

兵士が再び銃を向ける。

「対象生存確認。
 再処理を実行――」

その瞬間。

空気が、
揺らいだ。

淡い白い光が、
柊弥の周囲に滲み始める。

まるで、
どこか遠くから呼ばれているみたいだった。

兵士たちがざわめく。

「反応値上昇――!?」

「ゲート接続を確認!」

「あり得ない、ここで発現するはずが――」

言葉の意味は分からない。

柊弥は、
ただ桜乃を抱きしめていた。

離したくなかった。

まだ温かかった。

だから。

行きたくなかった。

けれど光は、
容赦なく世界を塗り潰していく。

桜乃の姿が、
白の中へ溶けていく。

「……嫌だ」

初めて、
声が出た。

「待ってくれ……!」

伸ばした指先が、
空を掴む。

その瞬間――

視界が、
完全な白に呑み込まれた。


続きはこちら↓↓↓

いいなと思ったら応援しよう!