円安162円で関西企業42%がマイナスと答えた理由

今、円安が39年ぶりの水準を更新し続けている。その痛みが数字として可視化された。

> 円安メリットは大企業のもので、中小企業には関係ない話だった。

この記事のポイント

・関西952社の42%が円安を「経営にマイナス」と回答

・中小企業の「プラス」回答率は前回から半減し2.24%まで低下

・望ましいレートの平均は137円で、現実との乖離は約25円

何が起きたか

東京商工リサーチが2026年6月1日〜8日、近畿2府4県の企業を対象に円安に関するアンケートを実施した。有効回答

952社

を分析したところ、「マイナス」と答えた企業は

42.23%

で最多。「影響はない」が38.66%、「プラス」はわずか2.52%だった。企業が望む為替レートの平均値は1ドル=137.2円。調査時点の159円前後とは約22円、7月1日時点の162円台とは約25円の乖離がある。

なぜ関西の中小企業だけが円安の恩恵を受けられないのか

まず、企業の内部構造の問題がある。円安でメリットを得るには「海外に売るもの」か「海外から稼ぐ仕組み」が必要だ。関西の中小企業の多くは国内需要向けの製造・卸売・小売が中心で、輸出の受け皿になっていない。円安が進んでも売上は円建てのまま。一方でコストだけが輸入物価の上昇とともにじわじわ膨らむ。この非対称性が、中小企業の「プラス」回答率を

2.24%

という壊滅的な数字に押し込んだ。

実際に現場で何が起きているかというと、卸売業が最もわかりやすい。今回の調査で「マイナス」と答えた比率が最も高かったのは卸売業の53%で、製造業52%、小売業48%が続いた。輸入品を仕入れて国内に流す構造だと、仕入れコストが円安で上がり続けるのに、販売価格への転嫁は競争上の制約で遅れる。この「コスト先行・価格転嫁後追い」のサンドイッチが、中小企業の収益を削っている。

法律・監督当局の観点で見ると、政府・日銀は2026年4月末に

11兆円超

の為替介入を実施した。しかし調査時点(6月)でも円は159円前後。介入の効果は短命だったとされている。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏の分析によれば、今の円安は投機の円売りだけでなく、日本の貿易赤字という「実需の円売り」が構造的に重なっており、介入で流れを反転させることが以前より困難になっているとみられる。つまり、政策ツールの効果が構造的に落ちている。

業界全体のトレンドとして見ると、前回調査(2024年6月)と今回の比較に重要な変化がある。「マイナス」と答えた中小企業の割合は前回より大幅に減少した。これは状況が改善したのではなく、長らく続く円安への「慣れと対応」が進んだ結果と考えられる。価格転嫁、仕入れ先の切り替え、円安前提での事業計画への修正。それでもなお、4割超がマイナスと言い続けている現実は、適応の限界を示している。日銀の2026年3月短観でも、大企業製造業の想定為替レートは1ドル=150円10銭で、現実の162円台とはすでに大きくズレていた。大企業ですら想定を超える円安が続いているのだから、ヘッジ手段の乏しい中小企業への打撃はより深刻になる。

この数字を企業リスクの読み方に引き寄せると

私がコンサル時代に何度も見たパターンがある。経営者が「うちは為替の影響を受けにくい内需型です」と言うケースだ。でも実際にコスト構造を分解すると、輸入原材料・輸送費・エネルギーコストが積み重なっていて、気づかないうちに為替エクスポージャーを抱えていた。関西の中小企業の多くはまさにこれだったと思う。「直接輸出していないから大丈夫」は、円安が穏やかな時代の話だ。

今回の調査で私が最も注目したのは「望ましいレートの平均値137.2円」という数字だ。これはホンネのリサーチ結果として読むべきで、つまり現実の162円との25円の乖離は、企業の事業計画が設計された前提からの逸脱幅を示している。この乖離が続くほど、特にキャッシュフローの余裕が薄い中小企業から順に、倒産リスクが積み上がっていく。東京商工リサーチの担当者も「卸売業や製造業などの中小企業を巡る倒産につながっていく可能性がある」とコメントしている。数字は既にそれを示唆している。

私自身が今この状況をどう読んでいるかというと、「円安は輸出産業に有利」というニュースの語られ方が、中小企業の現実を隠してきたと感じている。大企業の製造業や半導体関連は確かに恩恵を受けた。でも関西の952社の内訳を見れば、メリットを享受できた「プラス」はわずか2.52%。圧倒的多数は恩恵の外にいた。この非対称性こそが、円安報道の最大の盲点だったと私は判断している。


円安メリットの恩恵は大企業に集中し、中小企業のコスト負担として静かに蓄積し続けた。

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