ハイテク株だけ上がる理由をセクターローテーションで読む
日経平均が6万5000円台をつけながら、自分の持ち株は下がり続けている。この「全体は好調なのに自分だけ取り残される」感覚、今まさに多くの個人投資家が直面している構造問題だ。
> 業績が良くても、株価は「どの業種か」で全然違う結果になる。
この記事のポイント
・全33業種のうち17業種が今期減益見込み
・セクターローテーションがハイテク一極集中を生んでいる
・業績と株価の乖離には業種ごとのメカニズムがある
何が起きたか
6月2日、日経平均株価は3日ぶりに反落し、終値は
66,734円(前日比−200円)
となった。中東情勢の緊迫化を受けた原油高で、一時は
65,551円(−1,383円)
まで売り込まれた。東証プライム全体では7割の銘柄が値下がり。一方でソフトバンクグループは上場来高値を更新、キオクシアホールディングスも今年に入ってから株価がおよそ7倍になった。同じ市場の中で、明暗がくっきりと分かれた一日だった。
なぜハイテク株だけが上がり、残りが沈んでいくのか
キオクシアホールディングスの2027年3月期の経常利益は、前期比で8倍近くに膨らむと市場に期待されている。前期の経常利益は
7,840億円
で、その8倍近くという数字が株価を7倍に押し上げた。これは業績の話ではなく、「将来の業績期待の爆発」の話だ。ハイテク株は通期予想を開示しないケースが多く、市場は想像力で株価を織り込んでいく。だからこそ、既存のバリュエーション指標では説明しきれない上昇が起きる。
一方で、同じ市場に存在する任天堂は今期
20.7%の減益
を見込んでいる。トヨタ自動車も
17.9%の減益予想
だ。業種別株価指数で見ると、「その他製品」は−14.45%、「輸送用機器」は−9.51%と大きく沈んでいる。個人投資家が「業績は好調と聞いていたのに…」と感じるのは、「業績全体」と「自分が持っている業種の業績」が全く別の話だからだ。ここにセクターローテーションの本質がある。
実際に影響を受けているのは、業績が安定しているのに株価が報われない企業と、その株主だ。伊藤園はその典型で、2026年4月期の営業利益は前期比
5.6%減の216億円
の見込み。さらに翌期は7.8%減と、3期連続の減益予想になった。売上高はわずかに増えているのに、緑茶原料や資材コストの高騰が利益を削り続けている。コスト構造が変わらない限り、業績の回復は見通しにくいと考えられる。こうした銘柄に資金を置いている投資家は、「企業は悪くないのに株価が上がらない」という経験を今まさにしている。
規制・市場環境の観点で見ると、日銀の利上げが銀行・証券株を押し上げている構図も見逃せない。10年物国債の入札が好調で長期金利が一時低下したことが投資家心理を改善させ、6月2日も銀行・証券株は堅調だった。金利が動く環境では、金融セクターが相対的に有利になるというのは、ダイヤモンド誌が指摘する業種別増減益率の集計データにもはっきり表れている。「化学」と「銀行業」が増益率上位に並び、業種別株価指数も堅調という結果だ。
業界全体のトレンドとして、AI・半導体への投資集中が加速している。エヌビディアが高性能AI対応の新型半導体を発表し、そこにアーム・ホールディングスの技術が採用されたことで、アームHDの株価は1日で
+15.72%
急伸した。これがソフトバンクグループの株価を押し上げた。資金はAI関連に集まり、それ以外から出ていく。このセクターローテーションのメカニズムが、日経平均の高値と個人投資家の体感の乖離を生んでいる。
私が今この市場を見ながら考えていること
私がコンサル時代に感じたのは、「平均は嘘をつく」という事実だ。クライアントの業界全体の売上が5%成長していても、個社レベルでは20%成長と15%下落が混在していることがざらにあった。今の日本株市場はまさにそれで、「企業業績は堅調」という報道の裏側で、33業種のうち17業種が減益見込みというのがリアルだ。デイリーZAiの集計データはそれを可視化している。
私が動いたとしたら、まず「増益業種の中でも、株価がまだ織り込んでいない銘柄はどこか」を探す作業から入る。非鉄金属セクターは業種全体で1.2%の減益見込みにもかかわらず、株価指数が+93.34%という異常な上昇をしている。フジクラの9.3%増益が市場期待を下回り話題になったように、期待値と実績のギャップが大きい業種は上値が重くなるリスクをはらんでいると見ている。
三越伊勢丹ホールディングスの5月既存店売上高が前年同月比+10.7%という数字は、訪日外国人減少の報道を覆す結果だった。百貨店株は6月2日に大幅高となっている。これは「セクターへの悲観が行き過ぎていた場所に、実績が追いついた瞬間」だ。私は市場のコンセンサスが悲観に傾きすぎている業種を定期的にチェックする習慣があって、こういう動きはその典型例として頭に刻んでいる。
全体の平均ではなく、どの業種に資金が流れているかを見ること。それが今の市場を読む唯一の軸になっている。

