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どうして字を書くのが苦手なの? 今日からできる やさしい保護者さまのかかわり方


「何度練習しても、字を書くのを嫌がるんです。」

「お友達は書けるのに、うちの子はどうして…。」

保護者さまから、このようなご相談をいただくことがあります。

宿題の時間になると、鉛筆が止まってしまう。

字を書く前から「できない」と言って泣いてしまう。

一文字書くだけで、とても疲れてしまう。

何度練習しても、なかなか字の形が整わない。

そんな姿を見ると、

「もっと練習した方がいいのかな。」

「やる気がないのかな。」

「私の教え方がよくないのかな。」

と心配になりますよね。

でも、字を書くことの苦手さには、さまざまな理由があります。

「練習不足」や「やる気」の問題だけではありません。

実は「字を書く」ということは、大人が思っている以上に、身体と脳のたくさんの力を同時に使う、とても複雑な作業なのです。

今日は、

「どうして字を書くのが苦手なの?」

という子どもの姿の奥にある理由を、一緒に考えてみましょう。

🌸どうして字を書くのが苦手なの?

私たち大人は、何気なく鉛筆を持って字を書いています。

でも、子どもが一文字を書くためには、

・姿勢を保つ
・肩や腕を安定させる
・鉛筆を持つ
・指先を細かく動かす
・鉛筆にかける力を調整する
・お手本を見る
・文字の形を捉える
・見た形を覚える
・手元を見ながら手を動かす
・マスや行の位置を確認する
・書き順を思い出す
・集中を続ける

など、たくさんのことを同時に行っています。

つまり、お子さんは「字を書くこと」が苦手なのではなく、

「字を書くために必要ないくつかの力が、まだ育っている途中」

なのかもしれません。

🌸「微細運動」ってなに?

手や指を使った細かな動きを「微細運動」といいます。

鉛筆を持つ、ボタンを留める、ハサミを使う、折り紙を折る、箸を使うといった動きにも関係しています。

この力がまだ十分に育っていないと、鉛筆を強く握りすぎたり、反対に力が入らなかったりすることがあります。

一文字書くだけでも、手がとても疲れてしまうこともあります。

そんなときに、字を何度も書かせることだけが練習になるわけではありません。

粘土やブロック、洗濯ばさみ、折り紙、お絵描きなどの遊びも、書くための大切な土台づくりになります。

🌸「目と手の協応」も大切です

字を書くときには、「見ること」と「手を動かすこと」を連携させています。

これを「目と手の協応」といいます。

たとえば、○を見ながら同じ○を描く。

線を見ながらなぞる。

お手本を見て、同じ場所に線を書く。

こうしたことも、目から入った情報に合わせて手を動かす力が必要です。

そのため、文字そのものは分かっていても、見た形の通りに手を動かすことが難しいお子さんもいます。

🌸「視知覚」の違いが関係していることもあります

「見る」というと、視力を思い浮かべるかもしれません。

でも、目に入った情報を脳で捉え、形や位置、向きなどを理解する力も大切です。

これを「視知覚」といいます。

たとえば、

「さ」と「ち」

「わ」と「ね」

「シ」と「ツ」

のように、形や向きが似ている文字を見分けるためにも使われます。

視力に問題がなくても、形や位置関係を捉えることに苦手さがある場合があります。

🌸タイプ① 指先を動かすことが苦手なタイプ

鉛筆を持つことや、細かい動きが苦手なお子さんです。

鉛筆を強く握りすぎる。

筆圧がとても弱い。

手首ではなく腕全体を大きく動かして書く。

少し書いただけで「疲れた」と言う。

このような姿が見られることがあります。

字を書く練習だけではなく、遊びの中で手や指を使う経験を増やしていきましょう。

🌸タイプ② 見たものを写すことが苦手なタイプ

黒板やお手本を見ながら書くことが難しいお子さんです。

黒板を見る。

文字を覚える。

ノートに目を戻す。

書く場所を探す。

覚えた文字を書く。

実は「板書」だけでも、これだけの作業を繰り返しています。

そのため、「黒板を写すのが遅い=勉強ができない」ということではありません。

お手本を手元に置くなど、見る場所と書く場所を近づけるだけで負担が軽くなる場合もあります。

🌸タイプ③ 姿勢を保つことが苦手で疲れやすいタイプ

字を書くのは、手だけの作業ではありません。

身体を安定させて座り続ける力も必要です。

姿勢を保つことにたくさんのエネルギーを使っているお子さんは、少し書いただけでも疲れてしまうことがあります。

机に伏せる。

姿勢が崩れる。

椅子から何度も立つ。

「もうやりたくない」と言う。

そんな姿も、

「やる気がない」

のではなく、

「もう身体が疲れたよ」

というサインなのかもしれません。

🌸タイプ④ 失敗することが不安なタイプ

「間違えたらどうしよう。」

「きれいに書けない。」

「先生に直されるかもしれない。」

そんな不安から、最初の一文字が書けなくなってしまうお子さんもいます。

何度も消しゴムで消したり、少し形が違うだけで最初から書き直したりすることもあります。

そんなときは、きれいに書くことよりも、

「書いてみようと思えたこと」

を大切にしてあげたいですね。

🌸「ディスグラフィア(書字障害)」という特性もあります

書くことへの苦手さがとても強い場合、「ディスグラフィア」と呼ばれる書字の困難が関係していることもあります。

ディスグラフィアは、単に

「字が汚い」

「練習が足りない」

「本人が頑張っていない」

ということではありません。

たとえば、

・文字の形を整えて書くことが難しい
・マスや行の中に文字を収めることが難しい
・文字の大きさが揃いにくい
・似ている文字を間違えやすい
・鏡文字になることがある
・漢字を覚えても、書こうとすると出てこない
・黒板を書き写すことにとても時間がかかる
・書くことに強い疲労を感じる
・話せば答えられるのに、文章に書こうとすると難しい

など、「書く」という活動に大きな負担が生じることがあります。

ここで大切なのは、

「字を書くのが苦手=ディスグラフィア」

ではないということです。

書字の苦手さには、手指の発達、姿勢、視知覚、目と手の協応、注意や記憶など、さまざまな要因が関係しています。

一人ひとり、つまずいている場所は違います。

🌸「何度も書けば覚える」とは限りません

私たちはつい、

「書けないなら、もっと練習すればいい。」

と考えてしまいます。

もちろん、適切な練習によって身につくこともたくさんあります。

でも、書くこと自体に大きな困難を抱えているお子さんの場合、同じ文字を何十回も書かせることが、大きな負担になることもあります。

頑張っているのにうまく書けない。

何度書いても直される。

周りのお友達は終わっているのに、自分だけ終わらない。

そんな経験が続くと、

「字を書くのが嫌い。」

「勉強が嫌い。」

「どうせ自分にはできない。」

という気持ちにつながってしまうことがあります。

だからこそ、

「たくさん書いたか」

だけではなく、

「その子がどこで困っているのか」

を見ることが大切です。

🌸発達性協調運動症(DCD)が関係する場合もあります

書字の苦手さの背景に、身体の動かし方や運動の協調に難しさをもつ「発達性協調運動症(DCD)」などが関係している場合もあります。

たとえば、

・ボタンを留めることが苦手
・ハサミや箸などの道具を扱うことが難しい
・縄跳びやボール遊びが苦手
・靴ひもを結ぶことが難しい
・手先を使う活動に時間がかかる

など、書字以外の場面でも不器用さが見られることがあります。

もちろん、こうした姿があるからといって、すぐにDCDと決まるわけではありません。

大切なのは、診断名を探すことよりも、

「この子は、どこに大変さを感じているのだろう?」

という視点で見てあげることだと思います。

🌸今日からできる やさしい保護者さまのかかわり方

①「字を書く練習」だけにこだわらなくても大丈夫です

粘土をこねる。

折り紙を折る。

洗濯ばさみを使う。

ブロックを組み立てる。

お絵描きをする。

シールを貼る。

こうした遊びも、手や指、目と手の協応などを育てる経験になります。

遊びの時間も、大切な成長の時間です。

②「きれいな字」より「書こうとしたこと」を認めましょう

「一文字書けたね。」

「最後まで頑張ったね。」

「さっきより書きやすそうだったね。」

結果だけではなく、取り組んだ過程を見つけて伝えてあげましょう。

③ 疲れる前に休憩を取りましょう

長い時間頑張らせるより、

「5分やったら少し休もう。」

と区切ることで、取り組みやすくなることがあります。

休憩は「さぼること」ではありません。

また取り組むために必要な時間です。

④ お手本を近くに置いてみましょう

黒板とノートを何度も見比べることが難しい場合は、お手本を手元に置くだけでも負担が軽くなることがあります。

大きなマス、補助線、見やすいお手本など、その子が分かりやすい方法を探してみましょう。

⑤ 書く量を調整することも一つの方法です

10回書くことが難しければ、まずは3回。

長い文章が大変なら、一部分だけ。

「全部できること」を目標にするのではなく、

「無理なく取り組める量」

から始めることも大切です。

⑥ 必要に応じてタブレットやキーボードも活用しましょう

「字を書くこと」と「自分の考えを伝えること」は、同じではありません。

書字に大きな負担がある場合には、タブレットやキーボード入力、口頭で答える方法などを取り入れることも、その子の学びを支える方法の一つです。

「書けないから学べない」

とならないように、その子に合った表現方法を一緒に探していきたいですね。

⑦ 比べるなら「昨日のその子」と

「お友達はもう書けているのに…。」

そう思ってしまうこともあると思います。

でも、発達のペースは一人ひとり違います。

「昨日より一文字多く書けたね。」

「前より鉛筆が持ちやすくなったね。」

そんな小さな変化を見つけてあげてください。

🌸困りごとが大きいときは、一人で抱えなくても大丈夫です

練習を続けても書字の困難さがとても強い。

書くことを極端に嫌がる。

学校の勉強についていくことが難しくなっている。

書くことが原因で自信をなくしている。

そんなときは、学校の先生や専門機関などに相談し、

「なぜ書けないのか」

ではなく、

「書くための、どの部分に困っているのか」

を一緒に考えてもらうことも大切です。

🌸花音からのメッセージ🌸

字を書くことは、大切な力の一つです。

でも、「きれいな字を書けること」だけが、子どもの学ぶ力ではありません。

お話なら、とても上手に伝えられる子。

頭の中には、たくさんのアイデアが浮かんでいる子。

図や絵なら、自分の考えを表現できる子。

一人ひとり、得意な方法は違います。

字を書くことに時間がかかる子どもを見たとき、

「どうして書けないの?」

ではなく、

「どこが難しいのかな?」

と考えてみてください。

そして、

「書けない」のではなく、

「書くために、人よりたくさんの力を使っているのかもしれない。」

そんなふうに見てあげてほしいと思います。

遊びの中で育つ力。

生活の中で身につく力。

毎日の小さな経験が、少しずつ「書く力」につながっていきます。

今は遠回りに見えることも、実はその子にとって必要な道なのかもしれません。

できないことを何度も練習するより、

「できる方法」を一緒に探してあげる。

そして、

「できなかったこと」より、

「今日できたこと」を一緒に喜んであげる。

その積み重ねが、

「もうやりたくない」

を、

「ちょっとやってみようかな」

に変えていくのだと思います。

焦らなくても大丈夫です。

お子さんは、お子さんのペースで、一歩ずつ成長しています。

その小さな一歩に気づいてもらえることは、子どもにとって大きな力になります。

今日も、お子さんの成長を信じて寄り添っている保護者さま、本当にお疲れさまです。

明日も、お子さんらしい笑顔がたくさん見られますように。🌸

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