あなたの知らない印刷の世界 #009校正用語は、ほぼ暗号です。トルツメイキママ…
印刷の仕事を始めて、最初に戸惑ったことのひとつが校正用語だ。
先輩が赤ペンで原稿に書き込んでいく。
「トル」「ツメ」「イキ」
日本語のはずなのに、意味がわからない。
まず「トル」。
これは「取る」が語源で、該当する文字や画像を削除するという意味だ。
シンプルだが、最初は「何をトルのか」が読めなかった。
次に「ツメ」。
文字や行の間隔を詰める、という指示だ。
反対に間隔を広げるときは「アケ」という。
ツメてアケる。なんのことやら。
そして「イキ」。
これが一番混乱した。
一度「トル」と指示した箇所を、やっぱり元に戻す、つまり「生かす」という意味だ。
削除の取り消しに「イキ」と書く。
消すと言ったり、生かすと言ったり、忙しい。
他にも「ママ」という用語がある。
「そのままにしておいて」という意味だ。
原稿に「ママ」と書いてあると、最初は、急に恋しくなったのかと思った。
違う。
校正用語は、長年の現場から生まれた言葉だ。
短くて、素早く伝わる。慣れれば便利。
慣れるまでは、ほぼ暗号である。
別に知らなくてもいい話でした。
