静かに根を張る時間。
「分かってほしかった。」
誰かとのすれ違いを思い返すたびに、
そんな言葉が心に浮かぶことがある。
相手が離れていった。
分かってもらえなかった。
受け入れてもらえなかった。
そう思っていた出来事も、
時間が経つと、
ふと立ち止まる瞬間がある。
本当は、
自分の気持ちを言葉にできていただろうか、と。
察してほしい。
気づいてほしい。
言わなくても分かってほしい。
そんな願いは、
誰の心にもある。
でも、
その願いが大きくなるほど、
私たちは言葉を減らしてしまう。
傷つくことを恐れて、
心を閉じる。
伝わらないもどかしさを、
相手のせいにしてしまう。
けれど、
伝えることは、
相手を変えるためではない。
自分の輪郭を、
見失わないためなのだと思う。
相手の反応で自分の価値を決めず、
相手の機嫌で心を揺らし続けないために、
自分の思いを言葉にする。
それは、
自分という存在に、
静かに根を張ることなのかもしれない。
木は、
風を止めることはできない。
枝も葉も揺れる。
嵐の日だってある。
それでも倒れないのは、
見えない場所で、
根を伸ばし続けているからだ。
私たちも、
同じなのだと思う。
言葉にできない日があってもいい。
言葉にしたくない日があってもいい。
それは心が揺らいでいるのではなく、
もっと深く根を張るための時間なのかもしれない。
見えない場所で伸びた根は、
いつか風の強い日にも、
等身大の自分を支えてくれる。
人との関係に必要なのは、
風に揺れない強さではない。
風に揺れても、
自分がどこに立っているのかを忘れないこと。
そのために、
今日も静かに根を張っていたい。
