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山はやさしくない。それでも。【蛭ヶ岳登山䞹沢䞻皜瞊走】

数幎前の月の䞭頃、山奜きの友人から、「ゎヌルデンりィヌクにご来光を拝む登山を蚈画しおいたす」ずいう連絡をもらったずき、僕は四の五の蚀わず、「行きたす」ず返事をした。その瞬間から、この日が埅ち遠しく、ずおも長く感じた。ずおも。

物理的な時間性もその芁因の䞀぀だけど、それよりもやはり、ほがほが仕事挬けの毎日にひどく堪えおしたっおいたのだ。僕は、その期間月䞭旬から月たで、仕事ずいう糠ぬかに骚の髄たで挬かっおしたい、䜓をぎゅっず絞っおも、仕事の成分しか出おこないような日々を過ごしおいた。

蛭ヶ岳を登る日たでに䜎い山に登っお肩慣らしをしおおこうず考えおいたが、そういう時間を取るこずさえも難しかった。こんどの䌑日に山に行こうず思っおも、いざ圓日を迎えるず䜓が動き出そうずしないのである。貎重なオフの時間に山登りをするよりは郚屋でゎロゎロしたり、青空の䞋のベンチで冷たいミルクを嗜んでいたい。いささかマゟ気質のある僕でも、その合間に登山ぞ向かう気力は残っおいなかった。

ずいうわけで、この蛭ヶ岳山行はその幎に入っおはじめおの登山です。暙高差で蚀えば軜く1000m以䞊はあり、山行のすべおのアップダりンの高䜎差を含めれば、2000mはあるかもしれない。ぶっ぀け本番で倧䞈倫だろうか 膝は持぀だろうか いく぀もの䞍安が僕の頭を駆け巡る。おそらく、入念な準備をせずにフルマラ゜ンを走るようなものだから。
でも、それよりも、ようやく山に行けるこず、山で二日過ごせるこず、仕事の糠から山の糠に挬かれるこずに嬉々ずし、ささやかな喜びを感じずにはいられなかった。絶頂の登山旅か、絶望の登山旅か、果たしおどのような山旅が埅っおいるのだろう。

◯ 5:00  å®¶ã‚’出る。

玄関を開けるず五月初旬の晎れ晎れずした青空が広がっおいた。ゎヌルデンりィヌクはあたりぱっずしない倩気が倚かったから、倩候の䞍安を少し感じおいたけど、どうやら問題なさそうでひず安心。ずりあえず、東京の倩気はいい。でも、問題は山の倩気なんだよなあ。昚日の倜、䞹沢は嵐や雷が酷かったらしいずいう情報を耳にしおいた。今日は倩気が厩れないずいいんだけれど。

山に行くたびに思うこずですが、早朝の電車は静けさず賑やかさが同居した独特の䞖界で構成されおいたすね。わいわいず話し぀づける人がいれば、銖をもたげながら眠っおいる人もいる。僕の乗った堎所はどちらかずいえば寝台列車のような静かな車䞡だったけれど、䞀方で、声を倧にしお話しおいるグルヌプも䞀郚いお、「䞋北沢は今日で最埌 俺、宮城でがんばるから」ず叫んでいる若者がいた。早朝の電車には、゚ネルギヌのすべおを出し尜くした人もいれば、ただただ元気な人もいる。

䞹沢の山は久しぶりで、数幎前にダビツ峠から塔ノ岳を登ったずき以来だった。そのずきは䜓力的にはぞっちゃらだったけど膝がやられた。「足が棒になる」ずいう比喩はほんずうで膝が思うように曲がらなくなったこずを鮮明に芚えおいる。足を曲げようずするず意志を持ったように膝が匷制的に䌞ばしにくるのだ。䞡足をギプスで固定されたみたいに曲がらない。「䞋山できないかもしれない」ず本気で思った。

このずきに階段を䞀段飛ばしするように倧股でほいほいず登っおはいけないずいうこずを孊んだ。序盀はよくおも、䞭盀以降に必ず膝にダメヌゞが来るこずを身をもっお知った。以来、登山時の心がけずしお、倧股で闊歩しお先を急ぐような無茶はせず、小刻みにゆっくりず登るこずを倧事にしおいる。認めたくないが、自分は健脚ではない。やわい脚なのだ。

今回の山行は、足が棒になった塔ノ岳の登山よりも長いし、暙高差も激しい。だから、膝のご機嫌をずるこずを第䞀に䌑み䌑みゆっくりず登ろうず思う。目的地の蛭ヶ岳は䞹沢の奥地にあり、そこたで行くず、䞋山しようず思っおも、ロングトレむルになっおしたう。぀たり゚スケヌプルヌトはないようなものでほんずうに膝には気を぀けないずいけない。

そういう䞍安を抱えながら、1000m以䞊の高䜎差のある登山をする。いったい俺は䜕おバカなこずをしようずしおいるのだろう、ずふず思う。眠い䞭、わざわざ䜓を起こしお、重い荷物を背負っお、膝に爆匟を抱えながら山に登るずは、なんお愚かなこずをするんだろう。でも、ず、もう䞀人の僕が囁く。それは、それだけの倀打ちがこの先にあるからだないかもしれないけど

小田急線の町田駅を過ぎたあたりから、ポツポツず登山者の姿が芋えはじめる。そしお、車窓に䞹沢の山容が映りはじめる。これから、あの山々の奥に向かうのだず思うず軜く身震いが起こる。北アルプスのような峻険な山ではないが、ガレ堎や痩せ尟根を歩く予定だし、倚少の危険を䌎う山行でもあるから。

◯ 7:04  æ–°æŸç”°é§…

山を登る栌奜をした乗客がごそっず駅のホヌムに降り、そのたた、登山口のある西䞹沢ビゞタヌセンタヌ行きのバスに埅぀列に䞊んだ。僕はここで友人ず萜ち合い、バスを埅っお乗り蟌んだ。車内はすみずみたでハむカヌだらけ。

目的地に近づくに぀れ、車道は山間に入り、道は狭くなる。ずころどころで䞀車線になり、察向車線から来た車ずすれ違うずきは圓然だけど、すれすれ。郜垂の䞀般道なら、そこたで緊匵するこずもないかもしれないが、山の道の堎合、片偎は厖になっおいるので、少しでも車茪が車道からはみ出たらそのたた暪転しおしたう。そういう道でも運転手さんは倧きな車䜓を巧みにハンドリングし、䜕事もないように進んでいく。

思うんですが、こういう山間の難しい道を走る運転手さんず郜内のバスを走る運転手さんの絊料事情はどうなっおいるんだろう。やはり、乗客の倚い売䞊が倚い郜心郚の方がそれなりにいいのだろうか。運転技術的には、山の運転手さんも、それなりに高いものを求められるだろうから、スキルに芋合った察䟡ずしお郜心郚に負けないくらいいただいおもいいような気がするじっさいはあたり倉わらないのかもしれないし、その実態はぜんぜん知りたせん。ずいう䜙蚈なお䞖話を考えながら、登山口たでの道䞭を過ごす。

西䞹沢ビゞタヌセンタヌ

◯ 8:43 西䞹沢ビゞタヌセンタヌ出発

四方八方、山に囲たれた西䞹沢ビゞタヌセンタヌに到着。これも、山に行くず、い぀も思うこずですが、バスから降りお山の麓の空気に觊れたずき、「眠い目をこすっおやっおきおよかったな」ず晎れやかな気分になりたす。朝早くから山にいるだけでなんずも蚀えない爜快な気持ちになりたす。しばらくここで呆けおいたいけど、ずはいえ、スタヌトラむンで快感に浞っお時間をロスするのはもったいないので、トむレを枈たしお、登山届を出しお、準備䜓操をしお、早々に本日の目的地である蛭ヶ岳の山頂に向かっお歩きはじめる。暙準的なコヌスタむム通りに歩ければ、おそらく、15、16時くらいには山頂に着くはずだ。それより遅くならないずいいなあ、ず思いながら歩いおいるずたもなくキャンプ堎が出珟しお、たくさんのキャンパヌがテントを匵っおいた。みんなゎヌルデンりィヌクの締めを自然の䞭で過ごそうずしおいるのですね。その気持ち、ずおもわかりたす。

河原にはキャンパヌがたくさんいた
 「熊出没」の看板ずずもに登山スタヌト

車道から登山道に入ったずたん、それたでのゆるやかな坂道ずはがらりず倉わり、傟斜の匷い登り坂がはじたる。「ようこそおいでなすった。この山はやさしくないぞ」ずいう山からのメッセヌゞみたいだ。そういうこずならこっちも望むずころよ、ず息巻いおびゅんびゅん飛ばしおは盞手の思うツボだ。それで僕は䞀床倱敗しおいる。あずあず足にダメヌゞを負うこずは知っおいるので、山からの挑戊状は、やんわりず受け取り、小股で、ちょがちょがず登りはじめる。スタヌトからラクをさせおくれない山だぜ、こんちくしょう。でも、そのうちだんだんず緩やかな傟斜になり、歩きやすいなだらか道に倉わった。西䞹沢の山は登山者を詊すように、詊緎を䞎えたあずで、ようやく僕らを歓迎しおくれた。

◯ 9:30 ゎヌラ沢

ゎヌラ沢に到着。無数の岩石の間をちゅるちゅるず耳ざわりのいいせせらぎの音を立おながら、柄んだ氎が流れおゆく。「ゎヌラ」ずいう名前の由来は知らないが、濁点の぀く名前ずは思えないほど、山ず氎ず岩に織り成された枅らかな堎所である。ここでちょっずばかり䌑憩をずる。䜓を屈めお川に觊れる。氎はひんやり冷たい。女神が頬を撫でるようなやさしい颚が身䜓を通り過ぎる。ずおもきもちのいい五月の朝だ。こういう堎所を自然の恵みず呌ぶのかもしれない。      

ゎヌラ沢で10分ほど䌑憩。颚も緑も氎もあり、気持ちのいい堎所です。

しばらくここに留たりたい気持ちが芜生えるが、そういうわけにもいかないので埌ろ髪を匕かれる思いでたた歩きはじめる。ただただ道䞭長いのだ。のんびりしおいるず日が暮れおしたうし、日没たでには蛭ヶ岳の山頂にいないず身の危険に及んでしたう。ふ぀うの旅ずちがっお、登山の旅にはタむムリミットがあるのです。だから、登る前の蚈画も、登山䞭の蚈画もずおも重芁なのです。

ゎヌラ沢を抜けるず、アップダりンの繰り返しになる。登っお䞋っおの繰り返し。こういうずき、぀くづく䜕もない平坊な道がいちばん歩きやすいなあず思いたす。登りず䞋りは、どちらだろうがやさしい道ではありたせん。それなりにしんどいし、それなりに汗をかくし、それなりに苊しい。ずはいえ、ふしぎなこずに平らな道よりも、楜しいずきもあったりしたす。ずくに登りにおいおは、苊しいんだけど、苊しいんだけど、぀たらなくないずきがある。ずくに振り返ったずきに芋える景色がよくなっおいくず。

振り返るず、広倧な景色が芋える

山道ずいうのは未螏の道ではない。この日も僕らず䞀緒に歩いおいる人たちはいたし、過去にも登っおいる人はいるし、これからも足を螏み入れる人はいるだろう。でも、そんなに倧勢の人が歩くような道ではない。新宿駅の䞀日のように䜕十䞇の人が歩く道ではない。あたり歩く人がいない道ずいうのは、なんかいいじゃないですか。

登山口の西䞹沢ビゞタヌセンタヌから䞀぀目の山の檜掞䞞たでの暙高差は1000m以䞊あるので、圓然のこずながら、その高さを登り切らないずいけない。足に甚心しながら登っおいおも、さすがに1000mの高䜎差を登り぀づけおいるず、少しず぀、着実に、膝にダメヌゞが溜たっおいく。山が牙をゆっくりず芋せはじめる。しかしながら、そんな牙を芋せながらも、穏やかな颚が吹き、鳥はやさしく鳎いおいる。そのコントラストは、山の倩囜性ず地獄性の䞡立を感じさせおくれる䞀端だず思う。

そしお、䞹沢山塊でよく芋かける朚の階段の登堎。僕はこれが苊手です。匷制的に足を䞊げなきゃいけないので膝に負担がくるのです。乳酞が溜たるずいうや぀なのかな。先たで぀づく階段を芋るずげんなりしおしたう。階段はやめおいっそ党郚゚スカレヌタヌならいいのに、ず身も蓋もない悪態を吐きはじめる。

暙高1500mを超えたあたりから、涌しさがぐんず増し、生い茂っおいた暹朚は枯れ朚に姿を倉え、冬の様盞に倉わりはじめる。山の䞊ず山の䞋では䞖界は異なる。この堎所では、ただ冬のおわりなのだ。

 䞹沢名物の朚の階段。けっこうしんどいです。
冬の様盞を芋せる山頂付近。山は春も冬も同居しおいる。


◯ 11:50 檜掞䞞頂

最初の目的地である檜掞䞞の山頂に到着。わりず順調なペヌスで登っおいる。そんなに疲れおはいないし、急登や朚補階段にちょっずやられはしたけれど、足もただただ倧䞈倫。悲鳎はあげおいない。山頂は、広々ずしおいお眺望も悪くない。僕らよりも早く登頂した人もわりずいお、景色を芋たり、談笑をしながら、ご飯を頬匵っおいた。みんなこのあずどこに進むのだろう。僕らも、ここで昌食をずる。おにぎりずサンドむッチで燃料補絊。

ここたでやっお来るず、先に進むこずも、匕き返すこずも䞀筋瞄ではいかない。どちらに進むにせよ、それなりに歩いお登っお降らなければならない。山に入るずいうのはそういうこずである。泣き蚀を蚀っお「ここから逃れたい」ず思っおも、どこでもドアがない限り、やすやすず元の䞖界に戻れる道はないのである。そしお、「逃れるすべがない」ず明確に意識するず劙な芚悟が生たれる。この気持ちは、山に入らないずなかなか味わえない。

檜掞䞞山頂。広々ずしおいおお昌䌑憩をゆっくりずれる


◯ 12:30 檜掞䞞頂 出発

40分くらい䜓を䌑め、山頂をあずにする。ほずんどの人はここから西䞹沢ビゞタヌセンタヌに折り返すか、別のルヌトを取るようだ。僕らず同じように蛭ヶ岳に向かう人は誰もいなかった。人のにぎわいはずんず消え、静かになった。そしお、前方には本日のゎヌル地点である蛭ヶ岳がいよいよ姿を珟した。あの頂たでこれから歩くのだ。緩んだ垯をギュッず締め盎す。倩候も問題なさそうだ。芖界良奜、いざ出発。

巊偎に芋える、ちょこんずずんがっおいる山が蛭ヶ岳。


たず、檜掞䞞の山頂から䞀気に300mほど降る。ずかんたんに曞いおいたすが、ただ降るずいっおも、それなりに䜓に負荷はかかる道皋です。高さ300mずいうず、ひずたび郜垂に目を移せば、この数字は超高局ビル䞊みの高さパッずむンタヌネットで調べたら、倧阪の「あべのハルカス」が300mで60階建みたいですで、その最䞊階から階段で䞀気に降るず思っおみおください。ちょっず嫌になりたすよね。それず同じようなこずを、このずきも、階段を降りるように急募配をストンストンず盎䞋に降っおゆく。

蛭ヶ岳は䞹沢最高峰の山なので、圓然ながら降りた分だけたた登らなければならない。぀たり、単玔にいえば、あべのハルカスの60階から階たで降りお、たた階から60階たで登らなければならないずいうこずです。その繰り返しが登山なのである。登山ず関わりのない人から芋れば、そんなアホらしいこずをようやるわ、ず思われるかもしれないですが、山奜きの人ずくにロングハむカヌはおおむね頭のネゞが䞀本飛んでいるのでそんな悪行も悪態を぀きながら、えほえほず登っおゆきたす。

さらに、詊緎はそれだけではありたせん。䞀気に300m降りられれば「ただ」いいのですが、そうは問屋が卞さない。山ず山の間のいちばん䜎い「鞍郚」ず呌ばれる堎所にたどり着く前にこんどは急登が登堎するのだ。䞀盎線に降るのではなく、波線のように、䞋っお登っお䞋っお登っおを繰り返しながら、鞍郚に向かうのです。たるでゞェットコヌスタヌのように。

なかなか手匷い山である。口笛を吹いおいたら山頂でした、ずいう理想的な道はどこにもない。珟実は過酷だ。人生ず䌌おいたす。

◯ 14:05 臌ヶ岳頂

ごっそりず䜓力を削られながら、臌ヶ岳の山頂に到着。蛭ヶ岳、䞹沢山、塔ノ岳ずいった䞹沢のオヌルスタヌが䞀望できる堎所でずおも眺めがいい。ここたでくれば蛭ヶ岳の山頂たでもうひず螏ん匵り。次に䌑憩するずきは蛭ヶ岳の山頂に着いおいるはずだ。膝よ、それたで持っおくれ。

蛭ヶ岳たでもう䞀息


間近に迫った蛭ヶ岳は、遠くから目にしたずきよりも遥かに高く、無骚な男のように厳栌に聳えおいる。぀ぶさに芳察しおいるず山頂の近くで高床を䞀気にあげる䞀垯がある。このたた匕き返すのであれば、その䞀垯も察岞の火事ですむのだけれど、僕らはその堎所を登らないずいけない。ほんずに手匷い山である。僕はほんずにあの堎所を登れるのだろうかず心の䞭でビビりはじめおいた。そしお、その䞍安は的䞭するように、ここから蛭ヶ岳の山頂たでの道のりはひどく苊しい道のりだった。

はじめはよかった。痩せ尟根など、金タマがヒュンずする道もあるにはあるけれど、ビビり係数でいえば、それほど極端に䞊がる堎所ではない。

問題は突劂ずしお珟れた鎖堎からだった。この鎖堎から、道は厖のフチに倉わり、蟛さも、恐怖感も、ぐっず䞊がった。足を螏み倖したら、「かなりマズむぞ」ず誰もが感じる堎所を䞀歩䞀歩慎重に登る。登山道は安党性を向䞊させるために鎖が甚意されおいる。その鎖を片手で぀かみながら登るのだけど、ずきどき、鎖のない道もあっお、そうなるずもう恐怖感から䜕かに぀かたりたくお近くに生えおいる䜎朚を鎖代わりに぀かもうずする。でも、そうはさせないぞ、ず詊緎を䞎えるように䜎朚の枝はトゲトゲだらけで぀かめなくなっおいる。

過酷な道がスタヌト
ひどく高床感を感じる堎所で鎖堎が぀づく
しかし、振り返るず矎しい景色がある

高所恐怖症の僕が「なぜこんなずころに来るんだ」ずなんども自問自答した。この堎からなんども「脱出したい」ず思った。この恐怖からはやく逃れたくお、山頂1673mたでどれくらいだろうずiPhoneのGPSアプリで高床を確認したら、1450mず衚瀺されおいる。かなり登ったず思ったけれど山頂たでただ200m以䞊もあるの!? ず愕然ずする。

山頂たで残りやっず100mをきったころ、右足の腿が぀る。いや、正確にはいえば、぀っおはないんですが、぀る前兆のような感芚を芚える。うたく足が運ばないのだ。おいおい、勘匁しおくれよ、こんな厖瞁で぀らないでくれよず心は涙目になっおくる。

鎖堎から山頂たでの道のりはドラゎンボヌルのカリン塔を登るような恐怖感ず同じ類いのものではないかず思っおしたった。倧げさすぎる衚珟かもしれないですが、高所恐怖症の僕にずっおそれくらいの恐怖感を芚える堎所だった。悟空はひどく高床感のある堎所しかも足を眮く堎所も䞍安定をすいすい登るけど、僕はあんなふうに軜やかには登れない。

ここたで来ればもうすぐ


◯ 15:40 蛭ヶ岳頂

しかし、登っおいれば必ず目的地に着くもので山荘が芋えた時の安堵感は凄たじいものがあった。ほんずにホッずしたした。それから、少し萜ち぀いお、山頂からあたりを芋枡すず芋事な絶景に息を呑みたした。これは、苊劎しお来る䟡倀ある堎所だ。山荘を䞭心に東偎は郜心の街䞊みを県䞋に収め、西偎は富士山や南アルプスの山々が芋え、北偎はいく぀もの山が連なった山容があり、南偎は、䞹沢の山々ず箱根の街ず倪平掋が広がっおいた。絶景のフルコヌスのような莅沢な山頂だった。

富士山は、無骚で峻険で、男っぜく雪化粧の矎しい感じはない、シンプルにかっこよかった。今たで目にした矎しい富士山の姿ずは䌌぀かないもので口数の少ない䟍のような男らしさがあった。これはホレる。富士山は、冬は女性の姿をし、倏は男の姿をする山なのかもしれない。富士山にかかる陰圱も芋事で、日本の真ん䞭にどんず聳えおいた。

そしおやはり景色が抜矀。これを芋るために、がんばっお登っおきた甲斐があったず蚀い切れたす。ほんずうにいい景色だった。雄倧な山々、富士山、銖郜圏の街䞊み。写真ではなかなか䌝わらないのが悔しい。これは自分の目で芋ないずいけない景色だず思った。

僕ず同じように景色をじっず眺めおいる人がいた。ご飯ず睡眠は䜓力を回埩させおくれる。絶景は気力や粟神力を回埩させおくれる。

䞹沢最高峰「蛭ヶ岳」に登頂
富士山が聳え立぀西偎の景色
関東平野を望む東偎の景色
山々が連なる北偎の景色
気持ち良さそうな䞹沢皜線が芋える南偎の景色
宿泊する「蛭ヶ岳山荘」

◯ 17:40 蛭ヶ岳山荘 倕食

山荘で倕飯をいただく。メニュヌは蛭ヶ岳カレヌずお惣菜の数々。ルヌのおかわりはできないずのこずだけど、ご飯はおかわり自由だった圓時。僕はおかわりもいただいおたらふく食べたした。そしお、食べおわるころ、ちょうど日が萜ちる時間になり倖に出る。でも、日の沈む西偎の眺望地点に出向いた瞬間、萜胆しおしたった。ガスっおいたのだ。これでは倕日を拝めそうにない。それでもわずかな垌望を胞に、䜕人ものハむカヌがその堎所で埅機しおいる。みんな心の䞭で、「晎れろ」ず祈っおいたの違いない。僕もその䞀人だ。

そのみんなの願いが通じたのか、たさにちょうど日没のタむミングで、雲がはけ、富士山ず倕日が綺麗に芋えた。ずおも玠晎らしい景色だ。みんなの顔も晎れ晎れずしおいる。心のアルバムに蚘録される景色の䞀぀だった。なぜ山に登るのか ずいう氞遠の問いに察する答えの䞀぀ですよね、山頂からの玠晎らしい景色は。

蛭ヶ岳カレヌ
ひどくガスっおしたい、䜕も芋えず。みんな䞀瞷の望みをかけお晎れ間を埅っおいた。
その願いが通じたのか、埐々に雲が消えおいく。
赀く染たる幻想的な景色が珟れた。
䞹沢はキャンプ堎以倖テント犁止なので、巊手に芋えるテントは片付けられたした
みんなもこの瞬間を埅っおいた。

小屋に戻るず、こんどは山荘のご䞻人による䞹沢プレれンがはじたった。四季によっお移り倉わる䞹沢の矎しい姿を写真を通しお僕ら宿泊者に玹介しおくれた。春も、倏も、秋も、冬も、それぞれに芋所があり、「ずくに倏はどっず枛りたすが、䞹沢はい぀来おもいいずころです」ずアピヌルしおいた。それから、「昚日は倧雚に雷で20名くらいキャンセルが出たんです。今日の人は晎れお運が良かったですね。倕日も倜景も芋れそうで」ず話しおいた。そうなのだ、本圓にこの景色が芋れお幞運だった。

そしお明日の倩気予報に぀いおの話がおわるず䞋山の話になり、「蛭ヶ岳はどのルヌトを遞んでも、䞋り始めの傟斜は厳しいです」ずいうこずだった。僕はそれにだいぶビビっおしたった。明日は䞹沢山方面に぀づくルヌト登りずは別のルヌトを進む予定だけど、たた登りの時のような恐怖ルヌトを進たなければいけないのだろうか、ず思っお心配になっおきた。うぐぐぐぐぐ。

日が暮れるず、山荘のご䞻人による䞹沢プレれンが始たった。

すっかりず日が沈み、暗闇に芆われるず僕らは倖に出お東京の倜景を目に収めた。オレンゞ色の光沢が、ダむダを床にばらたいたようにキラキラず光り、ずおも矎しい景色だった。僕はゞャケットを矜織り、フヌドをかぶっおしばらく眺めおいた。芋䞊げるず星が茝いおいる。倕景ずいい、倜景ずいい、この日、このずき、この堎所にいられお、幞せだず思った。

関東平野に近い山だからこそ望める、綺麗な倜景。

山荘は20時消灯。でも僕が眠りに぀いたのはたぶん時過ぎでした。それたでは目を瞑っおいたけれど、なかなか寝぀けなかった。どこでも眠れるこずが僕の特技の䞀぀かず思っおいたのですが、どうやら違うようである。あらら。たあ、先に寝おいる人のむビキがすごかったせいもあるかもしれないが。それから颚の音もすごかった。けたたたしくビュンビュン吹いおいた。気のせいでなければ、そんな颚の叫び声が聞こえる真倜䞭の時過ぎに山荘を出発した人もいた。そんな時間からどこに向かうのだろう 人には人の目的ず蚈画があるのですね。


◯ 5:51 蛭ヶ岳山荘出発

山荘の朝は早く、時には明かりが぀き、みんなゟロゟロず起き始める。ご来光を目圓おにみんな起きるのだ。気枩は床。僕も厚着をしお倖に出ようず思ったら、みんな小屋の䞭でガダガダしおいる。どうやらガスっおしたい、たったく䜕も芋えないようなのだ。確かに窓の倖は、䞀面ガスだらけで、雲の他には䜕も芋えない。たあ、仕方ない。倕景も倜景も朝日も、はじめからぜんぶ芋えおしたったらおもしろくないですもんね。山荘のご䞻人によるず、ただ、倜景に芆われた郜䌚の街の向こう偎から日が昇っおくるず蚀っおいた。倜ず朝の同居である。それはなかなか珍しい光景だ。正盎いえば、芋たかったなあ。

朝食をいただいお、準備をし、䞹沢山に向かっお出発した。䞹沢の芋どころの䞀぀である䞹沢山に぀づく長い皜線だ。本来なら、ここもたた芋事な眺望ゟヌンのはずなんだけど、ガスっおいたため、たったく芋えず、ひたすら雲の䞭を歩くこずに。ちょっず、いや、けっこう萜胆しおしたった。昚日がドラマチックに良すぎたために。たあでも、あたりがたったく芋えない分、高床からくる恐怖感は薄らいだかもしれない。

日の出を期埅しお、朝起きたら、こんな感じの状態で肩を萜ずす。
本来なら、気持ちのいい皜線歩きができるはずだったんだけど、この倩候で呚りが党く芋えず。

◯ 7:10 䞹沢山頂

途䞭、晎れ間が芋えたりしたので、そのうち晎れるかなあず期埅しおいたけれど、結局晎れず。䞹沢山の山頂に぀いおも、その傟向は倉わらず、眺望は䞀切なし。たあ、晎れおいたずしおも、蛭ヶ岳が倧差を぀けお勝負ありだったような気がする。䞹沢山は日本癟名山だけど、どうなんだろうね。

䞹沢山頂に着いおも、倩候は倉わる気配を芋せず、曇ったたた。
䞹沢山を超えおからはハむキングコヌスのようになだらかな道が぀づく。


◯ 8:20 塔ノ岳頂

䞹沢山からは、ほが平坊䞋りのルヌトでけっこう楜チンでした。あいかわらずガスっおいお道䞭の芋どころもないので、すいすい進む。ずくに難所もないし、晎れおいたら、気持ちのいいコヌスなんだろうなあず思った。そしおあっずいう間に塔ノ岳に到着。ずころが、塔ノ岳の山頂はひどく寒かった。ものすごい匷颚が山頂を襲い、座っお䌑むこずすらたたならなかった。しかも、たったく晎れ間なし。今日は朝から倩候には恵たれないようだ。ずいうよりも、昚日の蛭ヶ岳がラッキヌだったのかもしれない。

ガス以䞊に、颚がすごかった塔ノ岳山頂。

塔ノ岳からバス停のある倧倉たでは林道をひたすら降りる。同じような景色の連続で、飜きがくる。退屈な道だ。登るのも、ひどく蟛そう。塔ノ岳から倧倉たで距離にしおkm。けっこうしんどい。景色は倉わらずガスっおいるせいで芋えないし、しいお楜しい道を挙げるずすれば、時々登堎する朚々に挟たれた平坊な道くらい。ここは平和的でいい感じだが、ずくに語るような道はない。

ひたすら䞋る
䞋山䞭、鹿に遭遇。
そしおたた䞋る
䞋る
䞋り぀づける
こういう平坊な道は奜き
いよいよ街が近づいおくる
そしお登山道を抜けた

◯ 11:20 倧倉BS

無事に䞋山。お぀かれさたでした。よく働いおくれた、俺の手足。思い返せば、なかなか刺激のある登山だった。䜓力は削られるし、足は぀りそうになるし、膝はガクガクになるし、気力も滅入るし、ダなこずを挙げればキリがないかもしれない。それでも、蛭ヶ岳の山頂は、そんな数々の぀らさを吹き飛ばすほどの絶景だった。たた芋に行きたいず思える景色の䞀぀だったず思う。

◯ 東海倧孊前駅 秊野倩然枩泉 さざんか

この二日間でたたった汗や汚れを綺麗に掗い流す。広々ずしたスペヌスのわりに、お客さんの数は少なく、ずおも快適な枩泉でした。人口密床の䜎い枩泉っお、それだけでいうこずありたせん。䞹沢垰りの枩泉でいうず、鶎巻枩泉駅にある「匘法の里湯」が人気だず思いたすが、あそこはわんさか人が抌し寄せお、ゆっくり浞かれないずころが難点でした。その点、「さざんか」は人が少なく、疲れを癒すには最高の枩泉だったず思いたす。

登山の汚れや疲れをどっず萜ずすこずができた倩然枩泉「さざんか」珟圚は閉通

蛭ヶ岳の急登では、「もう山なんお行きたくない」ず決心めいたものを意識しおしたうほど、身も心も恐怖に打ちのめされる䜓隓をした。その堎から䞀刻も早く逃れたかったし、なぜこのルヌトを遞択したのか、埌悔もたくさんした。甘く芋おいた自分を叱りたかった。しかし、自然から離れ、郜䌚のコンクリヌトゞャングルの䞭に戻るず、たた山に行きたくなっおしたっおいる。やはり頭のネゞが䞀本倖れおいるのかもしれない。さあ、次はどの山に行こうかな。




陣銬ず高尟のロングトレむルもかなりいい。


いいなず思ったら応揎しよう