ハナの17回忌と父の見舞い
我が家の長男猫・ハナは2011年の8月1日に、別の世界の住人となった。
ハナは歯周病から内臓に影響が出て、闘病生活を送った。
高齢になってからだったので、抜歯は体への影響が大きいということで手術できず、飲み薬や注射での緩和処置だった。
15年前、ハナがかなり辛そうという電話が母から入り、週末実家に戻った。
暑いからすぐにお水が飲めるようにと、家じゅう1mおきくらいに水皿を設置し、夜は近くで様子を見守った。
ハナはときどき寝場所を変えていたので、私はその都度、ハナ、大丈夫?などと体をさすったり声を掛けてしまった。
今思い返すと、触ったりしたことも負担になったんじゃないか、そっとしておいてあげたほうが良かったのではないかと、悲しみとともに後悔が押し寄せる。
7月31日が日曜日で、翌日は会社に行かねばならず、8月1日早朝、私は実家からいったん自宅へ戻り、会社へ向かった。
その数時間後、ハナが……と母から連絡を受けた。
私は会社の上司に「具合が悪いので」と半真半偽の理由を言って午後お休みをいただき、また実家へ顔を出した。
猫用クッションベッドに寝かされていたハナは眠っているだけのように見えた。
メグとブランの2ニャンズは分かっているのかいないのか、神妙にしている様子だった。
本当はずっとこのままハナの側にいたいけれど、真夏ということもあり、早くきちんとお見送りしてあげなくてはならなかった。
私たち家族は別の世界でもハナが幸せに暮らしていけるよう、実家から数キロ離れたところにある動物さん専用のお寺で、ハナの出発に立ち会った。
当時、別世界の入口となる石の扉は選び放題だったので、大きな桜の木の下のものを確保した。
ハナはうちの子になる前、伯母の家の庭の木登りが兄弟姉妹のなかで一番上手だったそうだ。
我が家ではずっと家猫させてしまったため、閉塞感を感じていたのではないかと申し訳なく思う。
春生まれで木登り上手のハナには、ここがぴったりだと思ったし、別世界から戻って来たときの目印にもなるだろう。
我が家の入口以外の石扉は、まだ他のワンニャンさんが利用していなかったようなので、しばらくの間、ハナは寂しかったかも知れない。
でも、その後、お寺じゅうの入口が一つまた一つとさまざまなご家庭のワンニャンさんに確保されていったので、きっと石の扉をくぐり抜けた別世界で、ハナは新しいお友達と楽しく毎日を過ごしているに違いないと想像している。




そんなハナの命日である今日、数日前に入院した父の見舞いで病院へ。
父の症状は鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)で、外出中に痛みと嘔吐があったため病院へ運ばれ、数週間の入院となった。
鼠径ヘルニアは男性に多く見られ、前立腺肥大の人や便秘気味の人、しょっちゅう咳をする人などがなりやすいということだった。
父は数年前に肺の手術をしていて、ボンベを携帯しないとダメかもと言われていたが、幸いそうならずに済んだ。
ただ、日々苦しそうに息をしていて、慢性的に咳をしている。
前立腺肥大でもあり、まさになりやすい人の特徴を持っていた。
私が調べたところでは、鼠径ヘルニアは手術でないと治らないということだったが、父も母も手術に難色を示している。
肺を手術したときも、父は本当は嫌だったようなのだけれど、セカンドオピニオンを受け、そちらでも手術した方が良いと言われたため、オペに踏み切った。
術後、体力が著しく落ちてしまったため、数年のうちにまた体にメスを入れるということに対し、両親は不安になっているようだ。
しばらくは食事療法で対処し様子を見るということだったが、今後の経過によっては手術を考えなくてはならなくなるかも知れない。
それにしても、父の入院している病院の管理体制の徹底ぶりには少々驚いた。
面会希望者の来院可能な時間帯は、平日でも休日でも3時間と狭く、面会時間は長くても15分。
入院病棟への立ち入りは禁止で、面会希望の書類を提出したら熱を測り、問題なかった場合のみ、面会室で対面できるという仕組みだった。
入院に必要となる身の回りのものや差し入れなども直接手渡すことはできず、看護婦さんによってチェックされたのち、問題なかったものだけ父へ届けられ、問題アリだったものは我々に返されることになっていた。
入院初日に、母は父のために直刃ひげ剃りを用意して持参したそうだけれど、看護婦さんから「電動にしてください」と言われ、病院内の売店へ買いに走ったらしい。
「千円ちょっとで買えますとか言っていたのに、その2倍以上のお値段だった」
と、母は不服そうに私に漏らした。
入院費用のこともあるから余計な出費はしたくなかっただろうし、父が普段使い慣れているモノのほうがいいだろうと思った母の気持ちも分からなくはない。
だが、直刃なんて凶器になり得るものだから、病院側としてはそういったモノの持ち込みを良しとはしないだろう。
病院側も患者側も、お互いに安心安全な入院環境に配慮する必要があると、改めて感じた。
今日も15年前と同じように、暑い1日だった。
ニャンズの命日にはいつも夜キャンドルを灯し、写真を見ながらしばし語らっているので、炎が消えないよう、冷房の風力を調整する必要があるだろう。
そんなわけで、もう少ししたら暑さが和らいでくれているとありがたい。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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