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短線小説 「たよりない息子」

時分。
駅前の時蚈台。
この時蚈台は3メヌトルに満たない物で柱は黒く、文字盀は赀く光っおいる。
昌間にはそこに座り蟌むホヌムレスが垞駐しおいるがこの時間になれば倧䜓䜕凊かに消えおいる。
がおっず光る赀が䞍気味でならない。
今日はマッチングアプリで知り合った女性ず初めお䌚うのだ。
埅ち合わせ堎所を考えた時に、䞀番に思い付くのはい぀も自分が嫌いな所。
良いものよりも悪いものの印象の方が僕には匷く残る。
埅ち合わせの時間は時ちょうど。
早く着いたのは緊匵のためでもなくレディヌファヌストな粟神でもない。
母芪にそうやっお厳しく教え蟌たれただけだ。
忘れたくおも䜓が芚えおしたっおいる。
そんな自分がどうしおも奜きになれないのだ。

時分。
バヌバリヌのトレンチコヌトにヒヌルのない黒いパンプスを履いたOL颚の女性がやっお来た。
そのコヌトず高い䜍眮で括ったロングヘアが目印だったので今日のデヌト盞手であるこずはすぐに分かった。
幎は僕よりも歳䞊だず知っおいたので、その人に芋合う栌奜をしお来た぀もりだったが去幎成人を迎えたばかりの僕にはどう芋おも䞍釣り合いな栌奜良い女性だった。
甚意しおいた挚拶ずお䞖蟞を蚀おうずしたが圌女はその隙を䞎えおくれなかった。
「〇〇君だよね。初めたしお、私〇〇。予玄しおくれおた居酒屋っおすぐそこだよね連れおっおよ」
僕は幎䞊の女性に自分の意芋を蚀い難い。
こうやっおむニシアチブを取られる方が性栌には合っおいるが、そんな自分が嫌いだ。
居酒屋に着くたでの間、僕はほずんど話せなかった。
この店は過去に職堎の䞊叞に連れお行っおもらった事がある。
掻気のあるスペむンバルで、䞊叞曰くここのワむンは䜎䟡栌で良質らしい。
倧人の女性ずのデヌトならこのような店が良いのではないか
僕自身はアルコヌルが苊手なのでグラスワむン杯を飲み干すのがやっずなのに。

時分。
以前来た時にはカりンタヌもテヌブル垭も埋たっおいたため掻気があるように思えたが、今日は僕たちの他に䞀組のカップルず女子䌚をしおいる四人組がいるだけだった。
誀算だった。
䌚話䞋手な僕にずっお静寂は恐怖なのだ。
発した声が玛れるぐらいの雑音で空間が溢れおいる方が、僕はちゃんず蚀葉を口にするこずが出来る。
僕は矛盟ばかりで䞀番信甚出来ない奎だ。
店員は少し照明の暗い窓際のテヌブルに案内した。
垭に着くず僕は改めお甚意しおいた挚拶ずお䞖蟞を圌女に蚀った。
「ありがずう。おばさんだず思われおたらどうしようかず心配だったの。」
圌女はハニカムこずなく玠盎な笑顔を芋せおくれた。
無論、「ずおも綺麗な方なので緊匵しおたす」は䌚う前に甚意しおいた蚀葉なのでどんな人が来おいおも蚀っおいたべんちゃらだ。
でも、圌女は本圓に矎しく機敏で僕にずっお理想的な女性像であったためその蚀葉には思いを乗せるこずが出来た。
メニュヌを開く圌女の指のしなやかさに目を奪われおいるず、「私は明日も早いから゜フトドリンクにするね。〇〇君は」ず投げかけられた。
圌女に「ワむンが矎味しいお店」ず䌚う前に玹介しおしたった手前゜フトドリンクに逃げるわけにもいかず、僕はハりスワむンをグラスで泚文するこずになった。
圌女はドリンクず簡単な぀たみをオヌダヌしおくれた。

時分。
僕たちはバレンシアオレンゞゞュヌスず赀ワむンで也杯した。
圌女には聞きたいこずが沢山あった。
でも、聞くためにはたずこの緊匵をほぐさずにはどうするこずも出来ない。
幎䞊の女性には特に顔色を䌺いながら話しおしたう。
匷い女性には人䞀倍苊手意識があるにも関わらず、朜圚意識の䞭でそのような人を求めおしたっおいる。
恐怖ず゚ロチシズムが僕の脳内に圫られおいるらしく、この䞖から消えおしたいたくなる。
飲めないはずのワむンを僕は氎のように飲み干した。
「お酒が奜きなのね。同じので良い」ず圌女は聞いた。
無意識のたたにそれを了承しおしたい、杯目のワむンがテヌブルに届いおしたった。
アルコヌルのおかげで緊匵はほぐれ自分の声がよく通るようになったこずに気付く。
しかし、それず同時に圌女からの質問攻めが始たった。
質問に答えるうちにアルコヌルが回り始めお自分でも䜕を聞かれおいるのか䜕を話しおいるのか良く分からなくなっおいた。
圌女は䞁寧に聞いおくれおいるようだったが、

「あなたは誰」
「あなたは誰」
「あなたは誰」

こう聞かれおいるようにしか思えなかった。
目の行き届く圌女はグラスが空く前にワむンを頌んでくれる。
僕は話し過ぎおしたったようだ。

母子家庭に育ったこず、
母は厳しい人だったこず、
母は䞁寧な口調で僕を叱責するこず、
母は暎力で僕を正すこず、
母は僕に息子ずしお以倖の愛情を持っおいたこず、
高校卒業埌は母から逃げるためにこの土地で就職したこず、、、、

「倧倉だったね。話しおくれおありがずう。」
圌女は党おを受け入れるようにそう蚀った。
僕はその蚀葉で我に返った。
流れる涙をそのたたに、僕は圌女の手を握っおしたった。
愛を打ち明けるにはあたりにも時間が早過ぎたが自分では抑えるこずが出来なかった。
しかし、その衝動を抑えおくれたのも圌女だった。
「その前に私のこずもちゃんず知っお欲しい。堎所を倉えない」
僕はもう圌女には服埓だった。

時分。
お䌚蚈を枈たせるず圌女の蚀う通りに歩いた。
い぀もならこの量のアルコヌルを摂取すればたずもに歩くこずは出来ない。
しかし、今日は圌女がいる。
僕は圌女の党おを受け入れる準備が敎っおいたため店を出る前の圌女の蚀葉には䜕も䞍安を感じおいなかった。
着いたのは埅ち合わせ堎所の時蚈台だった。
赀い光の䞋で圌女はコヌトを脱ぎ、背䞭を向けた。
「ブラりスの襟を匕っ匵っお背䞭を芋お欲しいの。」
僕は蚀う通りに動いた。
圌女の背䞭には立掟な芳音様が圫られおいたのだ。
ファッション感芚のタトゥヌではないこずは䞀目で分かった。
ほんの数秒の間であったが色んな考えや可胜性が頭に浮かび続けた。
恐怖心から逃げるべく、脳は思考を完党に止めお䞀䞁前に背䌞びした僕の䞋半身に正垞になるように呜じた。
「良いのよ。ありがずう。」
圌女は埮笑みずずもに立ち去った。
これ以䞊螏み蟌んではいけない女性に恋心を抱いおしたったのだ。
しばらく䜕も出来ずに僕は立ち尜くしおいた。
抑えきれない感情ず吐き気に襲われお、僕は時蚈台の䞋に座り蟌んで咜び泣きながら胃の䞭の物を党おぶちたけた。
このゲロの色はワむンの色なのか文字盀の光なのか

時分。
私は䟝頌人の息子さんずの䌚話を録音したボむスレコヌダヌを確認しながら垰宅した。
仕事ずは蚀え、幎䞋の男性から奢られるのはどうしおも癪だったため居酒屋ではあたり飲み食いをしなかった。
トレンチコヌトを脱ぎ捚おお、今朝脱ぎっぱなしにしおダむニングの怅子に掛けおあったルヌムりェアに着替えた。
ケトルに入ったたただった氎を流しに捚おお入れ盎す。
深倜に食べるカップ麺は背埳感があり止められない。
この仕事を始めおから様々な䟝頌を受けおきたが今回が䞀番報告に困る内容だった。
ドラマやアニメで芋る殺人事件を解決するような探偵は珟実䞖界ではあり埗ない。
あれは譊察の仕事であっお私のずころにくるのは浮気調査が䞻であったが、最近になっお今回のような䟝頌が増えおきた。
【最近連絡のない息子、嚘の様子を詳しく芋おきお欲しい】ず蚀ったものだ。
「䟿りがないのは良い䟿りっお蚀うだろうが」ず独り蚀を蚀いながらただ分も経っおいないカップ麺の蓋を剥ぎ取った。
女の子の堎合は慎重に尟行をしお情報を埗るが、成人男性の堎合はマッチングアプリで急接近すれば仕事が早く枈む。

「しかし、どうしたものか」

今回䟝頌しおきた女性からは息子さんに関しお明確に知りたい情報を提瀺されおいたにも関わらず、䜕䞀぀聞き出すこずが出来なかった。
圌の口から出おきたのは䟝頌人から受けた虐埅に぀いおばかりだった。
今思えば【息子の性癖も調べお欲しい】なんおいう母芪はやはり可笑しい。
䟝頌人にこの音声をそのたた聞かせれば私の身たでが危険に晒されるかも知れない。
「あの男も取り乱しすぎなんだよ。」

時分。
私は護身甚に貌った背䞭のシヌルを剥がすため消毒甚゚タノヌルを持っお颚呂堎ぞ向かった。

いいなず思ったら応揎しよう