しっぽんに、友達ができた。
朝、目が覚めてまずやることは、だいたい決まっている。
スマホを手に取って、KDPのダッシュボードを開く。
『しっぽんは、宮古島にいる。』を出したのは7月7日。あれから、もうすぐ2か月になる。
毎日見ているけれど、特別な期待をして開いているわけではない。売れていなければ、
「ゼロ……だよね〜」
くらいのものだ。ルーティーンというか、歯磨きに近い。
ところが8月22日の朝は、少し違った。
前日に、1冊売れていた。
「えっ?誰? 売れてる……」
心当たりを探したわけではない。誰が買ってくれたのかなんて、わかりようがない。それでも少し経つと、こう思った。
「また、しっぽんが誰かのところに行ったんだなぁ」
Mちゃんにも伝えた気がする。
「よかったじゃん」
と、彼女は言っていたと思う。それだけだった。
一冊売れることが、もう大騒ぎするようなことではなくなっている。それが、少しずつ、二人の日常になっている。
Amazonの画面には、これまでの累計で「33冊」と表示されている。
ただ、本の動きは、この数字の中には収まっていないらしい。
33冊のうち15冊は、友人であるBarのママさんがまとめて買ってくれたものだ。知り合いに配って、自分の店にも置いて、欲しい人に手に取ってもらいたい、と。
先日Mちゃんがその店に顔を出したら、実際にもう何冊か、買ってくれた人がいたらしい。
Amazonで一度「15冊」と数えられた本が、その先で、知らない誰かの手に渡り始めている。誰のところに行ったのか、こちらは知らない。知らないまま、本だけが勝手に動いている。
Amazonを通っていない本もある。お世話になっているコーヒーショップに置かせてもらった閲覧用の1冊や、謹呈した本、手元の1冊。そして9月1日には、著者用のコピーが10冊届く。
全部合わせると、この世に48冊の『しっぽんは、宮古島にいる。』が存在することになる。
売れた数ではない。ただ、存在している数だ。
そして、今回いちばん書きたかったのは、ここからの話だ。
横浜の、絵本を買ってくれた保育園から、写真が届いた。
子どもたちが、絵本を見ている写真だった。

見た瞬間、思った。
「これ、やばい」
子どもたちは、ただしっぽんを眺めているのではなかった。
小さな手で、ページの中のしっぽんに、触っていた。
「しっぽんに、友達ができた」
そう思った。
この本は、もともと「大人のための絵本」として作っていた。
仕事から帰ってきて、家事もひと段落して、お茶を飲んだり、お酒を飲んだりする時間。テーブル脇のブックシェルフから絵本を取り出して、しっぽんを眺めながら読む。
自分なら、晩酌をしながら。
しっぽんを読みながら、しっぽり。

そんな時間を想像して作った本だった。しっぽんを見て少し癒されたり、暮らしの中でふっと肩の力が抜けたり。大人にとっては、そういう本であればいいと思っていた。
でも、あの写真を見て、考えが変わった。
「これは、大人だけの絵本じゃない」
まだ何も決めていないし、どこにも連絡していないけれど、宮古島の幼稚園や保育園にも、この本を置いてもらえないだろうか、と考えている。
9月1日に届く10冊は、実はそのために注文したものだ。
横浜で、しっぽんに友達ができた。
今度は、しっぽんが生まれ育ったこの島でも、子どもたちと出会わせてみたい。
そのための10冊が、9月1日に届く。
まだ何も決まっていない。
ただ、ちょっと、たくらんでいる。
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