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10年間、飛べなかった私が飛びすぎた話

10年間、海外に行きたかった

正直に言うと、この10年間「海外に行きたい」
という気持ちが消えたことは
一度もありませんでした

SNSで誰かの旅行写真を見るたびに、
心のどこかがざわついて

「行きたいな…」でも、「無理だな…」

その二つがセットになって、
いつも同じところで止まっていました

理由はいつもはっきりしていました
自衛官という仕事です

休暇は数ヶ月前から申請しないといけません
行き先によっては事前に届け出が必要で、
情勢によってはそもそも渡航が認められない国もあります

有事に備えて連絡が取れる状態でいなければならない以上、「気ままにふらっと海外へ」という発想自体が、そもそも存在しませんでした

そうやって「いつか行きたい」だけが
積み重なっていって、
気づけば10年以上が経っていました

申請の煩雑さや、
渡航先の制限にすら疲れてしまって、
ある時期からは、
そもそもパスポートすら更新していませんでした

結果、10年以上、
この国を出たことがありませんでした

今思えば、これが一番象徴的だったと思います

パスポートがないという状態そのものが、
「自分はどうせ行かない、行けない人間だ」という思い込みを、静かに固めていました

そして、制服を着ている間は、
それが当たり前だと信じて疑いませんでした

辞めた瞬間、何かが外れた

自衛隊を辞めました

正直、辞めた直後は
「これで少しは自由に動けるようになるな」くらいの、わりと普通の感覚で、特別な決意も、壮大な計画もありませんでした

とりあえずパスポートを作って、
海外に行ってみようか

そのくらいの軽さでした

でも、実際に一度外に出てみたら、
想像していたのと全然違いました

制約がない、というのが
これほど体を軽くするものだとは...

「いつまでに帰らないといけない」がない
「この日までに申請」がない

ただ、行きたいときに行けばいい

それだけのことが、
こんなにも呼吸を変えるのかと驚きました

そして、一度その感覚を知ってしまうと、
もう止まらなくなりました

鳥籠から出た鳥みたいになりました

海外に行く。帰ってくる。また別の国に行く。

そのうち、海外で仕事をするという選択肢まで
現実味を帯びてきました

客観的に見れば怖すぎます

気づけば2拠点生活という言葉が、
自分の生活の中に自然に入り込んでいました

「私、こんなに飛び回る人間だったんだ」

これが、この数年で一番驚いたことです

10年間、家でじっとしていた人間が、
羽が生えたように動き回っている

まるで、長い間鳥籠の中にいた鳥が、
扉が開いた瞬間に外の広さに気づいて、
飛び方を思い出したみたいでした

人は「できない」のではなく、
環境に閉じ込められていることがある

ここで一つ、はっきりと言えることがあります

10年間できなかったことが、
環境を変えた瞬間にできるようになりました

これは、私の意志が急に強くなったわけでも、
突然行動力が湧いて出たわけでもありません

ずっと、鳥籠の中で飛ぼうとしていただけだったのです

籠の中でどれだけ「飛びたい」と思っても、
羽を広げるスペースすらありません

それを「私には行動力がない」
「私は腰が重い性格だ」と、
自分の性質のせいにしてしまいがちですが、
実際には環境の問題だったということが、
ものすごく多いのです

制約がなくなって初めて、
自分の素質がわかった

環境が変わってから、
いろんなことが見えてきました

海外にいることが、
もう「特別なイベント」ではなくなり
日常の延長線上にある選択肢の一つになりました

海外で働くことも、
思っていたよりずっと現実的でした

そして何より、自分に合う暮らし方が、
少しずつ輪郭を持ち始めました

「本当の自分」というのは、
制約だらけの環境の中にいる間は、
実はよくわからないものなのかもしれません

制約が外れて、選べる状態になって初めて、
自分が本当は何を選びたいのかが見えてきます

今思うこと

この経験から、今強く思っていることがあります

人生を変えるために、
必ずしも「自分を変える」必要はない
ということです

性格を変える、意志を強くする、
頑張って行動力をつける

そういう内側へのアプローチより先に、
自分を縛っている環境そのものを変えてみるほうが、ずっと効果があることがあります

環境が変わると、自分でも知らなかった行動力が、勝手に出てきます

それは新しく手に入れたものではなく、
もともと自分の中にあったのに、
環境のせいで発揮できていなかっただけなのだと思います

結論

10年間、一度も飛べなかった鳥が、
鳥籠から出た途端に飛びすぎてしまいました

だから、「自分には行動力がない」「自分は変われないタイプだ」と決めつけるのは、まだ早いと思います

もしかしたら、飛べないのではなく、
まだ飛べる場所に移動していないだけかもしれません

私は、海外に行くために
人生を変えたわけではありません

ただ、自分を縛っていた環境を変えただけでした

それなのに、気づけば海外を自由に行き来し、
2拠点生活までしています

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