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第3話 あの冬の一泊

長女の推し活は、
エスカレートする一方だった。

高校生になっても、
長女は相変わらず
親に嘘をついていた。
小さなものから大きなものまで、
種類も理由もさまざまな嘘だった。

数えきれない出来事の中で、
今でも忘れられないことがある。

高校三年の冬。
大学受験の共通テスト直前、
12月のことだ。

長女はこう言った。

「共テの勉強で苦手な部分があってね。
Sに教えてもらうから、その子の家で勉強会をする」

私は疑わなかった。
Sちゃんはオタク仲間ではあったが、進学校に通う子だった。
きっと勉強のヒントをもらえるのだろうと、信じてしまった。

手土産のお菓子まで持たせ、
送り出した。

あの時は、
本当に何も疑っていなかった。

しかし実際は…

長女は一人で東京へ、泊まりがけで推し活に出かけていたのだ。

飛行機もホテルも自分で手配し、現地で推し仲間と合流していた。

その事実を知ったのは、2024年11月。
出来事から約2年後のことだった。

真実を知ったきっかけは、
皮肉にもSNSだった。
長女がアップしていた投稿から、
私たちは事実を知ることになる。

長女から直接聞いたわけではない。
私たちが探し出したアカウントだった。

親は知らないと思っていたのだろう。
あれもこれも投稿されていた。

なぜ…

大学受験直前の、大事な時期に。
なぜ…

2年後、
事実を突きつけた時、
長女はこう言った。

「期間限定のイベントだったから。
今行かないと後悔すると思った。
それに大学は受かると思っていたし、行っても問題ないと思っただけ。
何か問題ある?」

その言い方に、私は言葉を失った。

この時も、
自分から謝ることはなかった。

大事な時期であること。
自分の立場。
親の気持ち。

それらが、本当に見えていなかったのではないかと、今は思う。

我慢できない。
欲しいものは取りに行く。

そういう性格が、
ここでもはっきり現れていたのかもしれない。

もし当時、
この事実を知っていたら…
何か違ったのだろうか。

いや、どうだろう。

今でも分からない。

ただ一つ言えるのは、
あの頃から、
彼女の「欲しい」という気持ちは、
少しずつ強さを増していたということだ。

それが、
この先の出来事へと
つながっていくことを、
あの時の私は、まだ知らなかった。

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