第28話 元親
あれから長女とは、
まったく連絡が取れない状況が続いている。
整理すると…
長女は大学には
まったく通っていない。
大学へ通う気がないのなら、
自分で退学届を出しに行けばいいのに。
それすらしない。
「やっぱりね」と失望する気持ちと、
「最低だわ」と苛立つ気持ちと。
正直、今でも
複雑な感情は残っている。
でも…
これはもう、本人の問題だ。
今、私たちにできることは
ひとつしかない。
学費を払わないこと。
後期の授業料を支払わなければ、
おそらく長女は除籍になるだろう。
きっといつか長女は、
周りの人たちにこう言うはずだ。
「親のせいで大学を辞めさせられた」
でも、
それでいい。
別に構わない。
どうぞお好きに、だ。
8月末の家賃から、
私たちは支払いをしていない。
不動産屋さんにも連絡済みだし、
事情もきちんと説明してある。
家賃の引き落とし口座も、
長女本人の口座へ変更してもらった。
だから今、
本人が払っているのかどうかも
私たちにはわからない。
もちろん8月からは、
仕送りも完全に止めている。
お金も、
品物も。
何ひとつ送っていない。
長女が一人で
どう生活しているのか。
それも、わからない。
もしかすると、
またどこかへ出稼ぎに
行っているのかもしれない。
我が家の住所からも外し、
扶養からも抜いた。
だから今、
長女はすべてを自分で
やっていかなければならない。
世の中の手続きも、生活の仕組みも。
どこまで理解しているのか。
それもまた、わからない。
でも…
これは長女が自分で望んだことだ。
「関わらないでくれ」
「自立したいから縁を切ってくれ」
そう言ったのは長女本人なのだから。
私たちは、ただそれに
応じただけの話だ。
9月以降、
大事な手続き関係の書類を
特定記録郵便で3回送った。
直接、長女の手元に届くように。
でも結果は…3回とも返送。
一度も再配達の手続きをせず、
保管期限が過ぎて戻ってきた。
まぁ
そうなるだろうとは思っていた。
だから念のためコピーを取り、
その都度、レターパックでも送っておいた。
見ているのかどうか。
それもわからない。
もし長女が少しでも心を入れ替えて、
反省とまではいかなくても
何かしらのアクションを
起こしてきたら…
その時はすぐ動けるように、
私たちは連絡が取れる状態のまま
今もにしている。
でも…
長女から
音沙汰は何ひとつない。
スマホが壊れているのでは?
と思うほどだ。
もちろん、そんなわけはない。
長女は私たちを、着信拒否し、
LINEもブロックしているのだから。
8月末…
私は長女から
怒涛のLINEを受けた。
すべては書かないが、
一部だけ挙げると…
「慰謝料払え」
「くそ○ね」
「毒親」
「お前のせい」
「お前みたいな底辺の人間は○ね」
そんな言葉だった。
それでも私は、着信拒否も
LINEブロックもしなかった。
でも長女は言いたいことだけ言って
そのまま逃げた。
きっと長女は、
誰かのせいにできれば
それでよかったのだろう。
そして今、推したちが住む街で
自由を手に入れたと
勘違いしているのだと思う。
きっと今もメン地下に通い、
ジャニオタも続けているだろう。
チケットをあの手この手で確保して、
立ち位置に入り、
ファンサうちわでアピールし、
公式グッズを買い尽くす。
そんな生活を
続けているのかもしれない。
でも、そこには必ずお金がかかる。
昔は心配していた。
変なお金の稼ぎ方をして、
いつか大きなトラブルに
巻き込まれるのではないかと。
でも今は…
もしそうなったとしても
自業自得だと思っている。
むしろ大きな出来事が起きれば、
その時目が覚めるかもしれない。
ただ…
それがいつなのかは
わからない。
もしかしたら
一生気づかないかもしれない。
依存というのはそういうものだから。
それに、
そんな自由も長くは続かない。
若いうちは
まだいい。
でも、これから先の人生を
まったく考えていないからこそ、
今の行動なのだろう。
長女が
これからどんな人生を送るのか。
私にはわからない。
そして正直に言えば…
今の私は
長女を心配する気持ちが
ほとんどない。
好きに生きればいい。
後悔するのも、泣くのも、
すべて
長女自身の人生だから。
失った時間を
取り戻せるかどうかも、
それは長女次第だ。
後悔し、反省し、
自分で前に進もうと思わなければ、
何も変わらない。
でも…
それを教えるのは
もう私たちではない。
本来なら
影で支えてあげるのが
親なのかもしれない。
でも私たちは
もう何度も心が折れた。
そして最後には長女から
絶縁状のような言葉を
突きつけられた。
だから今、私の心は
空っぽだ。
今の感覚はもう…
元親。
そんな感じだ。
少し酷い言い方かもしれないけれど、
最近ふと思うことがある。
長女は本当に
私が産んだ子だったのだろうか、と。
もしかしたら卵で生まれて、
どこかで別の誰かが温めて
孵化させたのではないか。
そんなふうに思うくらい、
今の長女はまるで他人だ。
少し重い話かもしれない。
でも…
これが、今の現実だ。
