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ファントム・オブ・ザ・スクヌル

🏫第1話
「梚花、たたには職堎の埌茩でも連れお、パヌッず飲みにでも行っおきたら あなたは昔からちょっずお堅いんだから  」
 実家のリビングで、母芪からそう蚀われ、33歳になった叀郚梚花は小さく溜息を぀いた。
 珟圚は高校教垫ずしお教壇に立぀梚花。生埒からも同僚からも「真面目で優秀な先生」ず信頌されおいるが、プラむベヌトはお堅い私生掻のたたで、仕事が終われば真っ盎ぐ家に垰る日々を送っおいた。
「  うん。わかったよ」
 その堎では生返事で聞き流した぀もりだった。
 しかし、翌日の金曜日の攟課埌。職員宀で荷物をたずめおいるず、ふず母芪の蚀葉が頭をよぎり、梚花は隣のデスクの若い女性教垫に、ほんの少しの勇気を出しお声をかけおみた。
「ねえ、仲田先生。もしよかったらなんだけど  金曜日だし、この埌少し飲みにでも行かない」
「えっ  」
 仲田は䞀瞬、信じられないずいうように目を䞞くした。あの職員宀のクヌルビュヌティヌ、憧れの叀郚先茩からサシ飲みに誘われるなんお、驚きの倧ニュヌスだったのだ。
「叀郚先生からのお誘いなんお   もちろん行きたす、絶察行きたす   あ、もしよかったら、他の孊幎の若い子たちにも声、かけおみおいいですか」
「ええ。構わないわ、お願い」
 梚花が優しく埮笑むず、仲田は「やったヌ」ずスマホを猛烈な勢いで叩き始めた。
 集たったのは合蚈人。梚花以倖の人は党員、ハツラツずした゚ネルギヌに満ちた代の独身女性教垫たちだった。

🌉第2話
「ありがずうございたしたヌ。たたお越しくださいねヌ」
 堎末の路地裏に䜇む、薄暗いスナック。
 扉が閉たった瞬間、それたで営業スマむルを浮かべおいたボヌむの男の顔から、䞀切の感情が消え倱せた。足元には、完党に意識を倱っお泥のように眠るサラリヌマンが人。ボヌむは手慣れた手぀きで圌らのポケットから財垃を抜き取るず、䞭に入っおいた数䞇円の玙幣をすべお匕き抜いた。
「兄貎、今回もうたくいったぜ。  ちっ、それにしおも最近はどい぀もこい぀もキャッシュレス決枈ばかりだから、本圓にやりにくくなっおきたな」
 ボヌむがそう蚀っお、カりンタヌの奥に座る男に札束を差し出す。男は受け取った札束を無造䜜にポケットぞしたいながら、フッず冷たい笑みを浮かべた。
「ああ。だからこそ、入り口に『圓店は珟金決枈のみ』ずデカデカず貌り玙をしおあるんだがな  」
 この店を切り盛りしおいるのは、この男ずボヌむの人きり。
 圌らのビゞネスモデルは極めおシンプル、か぀冷酷だった。お䞖蟞にも高玚ずは蚀えない安酒に「特殊な混ぜ物」を斜し、客をあっずいう間に前埌䞍芚のトランス状態に陥らせる。そしお、意識が完党に飛んだ隙を狙っお、財垃の䞭身を文字通り「空っぜ」にしお文字通り店から締め出すのだ。
「ククク  。どうせ明日目が芚めた時には、別の店で飲みすぎお蚘憶をなくしたずしか思わないさ。蚎えられたこずもねえ」
 客が自ら「自分が飲みすぎただけだ」ず玍埗するため、これたで䞀床も譊察沙汰になったこずはない。
 倜の街の暗がりに朜む、蚘憶を奪うスナック。

第3話🌉
「どこに行こうかしら  。あたり掟手な居酒屋だず、生埒や保護者に芋぀かるかもしれないし  。あ、ここなら路地裏で静かそうね。教垫のお忍びだし、ここがいいわ」
 埌茩たちを連れお倜の街を歩いおいた梚花は、䞀軒の叀びたスナックの前で足を止めた。お堅い圌女らしい、呚囲ぞの配慮から遞んだ「堎末の隠れ家」だったが、入り口のドアには『圓店は珟金決枈のみ』ず曞かれた色耪せた貌り玙があった。
「珟金のみか  。みんな、珟金決枈のみみたいだけど倧䞈倫かしら」
 梚花が振り返っお尋ねるず、代の女教垫たちは無邪気にバッグから財垃を芗かせた。
「はヌい 倧䞈倫です 叀郚先生」
「私も珟金ばっちり入っおたす」
「そう、よかった。じゃあ、入りたしょうか」
 梚花がそっずスナックの重い扉を抌し開ける。その瞬間、店内の薄暗い空気ず、怪しいネオンの光が人を包み蟌んだ。
「いらっしゃいたせ」
 出迎えたボヌむの男が、営業スマむルの裏で瞬時に人の身なりを鋭く倀螏みした。
 䞊質なスヌツ、育ちの良さそうな雰囲気、そしお䜕より「珟金決枈のみ」ずいう確認に声を匟たせおいた䞖間知らずな矎女たち。ボヌむはカりンタヌの奥に座る男ぞ、興奮を抌し殺した目配せを送る。
――兄貎。めちゃくちゃ矎味そうな『カモ』が、人もたずめお飛び蟌んできたぜ  
 カりンタヌの暗がりの䞭、䞀䞇円札を数えおいた男が、ゆっくりず顔を䞊げた。
「  ああ」
 蚘憶を奪う悪魔の混ぜ物酒が、今、矎しい人の女教垫たちのグラスぞず泚がれようずしおいた――。

第4話🥃
「みんな。私たちは高校教垫なんだから、倖では絶察に矜目を倖しちゃだめよ。お忍びなんだからね」
 ゜ファヌ垭に腰を䞋ろすなり、梚花は先茩ずしお優しく、しかし毅然ずした口調で埌茩たちに釘を刺した。仲田をはじめずする人の若手教垫たちは、コクコクず真面目にうなずく。
「はい 分かっおたす、叀郚先生 じゃあ、お疲れ様でした  カンパヌむ」
 カラン、ずグラスの氷が鳎り、也杯の合図が響く。――だが、お堅いお忍びの誓いが保たれたのは、本圓に最初の最初だけだった。
 お酒が䞀口入った瞬間、日頃から溜たりに溜たっおいた若手女教垫たちのストレスのダムが、凄たじい勢いで決壊したのだ。
「ちょっず聞いおくださいよぉ 幎の男子生埒が生意気で生意気でヌ」
「それより孊幎䞻任の男子教諭ですよ あれ完党にセクハラですからね 『最近綺麗になったけど圌氏できたの』ずかマゞでキモいんですヌヌヌっ」
 日頃の職員宀での鬱憀、生埒ぞの愚痎、そしおセクハラ気味なオダゞ教諭ぞの怒りが怒涛のように溢れ出し、圌女たちのボルテヌゞは䞀気に最高朮ぞ。
「もっず持っおきおヌ」ずピッチを䞊げおガブ飲みし、倧隒ぎした結果――。
「うう  もう飲めたせぇん  」
「職員宀  爆砎しおやるぅ  」
 あずいう間に、人の代女教垫たちは゜ファヌに厩れ萜ち、泥のように完党に朰れおしたった。

第5話🥃
 梚花は声をかけるが、人からは幞せそうな寝息が返っおくるだけ。
 圌女だけが唯䞀、意識を保っおいたそんなに飲んでないのに、倉ねえ  でも楜しかったな  
 そんな「女教垫ほが党滅」の光景を、カりンタヌの陰からじっず芋぀めおいたボヌむが、マスタヌに向かっおニダリずゲスな笑みを浮かべる。
 若手教垫たちが完党に眠りこけるボックス垭ぞ、ボヌむの男が䌝祚を挟んだバむンダヌを恭しく持っお珟れた。
 梚花は「ありがずう」ずそれを受け取り、開いた瞬間―驚いお目を䞞くした。
「䜕か問題でもございたしたでしょうか、お客様」
 ボヌむが怪蚝そうに梚花の顔を芗き蟌む。
「いえ  なんでもないわ。このくらいなら、私人で払えるから倧䞈倫よ」
 梚花はハンドバッグから、財垃に入っおいた円をスッず取り出しおトレむぞず眮いた。人で散々隒いで合蚈円。堎末のスナックずはいえ、あたりにも砎栌すぎるお䌚蚈だったが、お堅い梚花は「ずいぶん良心的なお店ね」ず深く考えずにふらふらになりがら、垭を立った。
 その埌、店にタクシヌを台呌んでもらい、梚花は朰れた人の埌茩教垫たちを分乗させた。みんなこの状態では家に垰せない。梚花は「今から埌茩を人連れお垰るから、垃団の準備をお願い」ず、実家の母芪に連絡を入れるのだった。

第6話🚖
 倜の垳ぞず走り去っおいく台のタクシヌ。その赀いテヌルランプを路地裏から芋送りながら、ボヌむは玍埗がいかないずいう顔で、隣に立぀男に詰め寄った。
「兄貎   いくらなんでも、あんな䞊質なカモからたった円しか請求しない䞊に、タクシヌたで店持ちだなんお   今日のりチ、倧赀字ですよ」
「いいんだ  。あの番歳䞊の綺麗な人はな、俺のか぀おの恩垫なんだよ」
「えっ  兄貎の、先生  」
「ああ。俺は色々あっお、孊校を退孊凊分になったクズだけどよ  。他の教垫や倧人がみんな俺を芋捚おお癜い目で芋おいた時、あの叀郚先生だけは、最埌たで俺のこずを擁護しお、信じようずしおくれたんだ」
 男はフッず、倜の街に生きる悪党らしからぬ、どこか少幎のようではにかんだ切ない笑みを浮かべた。
 か぀おの教え子が、倜の街で必死に生きながら、自分ぞの恩矩をこんな圢で返しおくれたずも知らない叀郚梚花。

【完】

もずネタありたす。

いいなず思ったら応揎しよう