土地家屋調査士と宅建士の違いは?仕事内容・独占業務・ダブルライセンスを図解
土地家屋調査士と宅建士は何が違う?「一つの土地が売れるまで」で分かる3つの専門職
7月31日は「土地家屋調査士の日」です。
1950年7月31日に土地家屋調査士法が成立したことに由来しています。土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記と、土地の境界である「筆界」を明らかにする業務の専門家です。日本土地家屋調査士会連合会
……と聞いても、普段不動産に関わらない人には、少し分かりにくいかもしれません。
土地家屋調査士という名前から、
土地の面積を測る人?
不動産屋とは違うの?
登記なら司法書士では?
宅建士とは何が違うの?
と思う人も多いはずです。
そこで今回は、一つの資格を法律用語から説明するのではなく、
古くから所有している土地を売ることになった
という場面から、土地家屋調査士・宅建士・司法書士の違いを見ていきます。
結論|不動産を「現物・取引・権利」に分ける
3つの専門職の違いは、不動産を次の3方向に分けると理解しやすくなります。
土地家屋調査士
土地や建物の物理的な状態を調べ、表示登記へ反映する専門家
土地の位置、形、面積、地目、筆界や、建物の所在、種類、構造、床面積などを扱います。
宅建士
不動産を取引する前に、重要な情報や契約条件を説明する資格者
不動産の売買や賃貸借において、買主・借主が契約するか判断するための情報を説明します。
司法書士
所有権や抵当権など、権利の変更を登記する専門家
売買による所有権移転、相続登記、抵当権の設定・抹消などを扱います。
土地家屋調査士が扱う「表示の登記」と、司法書士が扱う「権利の登記」は、不動産登記の中でも役割が分かれています。法務省

一つの古い土地を売ることになった
例えば、親から相続した古い土地を売却することになったとします。
土地には昔から塀があります。
ところが、よく調べてみると、
塀の位置が本当の筆界なのか分からない
登記上の面積と実際の面積が違うかもしれない
土地の一部だけを分けて売りたい
古い建物が登記に残っている
増築部分が登記へ反映されていない
といった問題が見つかりました。
不動産会社へ売却を依頼する前に、まずは「売ろうとしている不動産が、現実にどのような状態なのか」を整理する必要があります。
ここで土地家屋調査士が登場します。
STEP1|土地家屋調査士が現地と資料を調べる
土地家屋調査士は、法務局の資料や地図、地積測量図、過去の測量資料、現地の状況などを調査します。
必要に応じて、
土地の測量
隣接地所有者との立会い
筆界に関する調査
境界標の確認や設置
分筆登記
地積更正登記
地目変更登記
建物表題登記
建物滅失登記
などを行います。
土地家屋調査士の中心業務は、不動産の表示に関する登記に必要な調査・測量と申請手続の代理です。筆界特定手続の代理なども業務に含まれます。法務省
つまり、単に土地の長さを測るだけではありません。
現地に存在する土地・建物の状態を調べ、公的な登記記録へつなげる
ところまでが仕事です。
STEP2|宅建士が取引に必要な情報を説明する
土地の状態が整理され、売買を進める段階になると、宅建業者と宅建士が関わります。
買主は、土地を見ただけでは、
誰が所有しているのか
法令上どのような制限があるのか
建物を建てられるのか
私道負担があるのか
水道やガスが使えるのか
契約を解除できる条件は何か
を判断できません。
そこで宅建士が、契約前に重要事項を説明します。
宅建士が担当する代表的な業務は、
重要事項説明
35条書面への記名
37条書面への記名
です。
37条書面そのものの交付は宅建業者の義務ですが、書面への記名は宅建士が行います。現在は押印義務が廃止され、一定の条件のもとで電磁的方法による書面提供も可能です。国土交通省
土地家屋調査士が不動産そのものを調べるのに対し、宅建士は、
その不動産をどのような条件で取引するのかを説明する
役割を持ちます。
STEP3|司法書士が所有権の移転を登記する
売買契約が成立し、代金決済と引渡しを行う段階では、所有者を売主から買主へ変更する登記が必要になります。
この所有権移転登記を代理する専門家が、司法書士です。
司法書士は、所有権移転登記のほか、
相続登記
抵当権設定登記
抵当権抹消登記
登記名義人の住所・氏名変更
など、不動産の権利に関する登記を扱います。法務省

土地家屋調査士は、どんな場面で必要になる?
代表的なのは、次のような場面です。
土地を二つに分けたい
一筆の土地を二筆以上に分ける場合は、分筆登記を行います。
現地の測量や筆界の確認、図面の作成などが必要になります。
登記上の面積と実測面積が違う
登記記録に記載された地積と、実際に測量した面積が異なる場合には、地積更正登記を検討します。
建物を新築した
新築した建物について、所在、種類、構造、床面積などを登記するのが建物表題登記です。
建物を取り壊した
登記上存在している建物を取り壊した場合には、建物滅失登記が必要になります。
土地の境界が分からない
現地に塀やフェンスがあっても、その位置から筆界を当然に判断できるとは限りません。
土地家屋調査士は、資料、現地の状況、測量、関係者との立会いなどを通じて、筆界を明らかにするための調査を行います。
筆界特定制度を利用する場合には、登記官が専門家の意見や調査結果を踏まえて筆界を特定します。法務省
宅建士は、どんな場面で必要になる?
宅建士は、宅建業者が行う売買・交換・貸借の取引で重要な役割を持ちます。
例えば土地を購入するときには、契約前に、
登記記録に記録された事項
都市計画法や建築基準法等の制限
私道負担
水道、電気、ガス、排水設備
手付金等に関する事項
契約解除
違約金
その他の重要な取引条件
などが説明されます。
宅建士は土地を測量する資格ではなく、所有権移転登記を代理する資格でもありません。
買主や借主が、契約前に判断するための情報を説明する資格者
と整理すると分かりやすくなります。

「表示の登記」と「権利の登記」は何が違う?
土地家屋調査士と司法書士は、どちらも登記に関わるため混同されやすい資格です。
表示に関する登記
土地や建物の物理的な状態を記録します。
例えば、
所在
地番
地目
地積
建物の種類
建物の構造
床面積
などです。
土地家屋調査士は、表示に関する登記に必要な調査・測量や申請手続を扱います。
権利に関する登記
その不動産を誰が所有し、どのような権利が付いているかを記録します。
例えば、
所有権
抵当権
地上権
賃借権
などです。
権利に関する登記の申請代理は、主に司法書士が扱います。日本土地家屋調査士会連合会

こんなときは、誰に相談する?
土地家屋調査士
土地の境界が分からない
土地を分けたい
登記上の面積と実際の面積が違う
土地の地目を変更した
建物を新築、増築、取り壊した
未登記の建物がある
表示登記について相談したい
宅建業者・宅建士
土地や建物を売りたい
不動産を購入したい
賃貸借契約を結びたい
物件の法令上の制限を知りたい
契約条件について確認したい
重要事項説明の内容が分からない
司法書士
不動産を売買して所有者が変わる
相続登記をしたい
抵当権を設定・抹消したい
登記名義人の住所や氏名が変わった
権利に関する登記を相談したい
実際には一つの案件に複数の問題が含まれ、専門家同士が連携して進めることもあります。

宅建士と土地家屋調査士のダブルライセンスは相性がよい?
両資格は、業務が同じなのではなく、不動産を見る角度が補完関係にあります。
宅建士の知識があると、
不動産取引
契約
重要事項説明
宅建業法
法令上の制限
を理解できます。
土地家屋調査士の知識があると、
測量
土地の筆界
図面
土地・建物の現況
表示に関する登記
を理解できます。
両方の資格を持つことで、
現地の物理的な問題
と
取引・契約上の問題
を横断して捉えやすくなります。
一方の資格を取得しても、もう一方の資格者だけに認められた業務を行えるようになるわけではありません。
ダブルライセンスを検討するときは、
不動産会社で取引を扱いたいのか
測量・境界・表示登記を専門にしたいのか
現地作業が好きか
契約や説明業務が好きか
将来的に独立したいか
から考えるのがよいでしょう。

どちらの資格が向いている?
宅建士が向いている人
不動産の売買や賃貸に関わりたい
法律や契約の勉強が好き
不動産会社や管理会社で働きたい
幅広く使われる不動産資格を取りたい
不動産投資や取引の知識を身につけたい
土地家屋調査士が向いている人
測量や図面作成に興味がある
土地の境界を扱いたい
現地調査と法律業務の両方に関わりたい
表示登記の専門家になりたい
独立できる専門資格を目指したい
同じ不動産資格でも、実際の仕事はかなり異なります。
資格試験の難易度だけではなく、合格後にどのような働き方をしたいかから逆算することが大切です。
宅建受験生が土地家屋調査士を知る意味
宅建試験では、35条の重要事項として、
登記記録に記録された事項
私道負担
法令上の制限
建物状況調査
物件の形状や構造
などを学びます。
これらを暗記項目としてだけ見ると、なぜ説明が必要なのか分かりにくいかもしれません。
実際の不動産取引では、その前提として、
土地の筆界はどこか
面積は正しいか
建物は登記されているか
増築部分が反映されているか
という「現物の状態」があります。
土地家屋調査士の仕事を知ると、登記記録に記録された事項が、単なる紙の上の数字ではないことが見えてきます。
また、宅建業法の問題では、
誰が調査するのか
誰が説明するのか
誰が登記を代理するのか
という主体の違いが重要です。
資格同士の役割を知ることは、宅建の知識を実際の不動産取引へ結びつける助けにもなります。
まとめ
土地家屋調査士と宅建士は、どちらも土地や建物に関わる国家資格です。
ただし、中心となる役割は異なります。
土地家屋調査士
土地・建物の物理的な状況を調査し、表示登記へつなげる
宅建士
不動産取引に必要な重要事項や契約条件を説明する
司法書士
所有権や抵当権など、権利の変更を登記する
不動産を、
現物・取引・権利
の3つに分けると、それぞれの資格の役割が理解しやすくなります。
7月31日の「土地家屋調査士の日」をきっかけに、不動産を支えている専門職へ少し興味を持ってもらえればと思います。
宅建試験の勉強をしている方へ
私は、令和2年から令和7年までに実施された本試験8回分・全400問を、18項目、延べ7,200のメタデータ項目で整理しました。
そのうち宅建業法160問を13領域に分類し、「何から学べば短い時間で得点につながりやすいのか」を分析しています。
13領域のPriority Score、具体的な学習順、7日間の学習プランはこちらにまとめました。
▼宅建業法20問の学習優先順位
https://note.com/novel_stork3163/n/nbfc16397b48e?sub_rt=share_sb
