MSX2/ゲーム中で使用しているフォントの話
『ぬけがら堂本舗』という個人レーベルでMSX2用のゲームを制作しているnukegaradotnetと申します。
私がインディーゲーム制作者と称してMSX界隈に復帰したのはコロナ禍真っ只中の2021年頃なのですが(「復帰ってお前、別のエントリではMSX知らんファミっ子育ち言うてたやんけ!」という突っ込みについては来歴説明が長くなるのでここでは省略します)、その前には主にデザイナーの真似事みたいなことをやっておりました。
過去に制作したTrueTypeフォント
このデザイナーもどきの時期には色々やっていたのですが、中でも割と力を入れていたのがフォント制作です。このエントリの読者さんは恐らくMSX愛好家やコンピュータ技術者といった方が多いでしょうから、そんな皆さんに興味を持って貰えそうな物だと下記の様なフォントを作っていました。
8bitANK-S
走査線の「隙間」が入ったレトロPC風フォント、と言っていますがデザイン上のモチーフはMSX2内蔵のデフォルトフォントで、width40モードとwidth80モードの2パターンを制作しています。
SVNUM_8SEG
個人的に気に入っているのがこちら。ちょうどソ連のインダストリアルデザインにハマっていた頃で、その中にあった8セグメントの数字パターンがとてもカッコ良かったのでアレンジしてアルファベットと一部記号を追加したフォントです。
【おまけ】ぬけがら堂本舗ロゴ

ちなみに冒頭で紹介した個人レーベル『ぬけがら堂本舗』のロゴも既製品フォントではなくフルスクラッチの自作物です。これはTrueTypeフォントではありませんが結構お気に入りです。
MSX2用ゲームで使用しているフォント
さてそんな感じで元々フォントフェチの傾向があって字面の見栄えに多少こだわりを持っており、後述する様々な問題もあったのでMSX2でゲームを制作する際にもデフォルトのフォントをそのまま使うという選択肢は最初からありませんでした。
MinQシリーズ
まずはMinQシリーズ。毎回書いていますが私のnoteは基本的にゲームの宣伝が目的ですのでしつこく書きます。頼む!みんな買うてくれ!
このゲームは絶対に譲れないポイントをいくつか決めてから開発を始めておりまして、そのうちの一つが『濁点を1文字扱いしない』でした。理由は単純で『こんな かんし゛の テキストに なるのか゛ カッコわるくて いやた゛ったのて゛す。』。もちろんこの方がいかにもレトロPCっぽくて好ましいと感じる人もおられるでしょうから、これは良し悪しではなく単に作品の方向性と制作者の好みの問題です。
しかしそうなると8×8ドットのPCGで使える濁点入りのひらがな・カタカナフォント(テキスト表示時には縦横1ドットずつ空ける必要があるので実質7×7ドットのフォント)を用意しなければならないのですが、ここでレトロPC界隈の皆さんにはお馴染み美咲フォントの出番となります。
https://littlelimit.net/misaki.htm
美咲フォントは8×8ドット(実質7×7ドット)でデザイン性・視認性に優れるだけでなく、JIS第一・第二水準までサポートしている大変素晴らしい日本語ビットマップフォントです。美咲明朝と美咲ゴシックの2種類があり、私は美咲ゴシックをベースに極々一部の字形をカスタマイズしております。
というわけで日本語については美咲フォントを使用していますが、英数字・記号はデフォルトでも美咲フォントでもなくフルスクラッチで新規作成しています。

なぜわざわざ新規作成したのかと言うとこれも見栄えの問題で「大文字・小文字を使い分けたいが、既存フォントの小文字に不満があった」というのが一番大きな理由です。小文字のg・p・q・yは本来下側に伸びる字形なのですが、8×8ドットという限られたサイズでは下側に伸ばすことができず上側に飛び出てしまってテキストラインが揃わない、あるいは無理矢理ラインを揃えるために字形バランスを崩してしまっているケースが多いのです。また、等幅フォントでは小文字の文字間がどうしてもアンバランスになりがちという問題もあります。これらについても「レトロPCはそういう物なので別に気にしないよ」という人の方が多いだろうとは思うのですが、私にとっては日本語の濁点と同様に受け入れがたいポイントだったのです。
そんな時、海外のレトロ風インディー界隈を眺めていたら同じ不満を持っておられたのか「大文字の字形をそのまま縦方向に圧縮して小文字扱いにする」という力業で解決しているゲームを発見しました。「マジかよ!こんなんアリなのか!」となって早速描いてみたところ、字形を崩さずにテキストラインが揃っただけでなくスペイン語などのアクセント記号もしっくり収まったという感じです。ネイティブの方達がこれをどの様に感じるか不安だったものの、今のところはポジティブな反応をいただいています。もちろん中には合わない方もおられるだろうとは思いますが……。
dhūta dhūta
ここから先は現在開発中のゲームの話で、執筆時点での内容になります。今後変更される可能性がありますのでご了承ください。
dhūta dhūtaはMinQシリーズで直面した技術的な問題を解決する、というテーマで開発を始めたRPGです。MinQシリーズで直面した問題は多岐に渡りますがテキスト周りでは大きく2つあって、1つは先ほど書いた『濁点を1文字扱いせず8×8ドットのPCGで濁点入りのひらがな・カタカナを表示する』を額面通り実装するとPCG定義数が全く足りないという問題。もう1つは先日別エントリで書いた『多言語対応すると必要なテキスト表示欄が日本語と欧文で倍近く違う』という問題です。
この2つの問題を『日本語は濁点行とかな行の2行で1文とし、欧文は1行1文のまま実装する』でまとめて解決しようと考えています。前段はファミコンやゲームボーイなど往年の8bitゲーム機で使われていた手法で、濁点を独立した1文字として用意することでPCG定義数を大幅に削減すると同時に、濁点をかなの右側ではなく上に表示することで外観上の問題も解消できます。読みやすい行間が確保できるメリットもある他、日本語が欧文の2倍の表示スペースを消費し結果的に日本語と欧文で必要なテキスト表示欄のバランスも取れるという寸法です。
フォントについてはMinQシリーズ同様に日本語は美咲フォント、英数字は自作フォントを使えば良かろうと思ってモックを仮組みしてみたところ、英数字はともかく日本語の行間が妙に間延びして見えます。これはどういうことかと観察してみると、前述の通り美咲フォントは8×8ドットで文字組を完結させるためフォント自体は7×7ドットで設計されているのに対して往年のゲームでは最初から2段組を前提としているためフォント自体は7×8ドットで設計されていることが分かりました。
そこで美咲フォントをベースに往年のドラクエ・FFで使われていたフォントのエッセンスも取り入れた2段組用の7×8ドットフォントを作成しました。さらに細かい話をすると敬愛するゲームボーイ版SaGaシリーズに倣い、カタカナは若干小さい7×7ドットのままとする予定です。


最初に書いた通りこちらはまだ現在開発中のため今後変更される可能性もありますが、とりあえず現状はこの様な形で進めています。
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