【詩】始まりだと思っていたら
【詩】始まりだと思っていたら
始まりだと思っていた
新しい場所
新しい人
新しい時間
ここから何かが変わると
どこかで信じていた
少しだけ背筋を伸ばして
少しだけいい顔をして
少しだけ未来を期待していた
でも
気づけば
同じようなことでつまずいて
同じようなことで悩んでいた
景色は変わっているのに
自分はあまり変わっていなかった
新しいと思っていたものの中に
前と同じ自分が
そのまま立っていた
始まりだと思っていた場所は
ただ場所が変わっただけで
続きだった
終わったと思っていたものが
形を変えて
そこに残っていた
それでも
少しだけ違うのは
前よりも
少しだけ気づいていること
同じところでつまずいていることも
同じように迷っていることも
少しだけ
わかっている
だから今度は
ほんの少しだけ
違う歩き方をしてみる
始まりじゃなかったとしても
それでも
ここから
またやり直せばいい
大きく
まったく違うスタートを
切ったつもりで
【エッセイ】始まりだと思っていた場所で
新しいことを始めるとき、
人はどこかで
ここから変わる、と思っている。
場所が変われば、
出会う人が変われば、
流れも変わって、
自分も変わるような気がする。
実際、最初はそう見える。
景色は新しくて、
空気も違って、
自分も少しだけ背筋を伸ばしている。
でも、少し時間が経つと、
見えてくるものがある。
同じようなところでつまずいて、
同じようなことで悩んでいる自分だ。
そのとき、
少しだけがっかりする。
ああ、変わっていなかったのか、と。
けれど最近は、
それを「変わっていない」とは
思わなくなった。
続いているのだと思うようになった。
終わったはずのものが、
形を変えて、
そのまま流れの中に残っている。
だから同じような場面に出会うし、
同じように迷う。
でも、まったく同じではない。
前と同じように見えて、
ほんの少しだけ違う。
それは、
自分が少しだけ気づいているということだ。
またここでつまずいているな、とか
また同じことで迷っているな、とか
そのことに気づけるだけで、
前とは違う。
大きく変わることは、
そう簡単には起きない。
でも、小さな違いは、
ちゃんと積み重なっていく。
だから、始まりだと思っていたものが
ただの続きだったとしても、
それは悪いことではない。
むしろ、その続きの中で、
ほんの少しだけ歩き方を変えていくことが、
自分にとっての変化なのだと思う。
そして、
それでも人は、
新しい場所に立ったとき、
新しいスタートを切ったつもりでいる。
それでいいのだと思う。
たとえそれが続きだったとしても、
自分の中で
ここから始めると決めた瞬間に、
それはもう、ひとつの始まりになる。
