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歳時記を旅する76〔雷〕前*退きぎはの捨台詞めきはたた神
土生 重次
(昭和五十六年作、『歴巡』)
雷は、太古の昔から神の怒りとして、また雷神として人々にあがめ恐れられていた。京都の上賀茂神社は、雷神である加茂別雷神が祀られている。能の『加茂』の物語の前半は、上賀茂神社に参詣に来た神職に、賀茂川に水を汲みにきた女が、川上から矢が流れてきて男子が生まれたという話をして消えてゆく。後半は、天女姿の御祖神が現れ舞を舞い、つづいて別雷神が現れ、トドロ、トドロと舞台を踏み鳴らし、雷を起こす舞を舞う。そして五穀成就、国土の守護を約束して去っていく。
別雷神は雷神だが、昔の人は雷神と書いて〝はたた神〟(畑と田の神)と読んだ。雷神は田畑に雨をもたらす大事な神でもあった。
句は、雷が遠ざかるときの小さな雷鳴。人々に恐れられる神であるが、何かを言い残し、どこか人懐こさもある。
(俳句雑誌『風友』令和八年七月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)
☆能の演目『賀茂』のあらすじはこちらのサイトからどうぞ。
(岡田 耕)
