2025年YBCルヴァンカップ3回戦横浜FC-FC町田ゼルビア「いつものからの脱却」
試合後、横浜には長居せず帰宅して最寄り駅近くの飲食店で遅い夕食をとっていた。勝った後の試合を食事しながら振り返るのは至福の時間。前半リードされて終わったことも、勝利の記憶が上書きしていく。リーグ戦で17位に位置する横浜は勝ち星が少ないので、たまに訪れる勝利はカップ戦であっても格別なもの。
ペナルティスポットに立った町田・岡村が見せた笑顔。しかし、それはこれから蹴るペナルティキックが追い込まれている苦笑いのそれだった。1本目仙頭、2本目昌子のペナルティキックを横浜GKフェリペ・メギオラーロが止めて両チーム3人ずつ蹴って3-1と、4人目の岡村が外せばここで町田のルヴァンカップ敗退が決まるからだ。この試合一番の緊張感溢れるシーンで、岡村のキックは枠の外に転がり横浜の勝利が確定。メギオラーロにはメンバー外の山根がいの一番に飛び込むという優勝でもしたのかという喜びのシーンとなった。
そんな思い出を肴に夕食をかきこむ。
好対照な両チームのミラーゲーム
好対照なスタメンとなった。タイトルが欲しい町田は先週のリーグ戦のスタメンとベンチメンバーをミックスさせたスタメンでフィールドプレーヤーで今季初出場は沼田1人、対して横浜は特別指定の大学生、長期の負傷明け、リーグ戦の出場機会に恵まれていないメンバーが多く出場している。先週末の湘南戦に先発していた選手はゼロ。
そのため戦術の遂行は町田に一日の長がある。強いチームは再現性のある攻撃ができる。迷いが少なく形を徹底できる部分に強みがある。キックオフから攻勢に出たのは町田。3-4-2-1のミラーゲームでロングボールを使って横浜のラインを下げさせて、町田がボールを持って前進していた。前半風上だった町田の作戦通りの戦いになった。
前半12分コーナーキックのこぼれ球を、町田・ミッチェルデュークがヘディングで押し込んだが、GKフェリペが渾身のセーブを見せるもその跳ね返りを町田・藤尾に押し込まれて失点。
前半終了間際に縦パスを受けて反転した駒沢から右サイドを走る鈴木準弥にパスが通ると、その折り返しに飛び込んだ櫻川だったが足が合わずに強くヒットせず町田GK守田に難なく抑えられた。
横浜は風下であり、ロングボールも風に押し戻されて中々自由に収められなかった。また町田のプレスの前に小倉や中野が何度か捕まってしまい思うように櫻川の近くでボールを確保するのが難しかった。
0-1とはなったが、セットプレーからこぼれ球の失点だけで大きく崩されることなく前半を終えて後半に希望がつながった。
風向きが変わる
この試合で、横浜にはっきり流れがやってきたのは後半20分の福森の投入と、後半31分の遠藤貴成の投入からだろう。福森の投入で伊藤槙人を休ませつつ、左センターバックで出場していた細井を3バックの真ん中を経験させようとした。
しかしこれが奇策に映らなかったのは、細井のこの日のパフォーマンスが高かったからだ。左利きのセンターバックは2回戦の北九州戦と同じ3バックの左センターバックで出場すると、代名詞代わりに大きなサイドチェンジを見せただけでなく守備でも安定感あるプレーを披露。明らかなミスが少なく、いてほしいところにいてプレス回避の選択肢になっていた。ボールコントロールにも長け、縦にボールを付けられる強気なメンタルもあるし、時折自身も前線に顔を出す積極性も見せた。スタメンクラスの選手の連戦の疲労に目をつぶりながらプレーさせる必要がない。万が一を考え山﨑もベンチに入れていたが、彼を投入しなくても町田の攻撃は抑え込めた。細井がマッチアップしていた町田・ミッチェルデュークが下がった後は、より優位になった。
後半31分には昨年夏の右膝前十字じん帯損傷での離脱から復帰したばかりの岩武を下げて遠藤貴成が出場。遠藤貴成の特徴は北九州戦でも見ていたが、縦へも中へも入っていける器用さとキレのあるドリブル。それでも投入直後は、鈴木準弥も小川も彼の優先順位は高くなかったが、プレスを受けて最後の選択肢として遠藤貴成にパスを出し、遠藤が果敢な突破を見せたところから横浜にリズムが生まれる。
対面していたのは、23年まで横浜に所属していたスタミナには絶対の自信を持つ林。その彼をもってしてもマークをずらされてしまう程のドリブルの切れ味を見せる。右サイドからクロスを上げ切って終わるところもよい。櫻川にいきなり縦パスをつけるのではなく、外を切り崩して侵入出来たことで町田の攻撃も間延びさせられた。
反逆の一撃
プロ生活も長くなると使ってもらえなくなったりしても、その評価を受け入れてまた頑張るのが一種のルーティンになっている。ベテランは長くこの世界にいるだけに、少し試合に出られないからと腐ることなく淡々といつでも出られるように準備している。この試合でも小川は途中出場だったが、一発回答して見せた。
後半39分の小川の一撃は町田にダメージを負わせるだけでなく、指揮官に対してもアピールとなるゴールだった。町田のロングスローをクリアしてヘディングで小倉が前方に送ると、町田・望月がこれをクリアミスして後ろに逸らしてしまう。櫻川がボールを収めて、ボールを町田の裏のスペースに送ると、走りこんだ小川がダイレクトでシュートを放った。自身から遠い対角に飛ばしたボールがゴールに吸い込まれていった。
昨年J2で34試合2088分出場した選手が、今年はここまで17試合で6試合76分。1試合で10分弱の起用。決定力不足に泣いた反省からか、シャドーでは鈴木武蔵と山田康太の起用が目立つが、昨年四方田監督指揮下でスタメンを張っていたスピード豊かな男のゴールは、決定力やフィジカルの強さの足し算だけでゴールは生まれるものではないと語っているようだ。
追撃の手を止めないが
同点になってからは横浜の流れになった。延長に入ってから登場したミシェル・リマとレオ・バイーアのコンビネーションも町田を翻弄していた。左サイドを突破してペナルティエリア深いところまで侵入してゴールを脅かした。遠藤貴成の突破も止まない。右サイドを制圧し、町田のラインはズルズル下がっていくばかり。ただ、最後の部分の精度が低くゴールを陥れるまでは至らなかった。
延長後半終盤には福森が蹴ったコーナーキックのこぼれ球に反応した小川がゴールに流し込もうとしたが、バウンドしたボールはラインを割っていないとしてゴールは認められなかった。福森の直接フリーキックも町田GK守田のセーブの前にゴールネットを揺らせなかった。
「いつもの」はいらない
120分戦い続けても決着つかずPK戦に。ここでリーグ戦では控えに甘んじているGKフェリペが神がかったセーブを見せた。町田1人目・仙頭のキックを防ぐと、2人目昌子のゴール左隅下を狙った技ありのシュートも左手1本で防いで見せた。そして3-1で迎えた先攻町田の4人目は岡村。コースを突いても止められるセーブを2度見せられて、さらに際どいコースを狙うしかなく、蹴ったボールはゴールの枠を逸れていった。横浜はこれでプレーオフラウンド進出決定。リーグ戦もこなしながら6月はルヴァンカップも戦うことになった。選手層や順位の関係から消耗は出来るだけ避けたいが、その試合の出場権を獲得したのは、リーグ戦での出場が少ない選手達だった。
昨年J1で3位の町田を下したことは価値があるが、その一方でこの選手たちのリーグ戦の出場は増えるのか。そこが焦点である。4月にリーグ戦で京都に敗れてから3連敗を喫した。その間、大きな変化もなく自分たちのいつものやり方にこだわった結果試合内容は悪化した。四方田監督はよく言えば信念を貫くが、悪く言えば自分のやり方を曲げない。どの監督も規律はあるので、毎試合コロコロ変えるべきものではないが、四方田監督の場合は悪い場合は弄るではなく耐える方向に出やすい。
とは言っても東京V戦も最低の内容だったことで、やっと福岡戦で室井が初スタメンを飾り、即結果を出したがこれもどうなるかわからない。いつものメンバーで結果が出ている時はそれでもいいが、これはこれで成功体験として定着して、またどこかでこれがいつものメンバーとして行き詰まる可能性を秘めている。
カップ戦とは言え、スタメンクラスを並べた町田を破った選手たちの評価を再考しなければならない。フェリペは試合勘も戻りつつあり瞬発力で結果を残した、遠藤貴成は山根不在の中で右サイドの新たな旗手に名乗りを上げただろう。小川は昨年のチーム得点王であることをアピールできた。広島戦で評価を落としたミシェル・リマも攻撃的なポジションでこそ機能すると認識できた。負傷から戻ってきた岩武も復帰初戦としてはまずまずの出来。熊倉は役割が違うが小倉よりもモビリティに溢れていた。消息不明だったレオ・バイーアも相手を翻弄するドリブルで持ち上がれる実力を見せた。こうした選手の活躍を適切に評価しないと、チームの力は上がらない。
信頼性のあるいつものメンバーは計算しやすいが、苦しい時や試合が続く場合に視点を変えられるか。指揮官に突きつけられた課題である。リーグ戦はまだ20試合近く試合が残っている長丁場。湘南戦や川崎戦のメンバー約20人でシーズン終わりまで過ごせるはずがない。
「いつもの」そんな過去の成功体験から安全な未来を選択しては成長しない。と、「いつもの」自宅近くの飲食店で、私も飲食店新規開拓を心に誓うのであった。
