2025年YBCルヴァンカップ プライムラウンド第2戦ヴィッセル神戸-横浜FC「小望月よ」
試合終了後、横浜のゴール裏に引き上げてきた選手たちは心なしか8月の勝利の時より喜び加減は穏やかな気がした。劇的なアディショナルタイムでの決勝点となった試合と、2試合合計で勝ち抜けが決まったとは言え目先の試合は負けている分素直に喜ぶことにためらいがあったのかもしれない。
試合の分かれ目
第1戦、お互い控えメンバー主体で試合を行い横浜が2-0と勝利した。その結果を受けて、神戸は第1戦からメンバーを9人交代させてほぼスタメンのメンバーで、横浜は控えの選手とスタメンの選手をミックスさせたメンバーで第2戦に挑んだ。
横浜としては、点差がありその上で控え選手を主体で使いながら徐々にスタメン組を戻して強度を上げる戦いになる。2点を追いつきたい神戸が試合開始から押し込んでくるのをどう耐えながら試合をコントロールできるかが鍵だった。
試合開始から想定通り神戸がボールを支配して攻勢に出る。ただ、個の力に押し込まれてもそこはじっと耐えて、前線のロングボールに活路を見出して横浜は戦う。新保が神戸・酒井にボールが入るたびに彼をけん制して左サイドからの大きな展開を許さないでいる。酒井から対角の神戸・武藤につながりそこから大迫、エリキが攻撃に絡むのは神戸の攻撃パターンの一つ。
前半26分試合が動く。その新保が自陣深い位置でクリアしたボールのこぼれ球を神戸・トゥーレルと小倉が競り合う。トゥーレルは間に合わないと考えたかタックルで小倉に迫り、小倉をそれを見て先にボールに触ってずらしたが、両者は交錯した。
そこで上田主審はトゥーレルにレッドカードを提示。退場となった。VARが介入し、オンフィールドレビューとなるもジャッジに変更なし。2点を追いかける神戸が残り約65分を10人で戦うことになった。
オンフィールドレビューをして退場を宣告した上田主審に神戸ゴール裏からはブーイングが飛ぶ。主審へのリスペクトがない方が、GKへのブーイングでリスペクトを語るのは片腹痛い。オンフィールドレビューになったからと言ってジャッジは変わると決められていない。交錯があったのは事実で正面から迫ったことより、足で後ろから蹴ろうとしたように見えたプレーの方が重大で最低でも警告、退場もありうるのは誰の目から見ても明らかだった。主審は対象に対して5メートル近くで視野を遮る選手などもおらずほぼ正面から注視していた。これがOFRになること自体意味不明だった。VARチェックで終了の範疇で、「はっきりとした、明白な間違い」または「見逃された重大な事象」はなかったのに、VARを担当した岡部氏の運用が間違ってるとすら感じていた。
直後の前半31分には大迫からエリキにパスが通りGK市川と1対1を迎えるが、ここは市川が良い飛び出しを見せてシュートをストップして事なきを得た。
ただ、この退場で横浜は戦いを難しくした。11対11で2点リードでそれをどう凌ぐかという部分が大きかったのが、相手が10人になり前半の残り時間はフワフワとしてしまった。攻めて3点差を目指すのか、あるいは対11人の時と同じくしっかり守ってカウンターに徹するのか11人で意思統一出来ていなかった。
神戸は逆に人数が少なくなり、より追い込まれてしまったので奮起するしかなく、一人少なくなった分スペースを使って飛び出していく選手が増えた。
静かな後半
後半になって先に交代をしたのは横浜。負傷明けでプレータイムを第1戦で11分だった前田はこの試合45分まで延ばした。リーグ戦に絡んでくるのはまだ先かも知れないが、こうして自信と試合勘を戻すには良い起用の方法だと感じる。窪田は個人的にはやや残念なプレーが多く第1戦と比べてプレータイムを減らしてしまった。第1戦よりさらに強くなったメンバーを相手にして中々推進力を見せられなかった。
しかし戦略的には、控えメンバーをミックスした横浜は前半スタメンで固めた神戸を無失点に抑え、強度を増してくる相手をにらんでスタメン組を投入して強度を確保したい狙いは遂行できている。
後半5分、神戸GK前川が足を滑らせてパスが短くなったのをルキアンが回収し、前線にプレスをかけてフリーになっていた山田にパス。山田はダイレクトで右足を振りぬいたがシュートはクロスバーに阻まれてしまった。
ただ、その後は神戸が押し込むが横浜が耐える時間帯が続く。交代も増えていく。神戸が飯野を入れたかと思えば、横浜は警告を受けた小倉に代えてアダイウトンを入れて前線にとにかくポイントを作りたいが、神戸の守備陣の前に自由にゲームを進められない。
後半39分に神戸にゴールが生まれる。左サイドを酒井に突破されてクロスを上げられると、中で待っていた大迫にフリーでヘディングシュートを許して失点。ボニフェイスと岩武のどちらが大迫を見るのかはっきりせずその間に飛び込まれてしまった。
ここから勢いづく神戸と言いたいところだが、交代枠を全て使っていたこともあり、さらに加速させることは出来なかった。むしろ今度は神戸の選手がどうやって同点を狙うのか迷いがあるように見えた。個の力で目指すならなりふり構わず大迫にロングボールを入れることも想定していたが、そうでもなく角度をつけたいのかボールを回してみたり、横浜はブロックを敷いて構えるだけで良くなった。
アディショナルタイム6分を過ぎて試合終了。この試合は1-0で横浜は敗れたものの2試合合計2-1で横浜が勝ち抜け、史上初の準決勝に進出することになった。
陽太の1点
正直この試合だけを見たら内容は良くない。シュートはたったの3本。前半の前田、後半クロスバーを叩いた山田、GK正面のジョアン・パウロのシュートの3本に抑え込まれた。神戸がいかにJリーグ連覇している相手とは言え数的不利の相手にこれでは厳しい。目先の試合は勝てばなんでもよいが、次以降の試合に不安が残る。
この試合も小倉の1点が効いている。第1戦で2点目を決めた小倉のミドルシュートがなければ延長に入っていただろう。「この試合も」としたのは、神戸との準々決勝に来れたのも、セレッソとの第1戦で4-0から1点を返した小倉のゴールがあり第2戦90分で同点に出来て、延長で逆転弾を決めきれた。
その小倉はこの試合で受けたイエローカードの累積によりルヴァンカップ準決勝第1戦は出場不可になった。小倉の1点がモノを言って勝ち上がってきた横浜。ラッキーボーイともいえる"ハマの太陽"小倉不在の準決勝をどう戦うか。
準決勝に残ったチームでリーグ戦で降格圏にいるチームは横浜だけ。日程も過密になり、控え選手のモチベーションアップの場と結果とでバランスを求められる。ただ、9月は新潟、湘南と残留争いのライバルとの戦いが控えており、来月の話より前にこの戦いにフォーカス出来るだろう。
また、10月も水曜日に試合があると言っても、8日だけであり大きなダメージよりも、2週間間隔が空いて試合勘などが損なわれるよりマシともいえる。
9月7日は満月の前日。満月は望と言われるところから、その望の前夜ということで小望月や待宵の月、あるいは幾望と言われる。まさしくこれから来る希望や楽しみを一番心待ちにして期待に胸を膨らませる日。その日にチームの歴史を塗り替えた。試合後ノエビアスタジアムを出た私たちを照らし出す月灯りは希望があることを示していた。
