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No.1922 美女のほほえみ

その昔、深代惇郎(1929年~1975年)というコラムニストが「天声人語」を担当することになった時、
「これからは、とびっきりの美女と付き合うことになった。」
とその喜びと覚悟を語ったようです。しかし、執筆できたのは、1973年(昭和48年)2月~1975年(昭和50年)11月1日までの2年9カ月間でした。1975年12月に病魔の為に斃れてしまったからです。46歳の若さでした。

その深代惇郎が、52年前の「エープリルフール」の前日に書いた「天声人語」のお話が面白いんです。全文ではありませんが、ご一読下さいますか?

 あすはエープリルフール。(略)東京の西武百貨店がこの日にちなんで「明るい楽しいウソ」を募集したら、ウソ三千が集まった。その入選作、佳作を読ませてもらった。
 少年少女の部に秀作が多い。「うれしいなー石油不足のおかげで東名・名神でローラースケートができるんだよ!」(小学校五年、男)。「全国のみなさんへおつたえします。第三次世界大戦は雨のため中止いたします」(十歳、男)。十四歳の少女には「最新の研究では『モナリザ』はひざまで描かれていてその上にマンガの本が一さつのっていたことが解りました」というのもあった。なるほど、モナリザの微笑は漫画を見たためだった。読んでいて、理屈なしに楽しい。空想が奇想天外で、なかなか独創に富んでいる。
 大人の部では「いよいよ近日発売。(冷水でOK)インスタント『ビールの素』〇〇商事株式会社」。「エープリルフールなので、女房に『愛しているよ』と言ったら、『私も…』」。傑作だが、子どもの作にくらべるとにが味が残る。笑いながら、現実世界の打算や思惑がどこかにこびりついていて、空想の翼は子供のように無邪気に羽ばたかないのだ。エープリルフールは四月一日、とくにその午前中に、罪のないいたずらで他人をかつぎ、おたがいに楽しむものとされている。とげとげしい毒のあるウソ、他人に迷惑や不快感をあたえるウソは、いくらうまくいってもエープリルフールのウソではない。邪気のない、楽しいウソがつけるかどうかは、多分、当人の人柄による。

「エープリルフール」(朝日新聞「天声人語」昭和49年3月31日)

「石油不足」「第三次(大惨事?)世界大戦」などの言葉は、今読むと思わずドキリとしてしまいます。半世紀が経って、より平和な世界が訪れているかと思いきや、一層その不安が増すばかりです。

昭和49年といえば、私は大学3年生でしたが、「東京新聞」を購読しており、深代惇郎のコラムの事を知りませんでした。その大学時代に、深代氏は、每日美女に向き合ってコラムをものしておられたのにと残念でなりません。後年、田舎教師の職を得て、初めて彼のコラムを知り、のめりこんだ次第です。何でもかんでも、やることなすこと、気づくことも人に後れるのが私の得意技のようです。

さて、私の大好きなウソは、あるウソつき大会で優勝した男の一言です。
「私は、生れてこのかた、一度もウソをついたことがない!」
でも、これってエープリルフールのカテゴリーには入らないのでしょうね、ざんねん!

「噴水のりちぎに噴けり万愚節」
 久保田万太郎(1889年〜1963年)
 エープリルフール(万愚節)だからといって、4月1日に世界公認のいたずらなウソで人を惑わせ笑わせているが、噴水は世間のそんな笑いも知らぬげに、今日も実直に水を高々と噴きあげているよというのでしょうか?
擬人化された生真面目な噴水と、4月1日を戯れる人間世界との対比や皮肉がユニークに詠みこまれているように思います。


※画像は、クリエイター・私の秘密のヨーロッパさんの「モナリザ」の1葉の拡大部だけとなりました。ゴメンナサイ!この微笑の正体は?