Angine de Poitrine|三日間で、もっともフィジカル FRF26
最初に見たのは、どこからともなくネット上に現れた、水玉模様の二人組。
二人でやっていることはなんとなく分かった。ただ、あの姿から勝手に想像したのは、ダフト・パンクのようなエレクトロ系の音だった。正体を隠したまま電子音を鳴らす、謎のユニット。そんな感じだと思っていた。
ところが、実際はギター兼ベースとドラムという組み合わせだった。
ギターとベースが一体になったような楽器でフレーズをループさせ、そこへドラムが入る。二人しかいないのに音はどんどん厚くなり、強いビートに乗って前へ進んでいく。
やっていることはかなり細かい。それなのに、本人たちは水玉模様の姿で、宇宙語のような言葉を話しながら妙にコミカルな動きをしている。笑
これはライブで見たら絶対に面白いと思った。
フジロックへ向かう車の中でも音源を流していた。
この音がステージではどうなるのか。三日目が来るのが待ち遠しかった。
当初は日曜の昼、RED MARQUEEへの出演が発表されていたが、最終的には19時からのFIELD OF HEAVENへ変更された。
二人が夜の森に囲まれたステージへ現れる。そう考えると、結果的に今の彼らにはFIELD OF HEAVENがいちばん合っている気がした。
そして迎えた最終日の日曜日は、朝から大雨だった。
天気予報を見ても、MASSIVE ATTACKが終わる頃まで雨になっている。三日間の最後の最後まで**ずぶ濡れ。**なんて日だ、と思った。
ところが、THE BREAKSの頃まで降っていた雨が、アンジーヌ・ド・ポワトリーヌの時間が近づくと上がった。
ステージにはジョージ・ウィリアムズが現れた。
ライブ中は撮影して構わないが、これから始まるリハーサルは撮影しないよう、観客へ呼びかける。
そう。これから本人たちが出てきて、本番前のセッティングを始めるのだ。
フェスのステージで、本人たちによるリハーサルから見られる機会はそうそうない。
二人はドラムパッドの位置や音を出すタイミングを確認しながら、細かな調整を続けていた。どちらかというと、ドラム周りを重点的に合わせているように見えた。
およそ10分ほどセッティングすると、二人はいったんステージを離れた。そこから本番までは、さらに15分ほど待つことになった。
その間にもFIELD OF HEAVENへ人が集まり続けていた。
後ろにはまだ入ろうとしている人がいるため、ジョージは観客へ前に詰めるよう促していた。ただ前へ押し込むのではなく、ライブが始まれば身体を動かせる程度の余地は残してくれた。
あれはありがたかった。ジョージには感謝である。笑
三日目は雨だったため、多くの人がバックパックを背負い、その上からポンチョを着て、折り畳みのチェアまで持っている。前日のWHITE STAGEでは身動きしづらいほどの混雑も経験していたので、あの余地は本当に助かった。
開演前には、どうやら入場規制も始まっていた。
FIELD OF HEAVENで、それもまだ本人たちが音を出す前からである。後ろを振り返ると、森の奥まで観客でびっしりと埋まっていた。
そして19時。
再びジョージがステージへ現れ、今日は伝説的なライブになるかもしれない、と二人を紹介した。
紹介が終わると、二人が動き出した。
何を話しているのかは分からない。やはり宇宙語なのだろうか。笑
観客は両手で三角形を作り、ステージへ向ける。二人の不思議な動きに観客が反応し、そのやり取りがFIELD OF HEAVEN全体へ広がっていった。
配信では静かに見えたかもしれないが、脇や後ろはかなり動いていた。
ヘッドバンギングのように首を振る人もいれば、身体を横へ大きく揺らす人もいる。頭をぐるぐる回したり、音に合わせて振り下ろしたり、それぞれが耳へ入ってくる音を身体で受け止めていた。
三日間歩き続けたあとで、立っているだけでも足の裏が痛かった。
それでも止まれない。
ギターとベースのフレーズが次々に重なり、ドラムがそれを押し出していく。二人しかいないとは思えない音が、スピーカーからガンガン流れてくる。その音が入ってくるたび、痛かったはずの足までまた動いた。
途中、観客全体でクラップする場面があった。
前方だけではない。脇から後ろまで、FIELD OF HEAVENを取り囲むように手拍子が鳴る。あれだけの人数が、ほとんどずれることなく同じタイミングで手を叩く。
ステージのビートに加わり、四方から身体へ飛び込んでくる手拍子。
この三日間で見たバンドの中で、もっともフィジカルに感じた。
といっても、身体をぶつけ合うような激しさではない。
音が耳から入るというより、そのまま身体へ吸収されていくような感覚だった。低音やリズムが入ると、首も肩も足も自然に動く。
ライブは、あっという間に終わった。
終演後、周りから聞こえてきたのは、
「ちょーいいじゃん」
という声だった。
いや、それがいちばん正しい感想だと思う。笑
そう、ちょーいいんです!!
あとでライブを撮影した映像のコメント欄を見ていると、PA付近から撮られた映像に対して「それでも現場には程遠い」というような書き込みがあった。
まったく同意だった。
映像でも面白さは伝わる。演奏の仕組みも、二人の動きも見える。でも、あの音が身体へ入ってくる感じまでは映らない。
やっぱり、このバンドはライブで見た方がいい。
あの「ちょーいいじゃん」は、現場であの音を浴びたからこそ出てきた。
