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【ボツ原稿救済シリーズ】大犬空港物語 旅情編⑧千畳敷海岸

パソコンの片隅に眠る
【ボツ】な原稿たちを救済するシリーズ。
①~⑦はなく、突然⑧です。あとで整えるかも。 



俺の名前は、大谷浩平。

今日は仕事が休み。
 
その日、俺は海にいた。
千畳敷海岸、というらしい。

夕日まではまだ少し時間がある。

 
小腹が減ったな。


「イカ焼き」と書かれた看板を見つけて車を停めた。
 


道路の左側の歩道を
「イカ焼き」 の文字だけを見つめて歩いていく。


突然、俺の顔のすぐ左横から声が飛んできた。

「アイスあるよ」


驚いて顔を向けると、

道路わきの民家の窓が開いていて、

古い畳が敷かれた暗い仏間に、
おばあさんが座っていた。

俺の顔をじっと見ている。

内と外から窓をはさんで、
見つめ合う俺とおばあさん。

おばあさんはしゃがれた声で、言った。
 

「なんだか、見たことある顔だな。どっから来た?」


 
だれか芸能人と勘違いしているのか?

まさかとは思うが、
俺が若い頃にテレビに出たのを見ていた?

いや、あの番組は日本では放映されていないはず……。

 
答えられずにいるうちに、おばあさんの姿は消えていた。

 
と思った瞬間、すぐ先の店の前に立っていた。
「イカ焼き」の店は、おばあさんの店だったのか。

「なに食べる?ソフトもあるよ。シェイクもあるよ。イカもあるよ。」


 
店先のテーブル席に腰かけ、
イカ焼きとソフトクリームを注文した。

 
食べているあいだ、ずっと話しかけてくれるが、
言葉がほとんどわからない。


う~ん、海外留学の話をしている?

それから、カモメの話?
 

てきとうに相槌を打っていたら、

「海を見てきれいだと思うか?」

と聞かれた。それだけは聞き取れた。

「はい、とても」と答えた。

 
おばあさんは

「それはね、心がきれいだから。
きれいな心で見ないと、海はきれいに見えないの」

と言った。


え?

え?

なぜそこだけ標準語?

どうしよう。

笑うとこ・・・じゃないよね?

いい話・・・なの?

困ったな。

どんな顔をしていいか、わからない。


ポーーーーーーーー―ッ、ポー―――――――――――ッ
 

長い汽笛が聞こえた。
千畳敷で遊んでいた子どもが、駅に向かって走っていく。
 
「はやくはやく、電車、出ちゃうよ」

その後ろを、祖父らしき老人が追いかけていく。

五能線・千畳敷駅に停まっている「リゾートしらかみ号」
出発の合図だった。


 
若い男性が通りかかった。

おばあさんは、若者に向かって声をかけた。
 

「あいや、なんだか見たことある顔だな。どっから来た?」


 
あっ……


こみあげてくる笑いを、イカ焼きと一緒に飲み込む。

おばあさん、
俺のこと、知ってたわけじゃなかったんだ。


俺は、最後の一切れになったイカ焼きにマヨネーズをめいっぱいつけて、
口いっぱいに放り込んだ。



作者のひとりごと
noteを始める前に書き貯めていた、そして日の目を見なかった作品を掘り出してみました。だいぶ加筆修正しましたが、恥ずかしいです。

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