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猛吹雪の、ネイルお直し

各サイトで割れていた天気予報が、当日の朝、一致した。

今日は夕方から、″猛吹雪″。

対策を講じて出勤する。

フード付きのロングダウン。
ブーツとリュックには防水スプレー。
手袋は、指先オープンタイプから、
5本指モコモコタイプへ。

なにせ今日は、17時に退社後、
18時に、
最寄り駅のネイルサロンの予約があるのだ。

HOT PEPPER Beauty によると、
当日のキャンセルは不可。
つまり、基本的には「絶対来い」ってことだよね。

吹雪だって行くしかない。


定時に仕事が終わって会社を出たら、
外は予想通りの猛吹雪。


そこから地下鉄で数駅、
自宅の最寄駅界隈の猛吹雪は、
街なかとはレベルが違った。

ある程度予想はしていたものの、
想像を遥かに超える。

交差点では、渋滞なのか立ち往生なのか、
信号が変わっても車列がピタリと動かない。

地下鉄駅直結のコンビニの駐車場には、
走行不能になった車が駐車スペースの倍くらい押し寄せて、
ドライバー同士が何やら揉めている。

自動ドアが壊れて雪が吹き込む店内では、
歩けなくて避難してきた人たちが
不安そうにしている。

知ってる?
猛烈な吹雪の日には、
あちこちで自動ドアがこわれちゃうんだ。


でも、私は先に進まなければいけない。

なにせ、ネイルサロンの予約があるのだ。

運悪く、道は向かい風だ。
雪と風が吹き付けて、目なんか開けていられない。

でも、歩いている人なんて殆どいないから、
よろけたって大丈夫。

この道をひたすら進むのみだ。

押しボタンの信号機がいつまで待っても青にならない。
青になったか確認するのに上を見上げるのも困難なのに。
電気系統が故障したのかも。
これも、猛吹雪あるある。

だけど大丈夫。
車列はさっきからビタッと動いていないから、
赤だって、手を上げれば横断できる。

目指すネイルサロンは、駅から3丁先だ。

進むんだ。
顔が雪だらけでも。
垂れてくる鼻水を拭けなくても。


ゼイゼイ言いながら辿り着いたネイルサロンの駐車場は、
今日何回か雪かきした形跡があるけど、
もう雪に埋もれかけている。

入り口の自動ドアは、
前に立っても、反応しない。

たぶん、故障しないように、
電源を切ってあるのだ。

両手でこじ開けて、
無言で中に入る。

「こんばんは」とか言う気力や体力は既にない。


「あら!」

奥からネイリストさんが明るい声で出迎えてくれる。

「来たんだ!
こんな天気だから、
今日はみんな午後からキャンセルになっちゃって。
午後初めてのお客さんよ!
きっと来ないと思って、今帰り支度していたとこ。
よく来れたわね!
まあ座って!」

店内の暖気で、ダウンのフェイクファーについた雪が溶けて
顔にしたたる。


「だって、予約してたから…。」

「やあだ、いいのよー。
命がけでこなくたってー。」

そうだ。
私は命がけでここまで来た。


濡れねずみ状態で、サロンのチェアに呆然と腰を下ろす。


だって、予約があったんだもの。

来るでしょ、普通。 

―いや、普通はみんな来ないんだな。

―キャンセルしても、よかったんだ。


「それで、今日は?
どうします?」

「お直しを、お願いします…。」


















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