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オレ達の「銘菓」語り 【土地と記憶を、食べている】

「オレ達のモノ語り」は、まことオーマが映画・趣味・気になるモノを肩の力を抜いて語り合うポッドキャストです。
このnoteでは、収録の中から「これは面白い」と感じた論点や作品・アイテム、そのテーマへのハマり方などを編集・再構成してお届けしています。
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なぜ、ある人にとってはただのお菓子が、別の人にとっては一生忘れられない銘菓になるのか。

うまい・まずいの話ではない。全国的に有名かどうかでもない。子どもの頃どう食べたか、誰にもらったか、どんな土地で出会ったか——そういうものが層になって、その人だけの「銘菓」ができあがる。

先日のオレモノ収録は、表向きはご当地銘菓を紹介する回だった。でも聞き返すと、いちばん熱がこもっていたのは商品情報ではなく、「自分の味覚の偏りと、菓子にまつわる記憶をさらけ出しているところ」だった。銘菓を語るというのは、じつは土地を語り、自分を語ることなのだ。


銘菓の記憶は、味より先に食感から始まる

意外かもしれないが、菓子の記憶は「うまさ」より先に「食感」から立ち上がることがある。

収録でいちばん語気が強かったのが、この食感の好みだった。パサパサ系が苦手、しっとり系は信頼できる、もちもちなら許せる。歯にくっつくやつは、熱くて渋いお茶が手元にないと許せない——。理屈ではなく、体にしみついた好き嫌いだ。

面白いのは、この基準がぶれないこと。同じ「うまい菓子」でも、口の中でどう崩れ、どう溶け、どう残るかで評価がまるで変わる。味の記憶はあいまいになっても、「あのパサつきが苦手だった」という感覚は妙にはっきり残っている。銘菓を語るなら、まずここを言葉にすると一気に生々しくなる。

梅ヶ枝餅、阿闍梨餅、羽二重餅——同じ「餅系」でも別物

「餅っぽい菓子」とひとくくりにされがちだが、収録で並べてみると、楽しみ方がまるで違った。

太宰府の梅ヶ枝餅は、冷たいままだと硬い。トースターで焼くと、外はカリッ、中はとろっと化ける。京都の阿闍梨餅は、ムチッとした半生の生地が持ち味で、これも焼くと表情が変わる。そして福井の羽二重餅は、片栗粉をまとった、てろてろで水分の多い餅。口に入れるとすっと溶けていく。

同じ餅系でも、焼いて化けるもの、溶けて消えるもの、指が粉まみれになるもの。この「どう食べると本領を発揮するか」の違いこそが、それぞれの菓子の個性だ。うまい・まずいの一言でくくってしまうのは、もったいない。


チロリアンは、福岡の記憶を連れてくる

全国区の有名銘菓ではないのに、地元の人間には強烈に刷り込まれている——そういう菓子がある。福岡のチロリアンがまさにそれだ。

サクサクの生地にクリームを挟んだ菓子で、通りもんやひよ子ほど全国的に語られることはない。でも福岡で育った人間には、子どもの頃のCMのメロディーごと記憶に焼きついている。クリームだけを吸って中身を空にする、おばあちゃんに怒られる食べ方まで含めて、菓子が記憶を連れてくる。

同じことは、まるぼうろにも言える。「ボウロ」と聞いて丸い焼き菓子を思い浮かべるか、小さな卵ボウロを思い浮かべるかは、世代と地域で分かれる。菓子は、その人がどこで、いつ育ったかを静かに映し出す。全国区の知名度なんて、個人の記憶の前ではあまり関係ないのだ。


横浜元町の洋菓子は、古さまで含めて魅力になる

新しさや洗練だけが価値ではない。むしろ「古いまま残っている」ことそのものが強さになる菓子がある。

横浜元町の喜久家は、大正創業の老舗洋菓子店。名物のラムボールは、今どきの上品な洋菓子とは違い、洋酒がぶわっと効いた、昔ながらの重たい味わいだ。店内はレトロそのもので、時代をそのまま封じ込めたような空気が漂う。近くの霧笛楼が出す横濱煉瓦も、しっとりしたチョコレートケーキで、開国まもない頃の元町の面影を今に残している。

こうした店は、味だけを取り出して語れない。古びた通り、入るのを一瞬ためらう佇まい、時代を感じる甘さ——その全部込みで「行きたくなる」のだ。洗練された新店にはない、残ってきたものだけが持つ強さがある。


銘菓とは、土地と個人史が重なったもの

こうして並べてみると、見えてくることがある。銘菓は単なる商品ではなく、記憶の保存装置のようなものだ。

浜松のうなぎパイ、福岡のチロリアン、横浜元町のラムボール。地名を挙げただけで、その土地の空気と、そこで菓子を食べた個人の記憶が一緒に立ち上がる。地域紹介がいつのまにか自分語りになる。それは脱線ではなく、銘菓という話題の本質だ。だから銘菓を語ることは、土地を語ることであり、結局は自分を語ることになる。


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