見出し画像

多和田くんとの思い出

連休中日…と書いてみて、「なかび」と「ちゅうにち」は同じ字なのか、等思う。
奥さんの知人より冷蔵庫を譲り受ける。部屋の空気が若干変わって良い。前のは一番下に冷凍庫があったので、製氷機まで腰をかがめる必要があった。水をひたした容器をかがんだ状態でしまうのはちょっと神経を使う作業だけど、新たしいのは中央部に独立しているのでありがたい。

息子の誕生日が近いので、プレゼントを買う。高価なので渋々ではあるがSwitch2になった。本心ではもう少しスポーツに熱中してほしいのだが、機会をきちんと作ってあげられていないので仕方ない。買い与えてからどんどんゲームにのめりこむ息子が不憫ではある。小学生なんてそういうもの、本人が面白いならそれでいいかと思いつつ、それならばとレトロゲームに誘導してみる。(ブックオフでソフトを探していると、「レトロゲーム」なる棚が展開されているのには驚いた。レトロとは郷愁だったのだ。)

隣で覗いてもマイクラは何が楽しいかわからない。スマブラもやることが多すぎる。こんなゲームに毎日何時間も溶かしている息子を嘆かわしく思う。かつてはもっと質の高いゲームがあったのに…と老害ムーブ発動を抑えられない。自分が青春の時間を費やしたゲームならば一緒に楽しめると思い、義姉からプレステ、スーファミをもらう。

ここ数ヶ月、時間を見つけては数百円で買ってきたファイファンⅦ、バイオハザード、サルゲッチュにいそしむ。息子は隣で観戦して楽しそうだが、自分ではやらない。プレイは専らSwitch。平成のテクノロジーに目を輝かせているだけ良しとしよう。

昨日ハードオフに行った。Final Fantsy Ⅵ 箱なし、カセットのみ。小5~6にかけてやりまくった。学校から帰ったら隣の家の多和田君の家の2階に転がり込み、毎日数時間ぶっ通しでやった。彼はいつも眺めてばかりだったけど、あれは彼にとって楽しい時間だったのだろうか?SNSをたどるとどうやら東京にいるらしい。元気だろうか、もし会えたら尋ねてみたい。

彼の家には年の離れた兄がいてもう働いていた。母は小学校の近くの文具店で働いていたような記憶がある。庭先にサンドバッグが吊るされていてゴールデンレトリバーを飼っていた。あと一緒の空手道場に通っていた。
昇段試験のとき、師範達が防具を持ってくるのを忘れてしまい「今日の組手は面(頭部)への攻撃は無しで!」というルールになった。昇段試験では型だけでなく、組手も行うのだ。
組手の途中、僕は彼の上段蹴りをもらに食らって脳震盪を起こし、そのままぶっ倒れた。気がついたときには道場の外の水道で、師範に仰向けに抱えられながら口の中をゆすがれていた。口の中は血まみれで、その日の晩御飯はハンバーグだったのでデミグラスソースが滲みて痛かった。
普段の練習では良い勝負だったのに、大事な場面で負けたのが悔しかった。多和田君はすごく申し訳なさそうに謝ってくれた。そりゃあ「面への攻撃は無し」なのに上段蹴りきめちゃったんだから。
負けたのは悔しかったけど腹は立たなかった。彼は友達だし、試験は試験だから。そういうこともある。負けた自分が弱かったのだ。気を遣わせて悪いなと思った。それどころか、空手の組手で脳震盪を起こして倒れたというエピソードも、何だか箔が付いたみたいで悪い気はしなかった。
次の日、頬がパンパンに腫れていた。学校で生徒指導の先生に「お前、飴舐めてるだろ、出せ」と詰められたのが面白かった。

小学生の頃はほぼ毎日多和田君の家に行っていたのに、中学生になってからは道場で会うぐらいで、遊ぶ機会は少なくなった。彼は私立中学校を受検したのだ。でもたまに好きな本の貸し借りを、窓越しにした。赤川次郎の「三毛猫ホームズ」シリーズをオススメしてくれた。僕は何を貸したか覚えていない。背伸びして漱石とか貸したんだっけ。窓を開ければゴールデンレトリバーがこっちを向く。夏は大型犬特有の匂いが鼻を突くので、そっちの窓は開放しなかった。
Fainal Fantasy Ⅵ、空手道場、多和田君の暗い部屋、犬。
今ではその家は別の家族が移り住んでいる。

Fainal Fantasy Ⅵ、近所のハードオフで550円だった。前の所有者のセーブが残っている。名も知らぬ誰かの冒険の記録。上書きするよニューゲーム。2Dのくせに、なんだか、油絵みたいに厚い。
ねえたわたくん、元気?

いいなと思ったら応援しよう!