病院へ連れて行こうとしたら全員に阻止された話
僕は昨日の「作戦失敗」について苦々しく思い出していた。
先日、きゅうちゃんのその、いわゆる「たま」の袋に、一ミリほどの小さな出来物を発見してしまったことは書いた。気になって仕方が無いので、昨日、意を決して彼を病院へ連れていこうとしたのだ。
ところがきゅうちゃんは天才的な直感でそれを察知したらしい。ケージの奥深くに閉じこもり、頑として出てこなくなってしまった。
さらに困ったことに、猫のじゅん坊と茶太郎、そして犬のはっちゃんまでが「何事か」と集まってきて、あろうことか全員できゅうちゃんのケージを包囲し、がっちりとガードを固めてしまったのだ。

「きゅうの兄貴を病院へは行かせんぞ」
という固い結束である。
仕方がないので、おやつで釣る作戦に出た。きゅうちゃんはケージの中から手だけを伸ばしておやつを器用に食べるのだが、体は一ミリも外へ出さない。じゅん坊におやつをあげ、茶太郎にも差し出すと、茶太郎は「僕はいいから兄貴にあげて」とばかりに辞退する。はっちゃんは出されたおやつを速攻で自分の胃袋に収めていたが、それでもガードは崩れない。
万策尽きた僕は、最終兵器であるきゅうちゃんお気に入りの「ホットドッグのおもちゃ」を目の前でチラつかせてみた。すると、これが見事に的中。ホットドッグに釣られてホイホイと出てきたところを、すかさず確保した。
すぐさまその「たま」をコロコロと転がして再確認してみたのだが、やはり気のせいではなかった。一ミリほどの出来物は確かにそこにある。僕が必死にコロコロしていると、はっちゃんが「おい、きゅうちゃんのタマを転がすんじゃない!」と烈火のごとく怒り出し、きゅうちゃん自身も「僕のたまを転がすな!」と憤慨していた。どうやら男たちにとって、そこを弄ばれるのは我慢ならんらしい。
ついでにはっちゃんの体も調べようとしたのだが、「どうせ次は僕のたまをコロコロする気だろう」と察して、家の中を十分ほど全力で逃げ回った。最終的に疲れ果てて床に寝転がったところを、くまなく検分する。毛深いので一ミリの異常を探すのは至難の業だが、足元は問題なし。一番大きかった時に八ミリほどあった口元の腫瘍も、今や一ミリ程度に縮んでほぼ消失していた。ひとまず安心である。
ただ、最後にそっとはっちゃんの「たま」をコロコロしてみたら、やっぱり「うぅぅー!」と本気で怒られた。健康チェックなのだから少しは我慢してほしいのだが、素早く転がして確認した限り大丈夫そうだった。はっちゃんのは、きゅうちゃんと違ってちっともひんやりしていないのが毎度の謎である。
そんな僕らの様子を見ていた猫の茶太郎は、自分でも探そうとして体をくねらせ、妙なポーズで股ぐらを覗き込んでいたが、やがて
「……ない! 僕のたまがない!」

とパニックになっていた。君はとっくの昔に卒業したでしょうと言いたかったが、本猫はすっかり忘れていたらしい。
結局、きゅうちゃんがあまりにも必死に抵抗するし、日曜日の病院は混み合うので、昨日は連れていくのを断念した。別の平日にでも、こっそり連れていくことにする。
もっとも、僕の見立てが当てになるかと言われると、少々自信がない。
以前も、じゅん坊のお腹を触っていて「なんか出来物ができてる!」と慌てて病院へ駆け込んだら、先生に「これ、おへそですよ」と言われて、僕と言いじゅん坊と言い、ものすごく恥ずかしい思いをした前科があるのだ。
だから今回も、実はただの勘違いであってほしい。
何事もなければ、それが一番なのである。
