眠くない、少しだけ、内緒話
みんなもう寝たかな。
じゃあ、少しだけ、内緒話を。
私は本当に漫才に向いているんだろうか。
最近ずっと調子が出ない。
そして今日、娘から「自分で作ったよ」とフライドポテトの写真が送られてきたとき、何か最後の一本が折れた気がした。

子どもが料理できないのも心配だけど、できるようになってしまった姿を見る方が、時々胸にくる。

この前やっと12歳になったばかりなのに。
水を飲んでも、衣装を脱いで身体を冷ましても、全然落ち着かなかった。
出番の前から分かっていた。
今日はダメだ。
頭も胸も、何か重たいものに押さえつけられているみたいだった。
雨が言った。
「大丈夫だよ。今までだって、緊張してる時ほど間違えてないじゃん」
違う。
今回は分かっていた。
できない気がしていた。
日本語学校に入ってから、何度「なんで日本に来たの?」と聞かれただろう。
入管に提出した書類には、
「日本映画が好きだからです。是枝裕和さんや北野武さんが好きで、日本で映画を学びたいと思いました」
と書いた。
嘘ではない。
でも、それが全部でもない。
本当に背中を押したのは、新型コロナの頃のことだった。
あの頃、私は娘の将来について何度も何度も考えた。
私は娘を、この世界に、誰かの言うことだけを聞いて生きる人間にするために産んだわけじゃない。
どこかに属しているという安心感よりも、
自由であること。
ちゃんと自分の足で立てること。
その方がよっぽど大切なんじゃないかと思った。
私は無事に出てきた。
娘も連れてきた。
「子どものために」と言いながら。
でも、今の私はどうだろう。
自分のやりたいことのために、毎日のように夜遅くまで帰らない。
娘は放課後、一人で何かを買って食べる。
私が帰る頃には寝ていることもあるし、テレビを見ながら待っていてくれることもある。
たまに好きな男の子の話をしてくれる。
気づけば夜中の1時を過ぎている。
次の日の授業中、きっとあくびをしていたんだろうな。
私は本当に良い母親なんだろうか。
最近は、自信がない。

劇場の壁には、「やる気がないなら帰れ」みたいな言葉が貼ってある。
じゃあ私はどうなんだろう。
やる気はあるのか。
漫才は好きだ。
人が笑うのを見るのも大好きだ。
でも、私は本当にこの世界に向いているんだろうか。
中国ではスタンドアップコメディみたいなこともやった。
その時にはっきり分かった。
私は天才じゃない。
凡人だ。
自分の限界がどこにあるのかも、なんとなく分かる。
もしかしたら私は、人を笑わせる側よりも、静かな部屋で原稿を書いている方が性に合っているのかもしれない。
日本に来て、運よく3回戦まで進めて、運よくネクストメンバーにも選んでもらえた。
雨のおかげだ。
それに外国人だから、少しだけ新鮮で珍しかったのかもしれない。
ある意味、ずるかったのかもしれない。
フリートークだって反応は速くない。
言いたい言葉が出てこない時もある。
出てきても言えない時もある。
間違えるのが怖い。
スベるのが怖い。
どう見ても、一人前の芸人には程遠い。
外国人という立場には、たくさん助けられた。
でも同じくらい、たくさんの壁もあった。
相方にも、お客さんにも、本当に伝えたいことがうまく伝えられない。
馴染むことが大事なのは分かっている。
でも、どうしたらいいのか分からない。
劇場の隅に座って、みんなが楽しそうにワイワイ話しているのを見ていると、時々思う。
私はここにいていいんだろうか。
みんなは私のことを好きなんだろうか。
迷惑をかけていないだろうか。
自分のアイデンティティに戸惑うこともある。
中国人が何か問題を起こしたニュースを見ると、
「ああ、終わった」
と思ってしまう。
だって同胞だから。
顔向けできない気持ちになる。
でも劇場の先輩たちは言う。
「パンはパンだよ」
「その人たちはその人たち」
「どこの国にだって、良い人も悪い人もいる」
頭では分かっている。
分かっているけど。
私は昔から、少し考えすぎる。
もちろん、だからといって舞台でネタを飛ばしていい言い訳にはならない。
本当にごめんなさい。
でも、ずっと心の中にあったことを、今日はついでに全部吐き出してしまおうと思った。
それはそうと、6周年の夏フェスは楽しみにしてます。
あのポスター、中国のSNSにも載せたんです。
そしたら向こうの友達に言われました。
「ところでその劇場、もうお前のものになったの?」
って。
だから私は言いました。
「ええ、まあ……そういうことで笑」
それにしても、あの写真。
かっこよすぎるだろ。
出演告知のたびに見かけるけど、毎回穴があったら入りたい。
恥ずかしい。
なんであんなセンターを私が陣取ってるんだ。
まだ眠くないし、もう少し何か書いていたい気もする。
でも話なんて、終わるものじゃない。
続きはまた今度。
そういえば最近、『あかね噺』を追い始めた。
でも、二言目にはもう何を言っているのか聞き取れない。
歳だなあ。
本当に歳だ。
ところで、私と北野武の共通点って何だろう。
似ているところは、二人とも離婚したこと。
違うところは、北野武は後悔したらしいけど、私は一ミリもしていないこと。
じゃあ寝るか。
みんなも。
おやすみなさい。
