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通院日記057_地域病院_通院50日目   「今までで一番眠れた。」 朝目を覚ました妻の顔色がいい。僕もよく眠れて、夜に目覚めたのは・・・

20250509(金) 地域病院 通院50日目

 
 付き添いの11日目。

 「今までで一番眠れた。」
 朝目を覚ました、妻の顔色がいい。
 僕もよく眠れて、夜に目覚めたのは、トイレをのぞくと1度だけだった。
 点滴のアラームも鳴らなかったので、時間前に交換をしてくれていたのだと思う。
 看護師に感謝。
 痛み止めは、6時間ごとのアセリオの投与を、点滴のサイクルに入れてもらい、妻はほぼ痛みを感じなくなった。
 フラッシュと白いやつは、痛くなった時の保険で、追加が可能という形。
 そのおかげで、妻の気持ちに余裕ができている。
 それが大きいと思う。
 抗生剤と痛み止めを、夜番の看護師がセットしていった。
 久しぶりに、妻がおならをした。
 気持ちのよさそうな音だった。

 緩和ケア病棟のサイトを、妻が見ている。
 「24時間の、付き添いが前提だよね。」
 それを僕と確認する。
 今後検討するにも、最初にそれがあるかどうか確認していこうと話す。
 それにしても、ガン末期の状態も人それぞれらしく、ほとんどの患者は食事ができている。
 緩和ケアの内容も、いかに気持ちよく食べられるか、という内容が多い。
 イベントで、楽しめるものがあればいいなと思う。
 付き添いの可否から2つ候補があり、そのHPを二人で確認する。

 朝の回診がやってくる。
 医師は一人。
 医療麻薬とアセリオの定期投与と合わせて、妻の痛みが感じられなくなったと報告する。
 体をきれいにしてもらった後、ホワイト・ロータスの最終回を見始める。
 午前中は人の出入りが多い。
 その後も看護師、清掃とやって来て中断しながら見る。

 朝の回診2回目。
 担当医師と他3名。
 一昨日の状況から、妻が落ち着いてきたことを喜ぶ。
 妻も笑顔で対応している。
 「落ち着いたタイミングで、緩和病棟への転院も含めて、今後の方針を検討していきましょう。」
 最後にそう言って出ていった。
 そのことで、しばしホワイト・ロータスは中断。
 「今すぐ出ろってことかな。」
 「タイミングを見てって言ってたし、ここにいることも含めて、っていうニュアンスもあったよね。すぐにとは言わないと思うけどね。」
 「まぁ、この状況じゃ、抗がん剤に戻るのは無理だろうって、私も思ってはいたけどね。」
 「奇跡的に、膀胱の癒着がふさがっていました・・・なんてなればね。」
 「そんなことがあればね。」
 この後、一番近い緩和ケア病棟の、面会時間を確認することにする。

 ようやくホワイト・ロータス3シーズンを見終えた。
 必ず殺人があると聞いていたので、最後は推理物の展開かと思った。
 けれど、それぞれの集団がそれぞれの結末を迎える、といった内容だった。
 5人家族のこれからを、妻が気にかけていた。
 「私も1回死んで、神様を見て、戻ってくるかもしれない。」
 「そしたら僕に教えてね。」

 一番近い病院の、緩和ケア病棟へ連絡する。
 面会時間の制限について聞くためだ。
 特別室であれば、24時間いつでも家族が付き添っていられるそうだ。
 特別室の室料は18,700円。
 今いる所と、ほとんど変わらない。
 もう少し高いものだと思っていたけれど、そうでもなかった。
 今なら空いているという。
 そのほかの個室でも、医師が最末期などで判断したときは、24時間の付き添いを許可している時もあるという。
 施せる医療については、医師でないと分からないということだった。
 電話を終えて部屋に戻る。
 点滴のアラームが鳴って、今日の日勤の看護師のリーダーがやってきていた。
 痛み止めについて聞いてきた。
 いつも妻は、看護師や医師に対しては明るく話し、痛みも控えめに伝えているので、僕から説明をする。
 「だいたい、元気な方に片寄って報告しちゃうんですよね。我慢しがちっていうか。」
 妻は、そういう意味でいうとかなり我慢強い。
 そもそも癌がこんな状態になるまで、大丈夫だろうと自分に言い聞かせてきてしまったのだ。
 胃潰瘍も併発しており、異常がなかったわけがない。
 「痛みの10段階は、我慢しないで表現した方がいいです。そうしないと大したことないのかなって、こっちは思っちゃうんですよ。」

 緩和ケア病棟で聞いた、電話の内容を妻に報告する。
 妻は、今移ってもいいような反応だった。
 でもそれは、敗血症の症状に対応してくれる医療を、行えるかを確認してから考えようと話し合う。
 電話での話でも、今の病院のスタッフと、その病院で話し合って確認した方が良いといっていた。
 12日に緩和ケアスタッフが来た時に、確認してもらうことにする。
 次点としては、南にある地域病院だろうと話す。

 買い出しをして、妻がガリガリ君を味見し、僕が食事をとる。
 その後、妻は昼寝をした。
 「あなたもお姉ちゃんも私が要求しないと、舌を濡らしてくれてりしないんだよね。」
 緩和ケアの話が進んでしまって、妻は少し不安になっていた。
 また体温が上がっていると感じているようで、こまめに毛布をかけたり外したりする。
 水枕を裏返し、タオルを濡らす。
 頻繁に舌を濡らす。
 それでも舌が乾いているのは、投薬のせいか。
 何が原因かは分からない。
 「うどんみたいなのを食べてもいいんじゃないかな。美味しいかもしれない。」
 不安な時には、要望が多くなる。
 でも食べて吐き出すなら、なんでも味見はできる。
 妻がそう言いだしてくれて、少しうれしい。
 ファミマで冷うどんを買ってきて、少しうどんを汁に漬けておく。
 妻が味見する。
 「すごく美味しい。」
 ちょっと興奮気味に、口に入れていく。
 「なんか、ちょっと入っちゃった。」
 「ちょっとなら、問題ないよ。」
 「これくらいにしておく。」
 調子に乗ってこれまでに痛い目を何度も見ているから、控えめになっている。
 とはいえ、今日はガリガリ君とえびせんも味見しているから、このくらいでいいかと思う。

 「トイレに行きたくなった。」
 どういうことかと見てみると、尿カテーテルの排出管が一杯になっていた。
 丁度看護師のいる時で、管を折り曲げながら排出してくれた。
 尿カテーテルのチューブは滞りがちで、それを上の方から袋の方へ流すのが、僕の癖になっていた。
 うまく下まで流れてくれると、気持ちがいい。
 それまでまめに流していたのに、チューブが溜るのはあっという間だった。
 「そういうことだったんだ。」
 その場はそれで済んだ。
 けれど、後になって、また残尿感があると訴えだした。
 「膀胱炎になったのかな。先生がいるうちに聞いてみる。」
 ナースコールで、看護師がやって来た。
 チェックするのは、排出管へ尿が出ているかということ。
 特に問題はないという。
 ただ妻は残尿感が気になってしまい、どうしても何とかしたいようだ。
 再度看護師が来た時にそれを訴え、カテーテルを一度抜いてもらえるかという。
 看護師は、明日の昼間まで待って、まだ気になるなら、入れ替えてみようと言った。
 医師の方にも、要望があればまた伝えてくれということだ。
 一度詰まってしまって尿意をおぼえているから、それで神経質になっているとも思える。
 けれど、腸へ転移していた癌が膀胱へ癒着して、つながってしまっていると考えられているから、膀胱へ移ったかもしれない癌の影響かも知れないとも思う。
 後者の方は、また妻の不安をあおるだけになってしまうので言わないでおく。

 買ってきておいた夕食を食べる。残尿感のやり取りで冷めてしまっていた。
 今日の夕食
 三元豚のかつ丼・ゴボウサラダ・うどんの残り(ファミマ)

 「眠ってしまいたい。」
 いつも食事を見ている妻がそういう。
 食後に電気を消す。
 いろいろ思い悩んで、嫌な思いをしたくないということだ。
 妻は寝息を立てはじめた。

 発熱のような山が来てそれを越えると、そんなことが、いつまでも続いていくような気がしてしまう。もし膀胱へ癌が転移して、悪い影響を出すときには、どんな症状が出るのだろうか。それはどの程度の苦しみなのだろうか。進行の早い癌といわれる、スキルス胃がんは、実際どの程度の速さで転移していき、他の臓器の機能を奪っていくのだろうか。それを一番気にかけているのが妻なのだ。どれだけ心配しても、苦痛に耐えなければならないのは妻だ。これまでの苦しみを考えると、もうこれ以上そんな思いはしてほしくない。

 なら一体どんな方法がとれるのだろう。
 答えは出ているのに、まだそれには早いと僕達は思っている。


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