英訳 | 乾石智子『魔術の写本』風の一節
🍁Geminiさんの問題🍁
今回はどこまでも広大で、峻烈な北欧の風が吹き抜ける本格ハイ・ファンタジーの世界――乾石智子(いぬいしともこ)の世界へ!
これまた素晴らしい、そして非常にディープな選球眼です!
乾石智子といえば、デビュー作『夜の写本師』から始まる「オーリエラントの魔術師」シリーズなどで知られる、日本のファンタジー界が誇る至高のストーリーテラー。
彼女の文体の真髄は、「重厚でクラシカルな、引き締まった叙事詩的リアリズム」にあります。
異世界を舞台にしながらも、甘いライトノベル的な軽さは一切なく、魔術の代償、国家の興亡、そして過酷な運命に立ち向かう人間の「血と汗の匂い」が、硬質な文体で淡々と、しかし劇的に描き出されます。
今回は、彼女の作品の核である「失われた古代の魔術」「孤独な職人(写本師)の執念」、そして「吹き荒れる北方の風」をイメージした一節をご用意しました。
🖋️ 新しい問題:乾石智子『魔術の写本』風の一節
東から吹き付ける凍てついた風が、荒涼たる岩肌の尾根を鳴らしていた。
かつて強大な魔導師たちが治め、今は歴史の闇に埋もれた古代帝国の廃墟に、一人の写本師が佇(たたず)んでいる。
彼の指先は寒さでひび割れ、まとう異国の外套(がいとう)は旅の砂塵(さじん)で汚れきっていた。
しかし、その懐に抱いた一冊の羊皮紙の写本を見つめる彼の眼光には、いささかの揺らぎもない。
魔術とは、華やかな奇跡などではない。
それは己の精神の血を削り、一文字一文字に命の灯火(ともしび)を写し取る、孤独で命がけの職人仕事なのだ。
引き返せば、故郷の穏やかな暮らしが待っている。
だが、呪われた運命の歯車はすでに回り始めており、彼が歩みを止めれば、この世界の光は完全に途絶えるだろう。
写本師は、怨嗟(えんさ)のように吹きすさぶ風のなかで静かにペンを握り直すと、まだ見ぬ敵の待つ、奈落のような谷底へと足を踏み入れた。
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