福岡県議会、誰が採決を止めたのか――賛成49・反対35、全議員の記録
2026年8月17日、福岡県議会で藏内勇夫議長への辞職勧告決議案が採決される予定でした。
ところが、採決は行われませんでした。
自民党県議団の林泰輔県議が「採決中止動議」を提出し、49人が賛成、35人が反対。動議が可決されたからです。藏内議長と板橋聡副議長は採決に加わっていません。
林県議一人の動議で止まったのではありません。
49人が起立し、賛成多数にしたから止まりました。
ここは曖昧にできません。
最初に一点だけ確認します。以下の「賛成」「反対」は、藏内議長への辞職勧告決議案そのものではなく、その採決を中止する動議への賛否です。辞職勧告決議案は採決されていないため、49人が全員辞職勧告に反対だった、35人が全員賛成する予定だった、とまでは断定できません。
採決結果は49対35
会派別の内訳は次のとおりです。
自民党県議団:賛成37、反対1、不参加2
民主県政県議団:賛成10、反対10
公明党:反対10
新政会:反対6
無所属の会:賛成2
自由と繁栄の会:反対2
その他の会派:反対6
最大会派の自民党県議団は、採決中止への賛成を求める党議拘束をかけたと報じられています。採決に参加した38人のうち、反対したのは江藤秀之県議だけでした。
民主県政県議団は10対10。第一野党の会派が、採決するかどうかという入口で真っ二つに割れました。
採決中止動議に賛成した49人
自民党県議団・37人
秋田章二、井上順吾、井上忠敏、井上博行、井上正文、今林久、浦伊三夫、江頭祥一、永川俊彦、江口善明、大島道人、大田満、加地邦雄、川端耕一、桐明和久、神崎聡、香原勝司、小緑貴吏、佐藤楓、高橋義彦、長裕海、中牟田伸二、野原隆士、波多江祐介、花田尚彦、林泰輔、原口剣生、樋口明、松尾統章、松本國寛、宮川宗一郎、宮原伸一、横尾政則、吉田健一朗、吉田浩一、笠和彦、渡辺勝将
民主県政県議団・10人
井上博隆、亀崎大介、佐々木徹、田中雅臣、坪田晋、豊福るみ子、原竹岩海、原中誠志、山本耕一、吉岡玲子
無所属の会・2人
新開崇司、新開嵩将
採決中止動議に反対した35人
自民党県議団・1人
江藤秀之
民主県政県議団・10人
新井富美子、岩元一儀、大田京子、大橋克己、嘉村薫、中嶋玲子、原田博史、室屋美香、守谷正人、渡辺美穂
公明党・10人
壹岐和郎、稲又進一、井上寛、大塚勝利、川上多恵、塩出麻里子、新開昌彦、永島弘通、西尾耕治、松下正治
新政会・6人
浦田大治、大塚絹子、椛島徳博、鶴林大我、中村香月、堀大助
自由と繁栄の会・2人
中村明彦、吉松源昭
その他の会派・各1人
後藤香織(ふくおか政策の会)、栗原悠次(緑友会)、福地幸子(桜和会)、冨安正直(至誠会)、塩生好紀(日本維新の会福岡)、戸成祥平(豊築会)
採決に加わらなかった2人
藏内勇夫議長(自民党県議団)
板橋聡副議長(自民党県議団)
藏内議長は決議案の対象者です。板橋副議長は議事を進行しました。TNCは両氏が動議の採決に参加しなかったと報じています。
この名簿は県議会の記名投票表ではない
福岡県議会の公式サイトには、8月臨時会の日程と採決結果が掲載されています。しかし、今回の採決中止動議について、議員別の投票表は確認できません。
賛成49人は、TNCの記者が採決時に起立した議員を確認して報じた名簿です。
反対35人は、その49人と福岡県議会の公式議員名簿を照合し、採決に加わらなかった藏内議長、板橋副議長を除いて整理したものです。報道された反対人数35人とも一致します。
公式の会議録や議員別採決資料が公開された場合は、改めて照合する必要があります。
林泰輔県議が止めたもの
辞職勧告決議案を提出したのは、自由と繁栄の会の吉松源昭県議です。正副議長ポストをめぐる金銭授受疑惑などを理由に、藏内議長を県議会の代表として信任し続けるのか、各議員が態度を示すよう求めました。
金銭授受については複数の県議が証言しています。名指しされた側は受領を否定しており、第三者調査の最終結論はまだ出ていません。
林県議は、提案内容を検討する時間が足りず、第三者調査の結果を待たずに採決するのは拙速だという趣旨で、採決中止を求めました。
慎重に調査することは必要です。
しかし、調査を待つことと、現時点で議長を続けることが妥当かを議会が判断することは両立します。根拠が不足していると考えたなら、討論で理由を述べ、辞職勧告決議案に反対票を投じる方法もありました。
実際に選ばれたのは、反対票ではなく、採決そのものを消す方法です。
その結果、各議員が藏内議長の進退をどう考えていたのか、記録に残りませんでした。
江藤秀之県議は党議拘束に従わなかった
自民党県議団で唯一、採決中止動議に反対したのが江藤秀之県議です。
江藤県議は、2020年の副議長就任をめぐって現金を支払ったと証言している当事者でもあります。本人は、県議会と県民の意識には大きな隔たりがあり、失われた信頼を回復しなければならないという趣旨を取材に語りました。
党議拘束より、公開の採決を残す側を選んだ。この判断は評価されるべきです。
証言した金銭授受の全容は、第三者調査で検証されなければなりません。それでも、会派でただ一人、採決を止めない態度を示した記録は消えません。
民主県政県議団はなぜ10対10に割れたのか
民主県政県議団では、10人が採決中止に賛成し、10人が反対しました。
賛成した山本耕一県議は、第三者委員会の結果を待ってから判断すべきだったと説明しています。自分の言葉で理由を示した点は確認できます。
ただ、調査結果を待つ理由と、採決そのものを止める理由は同じではありません。
第三者調査と政治的な判断をなぜ両立できないと考えたのか。決議案に反対票を投じる選択ではなぜ足りなかったのか。調査結果が出た後、藏内議長の進退を改めて議会で判断するのか。
賛成した10人には、この点を説明する責任があります。
手続きが適正でも、政治判断の評価は終わらない
板橋副議長は翌8月18日、決議案、動議、採決はいずれも福岡県議会会議規則に基づいて適正に行われたとコメントしました。議員への誹謗中傷を慎むよう求めています。
人格攻撃や脅迫は許されません。
それと、投票理由を問い、政治的責任を評価することは別です。
議員の投票行動は、有権者が次の選挙で判断するための記録です。手続きに違反していなかったという説明だけで、なぜ採決を止めたのかという問いは消えません。
採決中止に賛成した49人は、自分の言葉で理由を説明すべきです。
とくに、党議拘束で37人が同じ行動を取った自民党県議団と、10対10に割れた民主県政県議団には、県民が検証できる説明が必要です。
県民が求めているのは、誰かを罵倒することではありません。
誰が、何を理由に、公開の採決を止めたのか。
その記録を残し、次の選挙まで忘れないことです。
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