「前のやり方」が抜けない新人をどう変える?アンラーニングを起こす7つの研修設計――古い成功体験を否定せず、新しい行動へ切り替える方法
新しいルールを説明した。
理解度テストにも合格した。
本人も、
「分かりました」
と言っている。
それなのに現場へ戻ると、
また以前のやり方をしている。
こんな経験はないでしょうか。
特に中途入社者や、業務変更を経験したベテランでは起こりやすい問題です。
例えば、
旧ルールではA。
新ルールではB。
研修ではBを説明した。
ケース問題でもBを選べた。
でも、忙しくなるとAへ戻る。
このとき、
「まだ理解できていない」
と考えて、もう一度Bを説明したくなります。
でも、本当に不足しているのは、
新しい知識でしょうか。
本人はBを知っている。
ただ、
古いAも強く残っている。
だとすれば必要なのは、
新しい知識をもう一つ足すことだけではありません。
古い知識・習慣・判断基準の影響を弱め、
新しいものへ更新していく必要があります。
そこで今回扱うのが、
Unlearning(アンラーニング)
です。
この記事はこんな方へ
・中途入社者の「前職ではこうでした」に困っている
・ルール変更後も古い運用へ戻る人がいる
・ベテランほど新しい手順への切り替えが難しい
・新システムや生成AIを導入したのに、以前の仕事の仕方が残っている
・研修をしたのに現場行動が変わらない
そんな方に向けて書いています。
この記事では、
「頭を柔らかくしましょう」
という精神論ではなく、
研修・OJTの中で、
古い正解の影響を弱め、新しい行動へ移行する具体的方法
まで整理します。
アンラーニングは「記憶を消すこと」ではない
最初に、この言葉について少し慎重に整理します。
組織研究におけるアンラーニングは、環境変化への適応などを考える概念として長く議論されています。
TsangとZahraは、組織的アンラーニングを組織学習とは区別して整理し、環境変化への適応と関係する概念として論じました。
ただし、
「人間が過去の知識を完全に消去できる」
と考える必要はありません。
2025年の統合的レビューでも、この領域には概念上の違いや議論が残ることが指摘されています。そのうえで近年は、望ましくない・古くなった知識やルーティンが、時間とともに行動へ与える影響を弱めていくプロセスとして捉える整理がされています。
つまり企業研修で考えるなら、
「昔の方法を忘れさせる」
ではなく、
「昔の方法を知っていても、現在の仕事では自動的に使わない状態にする」
と捉える方が使いやすいと思います。
なぜ「新しいことを教える」だけでは足りないのか
例えば、これまでシステム上で、
A
↓
B
↓
C
と処理していたとします。
システム変更後は、
A
↓
D
↓
C
になりました。
研修で新しいDを教えます。
新人も理解します。
しかし実務でAまで進んだ瞬間、
無意識にBを探してしまう。
これは、
Dを知らないから
とは限りません。
Aという状況を見るとBへ進む、
という旧ルーティンが強く残っている可能性があります。
近年のレビューでは、組織的アンラーニングは認知だけでなく、ルーティン、習慣、手続き、前提、規範など複数の知識構造に関わる複雑なプロセスとして整理されています。
だから研修でも、
新:Dを覚える
だけでなく、
旧:Bを使ってしまう場面を特定する
ところまで必要になります。
「昔のやり方を否定する」とアンラーニングは難しくなる
中途入社者へ、
「前の会社ではこうしていました」
と言われた。
ここで、
「それは前の会社のやり方です。今は違います」
と切ってしまう。
正しい説明かもしれません。
でも、本人からすると、
以前の方法は、
何年も仕事をしてきた経験。
成果を出した方法。
評価された行動。
かもしれません。
それを、
「古いから捨ててください」
と言われれば、抵抗が起こるのも不思議ではありません。
アンラーニング研究でも、対象は単なる知識だけではなく、行動、ルーティン、前提、価値観などにも及び、個人・グループ・組織の複数レベルで起こる複雑な現象として扱われています。
だから私は、
過去を否定するのではなく、
「成立条件が変わった」
と説明する方法を使いたいと思います。
例えば、
「以前の環境ではAが合理的だったと思います。
ただ、現在は○○が変わったので、この会社ではBを使います」
と伝える。
過去の経験を尊重しながら、
現在の条件では別の判断が必要
と切り分けます。
アンラーニングを起こす7つの研修・OJT設計
ここからは、
「古い知識を手放してください」
で終わらせず、
実際の研修・OJTへ落とし込む方法を7つ紹介します。
すべてを使う必要はありません。
現場で問題になっている旧行動を一つ選び、
そこから使ってください。
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