小さな訪問日記⑲ 「見えない場所が見えるだけで」
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— 母に送った小さな日記 —
母とは一緒に住んでいないから、
どうしても「見えない時間」が気になることがある。
家の中の様子は、以前に置いたカメラで分かる。
けれど外のことになると、ずっと手つかずのままだった。
一人で暮らす母のことを思うと、
防犯の面でも何かできないかと考えるようになった。
ただ、いざ設置しようとすると電源の問題がある。
配線を引くのは現実的じゃない。
だからといって、ダミーのカメラで済ませるのも、
どこか心もとない気がしていた。
見せかけだけでは、意味がないかもしれない——
そんなふうに、少し迷っていた。
屋外の監視カメラを探すとき、
条件はひとつだけ決めていた。
配線がいらないこと。
母の家に大がかりな工事はしたくなかったし、
扱いもシンプルな方がいい。
そう思って探しているうちに、
ソーラーパネル付きのカメラにたどり着いた。
選んだのは、以前に買った屋内用と同じメーカーのもの。
同じアプリでふたつのカメラを確認できること、
そして、実際に使って安心できた製品だったからだ。
実家に行く日に合わせて注文しておいた。
当日、箱を開けて、まずはアプリを立ち上げる。
手順に沿ってカメラを追加していくと、
途中でWi-Fiの設定画面が出てくる。
母がのぞき込む。
小さな画面の中に映っていたのは、まだ室内の景色。
「外は、これからね」
そう言うと、母は静かにうなずいた。
設定が終わってから、取り付けの作業に入る。
母が下から本体を支え、
僕は位置を調整しながら固定していく。
腕をいっぱいに伸ばして支える母に、
「もう少しだけ」と声をかけたとき、
「……もう腕が限界かも」
少し息を混ぜながら、そう返ってきた。
その声を聞いて、長くは持たないと感じて、
僕も残った力を振り絞るように、ペースを上げて作業を進めた。
次は取付金具のねじ止め。
これが思っていたより手強かった。
家のベランダを支えるポールに固定するため、
力を込めてねじを回していく。
体勢も安定せず、思うように進まない。
何度かやり直しながら、
ようやく金具がしっかり固定された。
そんなやりとりのあと、ようやく設置が終わった。
早速アプリを開いてみる。
母も一緒に画面をのぞき込む。
今度は、外の景色がきちんと映っていた。
「こんなふうに見えるのね」
少し驚いたような、でもどこか安心した声だった。
「夜でも赤外線でちゃんと見えるし、
人とか猫がカメラの範囲に入ったら、自動で録画もされるんだよ」
そう伝えると、母はもう一度画面を見て、
「そんなことまでできるの?」と、少し目を丸くした。
「そういえば、前に設置してくれたネコ除けの機械のおかげか、
最近は全然見なくなったわよ。これで映っていたら分かるわね」
どこか安心したように、そう続ける。
僕も母も、猫も犬も好きだけれど、
飼い猫でも、外に出てしまえば同じで、
庭に入ってきてしまうと、やっぱりフンをされるのは困ってしまう。
でも、以前に設置したネコ除けの機械は、
効果があったのかもしれない。
少なくとも、母の気持ちとしては、
少し安心できているようだった。
そして今回、
外の様子も見えるようになったことで、
その安心は、もう少しはっきりしたものになる。
リビングの中と、家の外。
ふたつの映像が並んでいる。
離れていても、見守れる場所が増えた。
見えない場所が、見えるようになるだけで、
心の中にあった小さな不安が、
静かにほどけていく気がする。
今日もそれぞれの場所で、
同じ安心を、そっと分け合っている。


今回使用した商品です。
