葛藤の先へ。深く潜る[episode2]
高校三年生になった私は、進路を決めかねていた。
もともと興味のあった調理の道へ進むか、製菓の専門学校に行くか、就職するか。
周りがどんどん自分の道を決めていく中で、私はどこかに取り残されたような深い孤独感を味わっていた。
「調理師の専門学校に行きたいと思ってるんだけど…」
そう両親に伝えた。
「お姉ちゃんも私立の高校、専門学校ってお金掛かってるし、あんたまで出す余裕ないよ。」
その言葉は、ただでさえ揺らいでいた私の心を大きく傾けた。
そのことを彼にも話すと、彼はこう言った。
「専門学校と社会人とじゃ、時間が合わなくなるなぁ。」
「別れることになっちゃうかもよ?」
彼が就職して一年が経っていた。
付き合いたての頃から、彼は私に目標を語っていた。
「就職して、お金を貯めたら早く親元を離れたい」
「家を出て二人で暮らそう」
やがてその言葉は、
「結婚したいね」
に変わっていった。
だからこそ、「別れるかもしれない」という言葉は、私にはあまりにも重かった。
「やだ!そんなこと言わないで」
両親の言葉と、彼の言葉。
その二つが、私の人生の大きな分岐点になった。
私は高校卒業と同時に、飲食店で仕事を始めた。
調理師免許は、実務経験を積めば試験を受けることが出来ると知り、専門学校は諦めた。
その分、一日でも早くお金を貯めて二人で暮らすための資金に充てようと考えていた。
ちょうどその頃、生理が遅れていた私はそのことを彼に伝えた。すると、彼は顔色を変えて言った。
「今は無理だよ!」
強い口調に動揺を隠せなかった私は、動揺して涙が止まらなくなった。それを見た彼は言った。
「何で一人でも産むって言わないんだよ…」
私は、その言葉の意味が分からなかった。
「何でそんなこと言うの?一人じゃ育てていけない!」
答えは返ってこなかった。
結局、そのあとしばらくして生理は来たので、その話は記憶から消えていたが、最近そのことを思い出しふと考えた。
『私は、自分の人生をいったい誰に委ねていたのだろうか。』
親の言葉、彼の言葉はよく聞けるのに、自分の声はまったく聞けていなかった。
自分の気持ちは後回しで、何ひとつ自分の意志で決めていなかった。
その問いの答えにたどり着くのは、まだずっと先のことになる。
