葛藤の先へ。深く潜る[episode1]
私はいつも何かに焦っている。
家にいる時も、出かけていても、心はいつもどこか違う方向を見ていて目の前のことに集中出来ていないような気がする。
いつからそんな風になったのだろうか。
子どもの頃から、どこか家に居心地の悪さを感じていたように思う。
両親との確執。
そんな風に言うと大袈裟で、
実際は、私ひとりが勝手にそう思っていただけなのかもしれない。
ただ、その想いは思春期に差し掛かると更に強くなっていった。
アルバイトを始めて、彼(夫)と出逢ってからは目に映る世界は毎日がキラキラと輝き出した。
次第に、家に帰ることが苦痛で堪らなくなった。
アルバイトが終わってもバイト先で時間を潰したり、夜勤の彼の側に居たくて店の近くで遊んでいた。
見兼ねたバイト先の先輩から、
「そろそろ家に帰りな。」
そう促されたこともある。
明け方に家に帰ると、玄関先で父親が正座で座って待っていた。
驚いた私は咄嗟に、
「いつからそこにいたの?!気持ち悪い!!」
そんな言葉を吐いて部屋に逃げ込んだ。
「フルスモークの車に乗った金髪の彼氏」
その存在が、近所のお母さん達から注目を集めていたらしい。
当時高校生だった私を心配した人は、母にそのことを伝えていたらしく、大して人のことに興味を持たない母から、
「あんた、どんな男と付き合ってるの?!」
と捲し立てられた。
アルバイトを始める前の私は、姉と母と3人でドラマを観ながら、まだ見ぬ彼氏について夢を描き語っていた。
「彼氏出来たら家に連れて来て」
「一緒にごはんとか食べに行っちゃう?」
そんな話をしていた矢先のことだった。
「言ってること全然違うじゃん…」
またひとつ、現実との差に失望した私は、母に向かってこう言った。
「彼は誠実で優しい人だよ。見た目だけで決めつけないで!」
私は、両親への反抗心から、ますます家に寄り付かなくなった。
道端で彼と歩いていると、母とすれ違った。
その時の母の態度は今でも忘れない。
私たちの姿を見るなり、鬼の形相で睨みつけ、とても話しかけられる雰囲気ではなかった。
「あれ、うちのお母さん」
「え?どれ?」
辺りを見渡し母の姿を探す彼に、
「行こう」
と腕を引っ張った。
私の中で、母に対しての猜疑心がより強くなった。
「挨拶しなくて良かったの?」
そんなことしたら、母が何を言い出すかわからない。
私は首を横に振った。
