自転車のタイヤで男性に金的してしまった話
夕暮れ時の細い坂道を、一台の自転車が勢いよく下っていく。
きしむブレーキの音と、チェーンがカタカタと鳴る軽い金属音。 ハンドルを握っているのは、県立高校の制服を着た女子高生、ハルだった。
「やばい、本当に間に合わない…!」
ハルはペダルを強く踏み込んだ。 ローファーの底がペダルから滑りそうになるのを、ぐっと足の指先に力を入れてこらえる。 風でなびくセーラー服の襟が、パタパタと耳元でうるさい。
「ちょっと待って、ハル、前、前ーー!!」
スマホに返信を打ち終え、少し浮かれた気分で再びペダルを強く踏み込んだその瞬間。 ハルは自分が信じられないミスを犯していることに気づいた。
ケーキを守るために歩道側の端を走っていたのだが、夕暮れ時の視界の悪さと、スマホに気を取られていた一瞬の隙。 曲がり角から突然、こちらに向かって歩いてくる人影が現れたのだ。
本来ならここでブレーキをかけ、徐行するか止まるべきだった。 しかし、数分前まで「1分1秒を争うデッドヒート」を繰り広げていたハルの脳内は、完全にアドレナリンに支配されていた。
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