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【骨】大転子のフットプリントを“地図化”する〜中殿筋・小殿筋の付着と臨床活用〜

おはようございます!こんにちは!こんばんは!「セラピストで副院長の豆知識💡」へ、ようこそ!

この記事では、大転子の筋の付着部(フットプリント)について解説していきます。


皆さんは大転子に付着する筋名を挙げられるでしょうか?
またさらにそこから大転子のどの辺りに付着しているかはイメージできるでしょうか?

患者さんの状態を確認するために、ランドマークとして大転子を触れることもあるかと思います。また筋の状態を確認したい時にも、筋が集まる大転子周辺を触れることがあるかと思います。

その時にフットプリントを理解していればより精度を上げた評価が可能です。

今回の記事では、大転子のフットプリントをまとめていきたいと思います。


1.大転子周辺の全体像と役割

 大腿骨の大転子は肩でいう上腕骨の大結節にあたります。そこには股関節周囲の筋が付着することにより球関節である股関節の安定性や細やかな運動を誘導しています。

 大転子の前面、後面、上面を見ていきましょう(図1)

図1:坂井建雄ら:プロメテウス解剖学アトラス.医学書より引用し改変

💡豆知識💡〜あなたのランドマーク・メルクマーレは大転子のどこですか?〜

 大転子は転子下長や大腿長を測る時に触れる部分になります。その際に大転子のどこあたりを触れて測定するのかを統一しておかないと測定のズレが生じてしまいます。地味なことですが、個人で、または職場内で統一されていると良いことの一つですね。


2.大転子のfacet(ファセット)

大転子表面には4つの小面(facet)が存在します。(図2,3)
①前方:小殿筋
②外側:中殿筋
③上後方:中殿筋
④後方:筋付着なし(大転子滑液包が存在)

図2:Benjamin G. Domb et al :GluteusMediusTranstendinousRepair.The Journal of Arthroscopic and Related Surgery.2010.26(12).1697-1705より引用し改変
図3:William J. Robertson et al :Anatomy and Dimensions of the Gluteus Medius Tendon Insertion .Arthroscopy .2008 :24(2) :130-136より引用し改変

👉中殿筋が「外側+上後方」の2箇所にフットプリントを持つこともポイントです。

👉上記のようにfacet周囲には筋の付着や滑液包が存在します。(図4)

図4:Benjamin G. Domb et al :GluteusMediusTranstendinousRepair.The Journal of Arthroscopic and Related Surgery.2010.26(12).1697-1705.を引用し改変

3.facet以外の筋の付着

Facet以外にも大転子周辺には筋が付着します。
それぞれの付着部を確認していきましょう。(図5)

図5:Marc J. Philippon et al: Surgically Relevant Bony and Soft Tissue Anatomy of the Proximal Femur .Orthop J Sports Med.2014.2(6). より引用し改変

・深層外旋六筋
①梨状筋:大転子尖端
②上双子筋:転子窩(大転子の内側)
③内閉鎖筋:転子窩(大転子の内側)
④下双子筋:転子窩(大転子の内側)
⑤外閉鎖筋:転子窩(上双子筋、内閉鎖筋、下双子筋とは異なる)
⑥大腿方形筋:転子間稜

💡豆知識💡〜外側広筋の起始部〜

 外側広筋の最上部の起始部は中殿筋と小殿筋の停止部に腱膜性に連続するような構造になっています。(図6)
 
機能としての相互作用の可能性も視野に入れながら評価やアプローチできると良いです。

図6:Marc J. Philippon et al: Surgically Relevant Bony and Soft Tissue Anatomy of the Proximal Femur .Orthop J Sports Med.2014.2(6). より引用し改変

💡豆知識💡〜大転子部痛症候群:GTPS〜

 大転子は筋付着の集合点として股関節運動の「力のベクトル」が集中する場所とされています。
 臨床的にも、股関節周囲の疼痛(例えば大転子部痛症候群:GTPS)は、これら付着筋やその腱・滑液包の病変と関与していることが多く、触診・評価・治療に直結する知識です。


4.大転子のbare area(Bald spot)

 大転子には腱が付かない裸地帯=組織に覆われていないエリア(bare area)または禿げていることを表すBald spotと表現されるエリアがあります。(図3,7,8)

図7:William J. Robertson et al :Anatomy and Dimensions of the Gluteus Medius Tendon Insertion .Arthroscopy .2008 :24(2) :130-136. およびBenjamin G. Domb et al :GluteusMediusTranstendinousRepair.The Journal of Arthroscopic and Related Surgery.2010.26(12).1697-1705.より引用し改変
Jarrod Dale : Gluteus Minimus Anatomy and Tear Patterns.Jarrod Dale. MRI Web Clinic.2023 より引用し改変

 👉この部分は付着面の境界やばらつきを理解する手掛かりになります。ランドマークにも使えるため、触診やエコーで“ここは腱が付着していない可能性が高い”ということを押さえておくと、介入の狙いが定まります。

💡豆知識💡〜圧縮ストレスがかかる滑液包〜

 Bare areaの位置・幅を知っておくと、圧縮ストレス(側方からの圧迫)がかかるエリアの推定に役立ちます。後述の近年研究では、トロカンテリックリッジ近傍に病変が集積する所見も示されています。


5. 組織学で見る付着部

①小殿筋腱と関節包の連続性

 小殿筋の腱は大転子だけでなく、短い筋内腱で関節包へも強固に連結しています。(図9)

図9:JOHAN WALTERS et al :Gluteus minimus;observations on its insertion.J Anat. 2001.198(Pt 2):239–242. より引用し改変

 股関節運動時に関節包を後退させ、挟み込みを防ぐ機能が示唆されており、前方facetの臨床的意義を裏づけています。(図10)

図10:JOHAN WALTERS et al :Gluteus minimus;observations on its insertion.J Anat. 2001.198(Pt 2):239–242. より引用し改変

②中殿筋腱の変性像

 組織学・超微細構造解析では、THA後や再置換例の中殿筋腱は変性が強いことが報告され、線維配列や血管性変化が修復成績や疼痛持続に関与しうると示唆されます。リハでは負荷量・方向の管理が鍵で、早期からの過度な伸張や圧縮は避ける判断材料になります。(図11)

図11:Mustafa Ibrahim et al :Histological and ultrastructural degenerative findings in the gluteus medius tendon after hip arthroplasty. Journal of Orthopaedic Surgery and Research .2021. 6(1):339. より引用し改変

6.最後に

 今回は、大転子の付着する組織や、大転子のどの部分に付着するのかを紹介してきました。
 大転子のfoot printが理解できていれば、臨床で触れる時に、何の組織を触れているのかをイメージしながら介入することができます。
 大転子だけでなく他の部位でも組織の起始停止はどこにあるのかという立体イメージができると良いですね。


記載の内容が全てではないので、自己診断をせず、症状が気になる方は医療機関で相談してくださいね。

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