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【短編小説】忘れたころに咲いたサボテンの花

「おじいちゃん、これ見て」 裕太の声に、おじいちゃんは新聞をたたんで顔を上げた。 ころすけが、なぜか裕太より先に縁側へ飛び出していく。

小さな鉢の上に、白い花がひとつ。 昨年、三人で買ってきたサボテンが、花を咲かせたのだ。

ころすけは鼻を近づけ、くんくんと匂いを確かめる。 そして、なぜか得意げにこちらを振り返った。 「ころすけ、お前が育てたみたいな顔しとるな」 おじいちゃんが笑うと、ころすけは尻尾をぶんぶん振った。

サボテンの育て方には、いろいろ決まりがあるらしい。 よく日に当てるとか、成長期と休眠期を分けるとか、水やりは控えめにとか。

けれど、この家のサボテンはそんな“正しい育て方”とは無縁だった。 おじいちゃんは忘れたころに水をやり、 裕太はたまに話しかけ、 ころすけは鉢のそばで昼寝をして、体温で土をほんのり温めていた。

「サボテンの花言葉、知っとるか?」 おじいちゃんがぽつりと言った。 「枯れない愛、って言うんやと」

裕太は花をのぞき込み、ころすけはその横でしっぽをゆっくり揺らす。

完璧じゃなくても、ちゃんと伝わるものがある。 そんなことを教えるように、サボテンの花は静かに揺れていた。

ころすけは最後にもう一度、花をくんくんと嗅いで、 「ほら、見て」と言わんばかりに胸を張った。

サボテンの花言葉は“枯れない愛”。
いい加減な世話でも、ちゃんと応えてくれたのかもしれない。
そんなふうに思うと、今日の花は少し特別に見えた。

サボテンの花

※作品の情景をイメージして、画像はAIで生成しています。

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