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ラクスルに学ぶ仕組みのリアル。QOLを支える「現場の解像度」

MBAの履修科目で「ベンチャー戦略プランニング」を選択した際、今でも深く心に残っているケーススタディがあります。それが、ラクスル株式会社の創業者・松本恭攝氏(現:ジョーシス株式会社代表取締役CEO)の起業へのアプローチです。

印刷や物流といった、伝統的な多重下請け構造の業界。松本氏はそこに潜む課題を見出し、デジタルプラットフォームの仕組みを使って、関わるすべての人が便利になる仕組みを築き上げました。

このケーススタディで最も心に響いたのは、高度な戦略論そのものよりも、松本氏が立ち上げ期に自ら徹底的に「現場」に入り込み、リアルな課題を見つけ出していったという地道で実直なプロセスでした。そして、この「現場の解像度を上げる」という教訓は、私が身を置く内装業界においても、そのまま私の大切な指針となっています。


経営層が「現場に入る」という選択 

私が身を置く内装業界もまた、同じような下請け構造の中にあります。立上げ間もない当社だからこそ、私自身も現場へ足を運ぶことを大切にしています。

 実は、周囲の友人たちに「自分は現場に入ってお手伝いをしている」と話すと、驚かれることが少なくありません。経営者なら現場は人に任せて、もっと別の業務に集中すべきではないか、という視点もごく自然なものだと思います。

 しかし、一見すると意外に思えるこの「現場に入る」という行動にこそ、実は経営において非常に大きな意味があると感じています。

 ビジネスモデルが完成しきっていない時期に、私たちが現場の「不条理」や「非効率」、「職人の本音」や「顧客のリアルな表情」を肌感覚で掴んでいないと、本当に必要とされるサービスや仕組みは絶対に作れないと思うからです。

デジタル活用の必須性と、業界特有の高い壁

私たちのような自営業や、現場を支える個人事業主の職人たちにとって、これからの時代、ITツールやデジタル活用の必要性は間違いなく高まっています。限られたリソースの中で効率を上げ、価値を高めていくためには、むしろスモールビジネスにこそ必須の生存戦略だと言えます。

ですが、ここで直面するのが業界特有の高い壁です。

現場を支える職人たちの多くは、一人ひとりが独立して活動する「個人事業主」です。それぞれに長年培ってきた独自の仕事のスタイルがあり、どんなに便利なシステムやソフトウェアを導入しても、現場の誰もがすぐに使いこなせるわけではありません。どれほど優れたツールであっても、現場に馴染み、機能しなければ意味がないという厳然たるリアルがあります。

現在、業界内にはすでに職人と業者を引き合わせるマッチングプラットフォームが多数存在し、多くのプレイヤーが参入しています。そうした既存の仕組みに乗り、効率化を図る選択肢は必然と言えます。しかし、効率の先にある「質」や、私たちと同じ個人事業主である職人たちの本音と本当に調和するのか、それを利用すべきなのか――。机上の理論と、目の前のリアリティの狭間で、今まさに深く悩んでいるところでもあります。

だからこそ、私自身が現場の清掃やお手伝い、時には軽い巾木貼りの作業などを一つひとつ自分の手で行い、同じ目線に立つことが重要なのです。

すべては空間の「QOL」を高めるために

 当社が目指すのは、単に機械的に壁紙を綺麗に貼ることではありません。その空間で過ごす方々の「QOL(生活の質)」を、内装の手触りから高めていくことです。

 データや書類の上だけでは決して見えてこない、利用者のケアに直結する空間の課題や、現場のリアルなニーズ。それらはすべて、現場にじっと身を置くことで初めて高い解像度で伝わってきます。

 ここで得た丁寧な気づきの数々が、これからの私たちのサービスと、空間のQOLを支える確かな土台になると確信しています。

 すべては、現場の小さな仕上がりから。今日も誠実に、1ミリの妥協なく現場に向き合います。

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日経ビジネス「松本恭攝の「産業DXの要諦」- 新事業への挑戦を急いだ理由」2021.12.8掲載:

 GLOBIS知見録「ラクスルの起業への軌跡」:


MIRAIYA Lab合同会社(ミライヤラボ)
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