【子育てエッセイ】ママには内緒の贈り物。
「これにするー!」
娘が選んだのは、ピンクの柄のタオルケット。
最初は「フワフワがいいんじゃない?」とフワフワの布団を選んでいた。
しかし、予算の都合とこれからの季節を考えて娘に提案。
顎に手を当て、眉を顰める娘から「じゃあ、どんなのがあるの?」と言われ、アレコレ探した中から選んだのがこのタオルケットだ。
これからの季節にピッタリだし、予算以内だ。
娘は自分のお金で購入しようとしている。
これは母の日に送るママへのプレゼント。
母の日の説明をすると、「ママにプレゼントあげたい!」と娘が目を輝かせた。
まだ、お金の価値をよく理解はしていない。
車だって「買ってあげようか?」と気軽に言ってくるくらいだ。
そんな娘に、スマホをピッとかざしたり、魔法のカードを使えば何でも買えると認識されては困るので、お手伝いなどの労働の対価にお金を渡す時がある。
そうしてコツコツ貯めたお小遣い。
計2350円。
それをタオルケット購入の代金に充てる。
"買うと言う事は、お金を消費する"
まだピンとはきていないみたいだが、自分のお金イコール自分の所有物を差し出すということには抵抗を示した。
「どうする?」の質問に唸りをあげ、しばし黙考。
しばらく悩み、「買いたい」と結論を出した。
そうして、「公園にいってくるねー!」と娘と2人で家を飛び出し、お店へと向かった。
「どんなのを買ってあげるの?」
移動中の車内、娘に問いかける。
「ママはねー、お買い物の時に、『あぁ、お寿司美味しそう』って言ってたからお寿司!」
……ほぅ。
中々いいではないか。
だが娘よ、1つ問題がある。
「今日、ばぁばがピザ食べたいって言ってたから夜はピザだよ?」
「そーだった!お寿司はいいや!」
母の日は当然、ばぁばにも適用される訳で、ばぁばには「花と食べたい物」をプレゼントする。
若干、孫がピザ好きだからピザにした感が否めないが、母も嫌いではない。むしろ好きだ。
以上の理由で"お寿司"は断念。
「何か、形に残るものにしたら?」
「……形に残るってなぁに?」
食べ物などではなく、長期間手元に残り、見るたび、使用するたびに贈り主や思い出を想起させる物理的な贈り物。
分かりやすく説明すると、
「それいいじゃん!」
と娘も乗り気だ。
――到着し、店内を見て回る。
「みてみて、きゃわいいー!」
やはりサンリオのキャラクターや、ちいかわ、すみっコぐらしなど、自分が欲しい物に目が奪われている。
そのうち目的を忘れそうな気もするので、色々見て回ろうと娘の手をひく。
「パパ!ふわふわだよ!」
寝具売り場を通りかかると、娘が叫んだ。
…なるほど。
これはアリだな。
「ふわふわがいい!」と言う娘に、値段を見て一緒に考える。
2千円では足りない。
これからの季節を考えると、薄手でも良い。
グルグルと寝具売り場を物色する娘の目は狩人のよう。
「これいいなー」「あれもいいじゃん」とブツブツ言いながら獲物を求める娘をそっと眺める。
「これがいいー!」
しばらくするとお眼鏡にかなった一品を探し当てた。
ピンク柄のタオルケット。
値段も予算以内だ。
「いいの選んだね」
「これでママと一緒に寝るー!」
選んだ商品を大事そうに抱え、レジへと向かう。
「お願いします」と、やや強張った表情で会計を済ませ、無事に商品ゲット。
お釣りで増えた小銭に「増えちゃった」とニヤけている姿は微笑ましい。
「帰ったらママにバレないように言うね!」
……絶対バレる。
ご飯食べた後に、サプライズでお手紙と一緒に渡そうと約束したが、言いたい気持ちが止められないようだ。
それもまたいいだろう。
「ママー!」
帰宅し、玄関を開けるなり娘が駆け出す。
「渡したいものがあるから、今日はそれで一緒に寝ようね」
妻の耳元で、小声になったつもりの“内緒話”をしている。
「そーなの?なんだろうなー?」
妻がこちらを見て、少しだけ笑った。
娘は満足げに戻ってきて、 「バレてない」と小さく拳を握る。
……いや、絶対バレている。
でも、妻も知らないふりをしてくれているのだろう。
今日の夜、 寝室にはきっと、 ピンクのタオルケットに包まり笑いあう声が聞こえるはずだ。
それを想像すると、 1人の布団も悪くない気がした。
