【奥さん3】鏡のなかのバイオテロ ―彼しか知らない臭いの正体―【官能】
【閲覧注意】
本作には性愛に関する露骨な描写が含まれます。
18歳未満の方、およびこうした表現に抵抗がある方は閲覧をお控えください。
この作品は、「『愛しているフリ』の孤独(笑)な夫の独白」と「ハニートラップには有給休暇を。」の続編です。
以下のテキストは実験です。
完全なるフィクションです。
このテキストは「鏡」のようなもの。
最後まで、妻の「悪戯」の正体は伏せます。
正体を暴いた(と思い込んだのは)、読んだあなた自身ですからね?
よろしいですか?
どうやら私は、自らが作り出した「奥さん」に恋をしたようです。
……いや、正確には、彼女が旦那を破壊するところに、強く惹かれて離れられないのてす。
それでは、世迷い言を聴いていただけますか?
では、語らせてくださいませ。
ある日、敦子は悪戯を思いついた。
それは悪戯の域を完全に逸脱しており、悪質なセクハラ・モラハラにして、最悪のバイオテロだ。
しかし、世間はそのような事柄に関しては、女に対し極めて寛容である(ように見える)。
その悪戯が露見したとしても、「お前、愛されてるなぁ(ニヤニヤ)」あるいは「『私の夫に手を出した女は消す』って宣言だわ(戦慄)」とされるのが、まあ妥当なところである。
もし、夫が妻にこんなことをすれば、夫は社会的に死ぬ。
残酷だけど、至極当然のことだ。
雅之はいつものように出社して、カバンを開けた。
すると、彼しか知らないはずの臭いがする。
女性社員が、「ん?」と反応している。
彼は違和感を覚えながらも、原因が分からず、そのまま仕事をした。
夫は「誰だよ(笑)、風呂に入ってないヤツは(笑)」と思っていた。
帰宅しようとして、再びカバンを開けたとき、逃れようのない現実として、その臭いは彼の脳天に突き刺さった。
「……お、おのれえぇ!敦子ぉお!!」
そのころ、敦子は勤務先からの帰りだった。
自分の悪戯によって、雅之がどんな顔で帰宅するのか、ニヤニヤしそうになるところを、必死に耐えながら家路を急いでいた。
(3日分の私、どうでしたか?旦那様。ぷぷぷぷぷ)
帰宅した夫は、本気で怒っていた。
しかし、私のダーリンは、男性がDVというレッテルを貼られてしまった場合、いともたやすく社会から抹殺されることをよく理解している。
だから、初めから怒声も暴力も封じられている。
もちろん、夫が怒りにまかせて、私を殴る可能性はゼロではない。
でもね、ダーリンが殴ろうが殴るまいが、最後に勝つのは私。
最初から確定した勝利。
……どれほどの小難しい、意味不明な、哲学とでもいうのかしら?
私には屁理屈としか思えない。……
言い訳をこねまわすなんて。
ただの女に過ぎない私を、どうしてそんなに怖がるの?
恥ずかしくて逃げ回るお子ちゃまみたい。
逃げるから追いかけるの。
逃げるために、私を甘やかすのではなく、素直に愛でてくれればいい。
別に捕って食べたりしないのに。
……いいえ、食べているわ。
でも全然足りない。
もっと食べたい。……
……ああ、そうだった。
私が勝つ理由だったかな?
……それはいずれ分かるわ。
「お前、そこに座れ」
(キタキタキタ!)
「何だ?これは」
「あら!そんなところにあったのね!」
「何を白々しい!物が勝手に俺のカバンに入るかよ!」
「あなたが入れたんじゃないの?……もうっ!……いけないダーリン♡愛ならゲップが出るくらいいただいています。感謝していますよ。旦那様。そんなに私を傍に置きたいの?ダーリン、素直になって♡」
(……ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!)
「私、至らない妻ですけど、決してあなたを裏切りませんよ」
(話をそらすな!)
「怒ったあなたの顔、すっかり忘れていました。久しぶりに見て、身が引き締まります。……でも、愛らしい♡」
(こ、こ、この馬鹿面め!しかし、怒鳴るのは無粋だ……)
「私に至らないところがあれば、優しく、おっしゃってくだされば、私、頑張って改めますわ」
「……至らぬところはないよ。お前は完璧に近い妻だ。だけどさ、ちょっとどうなの?その設定には無理があるって。あれは『完璧な仕込み』だよ。お前がやったんだろ?もう怒らないから、正直に言え」
(よしっ!確定演出キターー!これで私の勝ちだわ!ぷぷぷぷぷ……)
「お前のせいで、今日、絶対に女子社員から蔑まれたぞ」
「蔑まれた?」
「女なら誰でも分かるだろう!」
「怒らないって言ったのに(ウソ泣き)」
(しまった!……出た……必殺核兵器、『女の涙』、これはもうダメだ)
延々と続くウソ泣きと、チクチクとした嫌味、そして臆面もなく語られる、夫への「無償の愛」(笑)。
しかし、まあ、この嫁はよくも、自在に涙を操れるもんだよ。
……流し過ぎて、よく脱水しないもんだね。
……ん?いかんいかん!毒気を抜かれている。その手は食わんぞ。
「……聞いているの!?あなた!」
「はいはい」
「『はい』は一回で十分!」
「はい」
「今、私が何を言ったか言いなさい」
「『今、私が何を言ったか言いなさい』だろ?」
「そうじゃない!酷い!酷いわ!」
また延々と続くウソ泣きと嫌味と愛(笑)のエンドレスループ。
……はあ、もう聞き飽きたよ。
ヘビーローテーションなんてもんじゃないよ。
そもそも、なんで俺が怒られているんだよ。
どうして、帰宅直後に正座させられて、怒られなきゃいけないんだよ……。
「あなた!」
妻の金切り声。
どうやら、コイツはウソ泣きを真実として、自己を上書きしやがった。
夫は、手中の「それ」を、妻に手渡した。
「あんなエネミー夫に囚われて、可哀想に」
畜生!どの口が!
「もういいよ。謝らないけど、この話はおしまい」
「あなた!」
「なんですか?奧さ……うわわわわ!」
不意に妻が縋り付いてきた!
妻の身長は170cm近い。スラリとしており、手足が長い。
だから、本気で絡みつかれると、引き剥がすことが難しい。
「こうすれば信じてくださるの!?」
「……おい!俺は風呂に入る前なん(んぐ)」
衣擦れの音と格闘音。
……そして微かな湿り気を帯びた音。
……妻は夫の顔の上に座っていた。
座りながらも、彼女の腰はゆっくりと、円を描く動きをしていた。
彼女のスカートが夫の首から上を覆っていた。
荒い息のまま、肩を上下させながら、彼女は呟いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、これはたっぷり『教育』しないといけないわ……はぁ、はぁ……」
……妻の手は、夫の腰のベルトに伸びた。……
妻の手が蜘蛛のように走り、照明のリモコンの電源ボタンを押した。
照明が落ちた。
(……あなたを『分からせ』てあげるんだからぁ!)
(卑怯です!あんまりです!不条理です!神も仏もないのですか!?)
「私が悪かったわ。ダーリン♡私が『分からせ』られちゃった♡」
(……お前にとっては、どちらでも勝ちだろうが!)
妻が夫のカバンに忍ばせたもの。
ご自由にご想像いただければ、幸いです。
それは読者の皆様の嗜好にして、癖です。断言します。
結びとして。
クソ真面目な男が女から破壊され、焼き尽くされる場面は、非常に楽しく、筆が乗ります。ノリノリで走ります。
でも、逆は何故だが書けません。
女を嬲りものにすることを、脳が拒否するのです。
これが私の嗜好にして、癖ですね。
なお、この話はフィクションです。現実世界に実在する人物、組織や団体等とは一切無関係です。マジレスしないでください。
