退職の日は、思ったより静かにやってきた
休職期間の満了が近づいてきた。
主治医に相談したが、まだ仕事に復帰するのは難しいという判断だった。
その後、産業医との面談もあった。
そこで告げられたのは、休職期間が満了すれば、そのまま退職になるということだった。
「やっぱり、そうなるのか」
そんな感じだった。
会社を辞めるというのは、もっと大きな出来事だと思っていた。
もっと感傷的になったり、会社に対して何か思うところがあったりするのかと思っていた。
でも、実際には意外なほど淡々としていた。
もう会社に戻れない。
そう決まっただけだった。
会社に残していたもの
会社のロッカーには、いくつか私物が残っていた。
でも、もう自分で取りに行く気にはなれなかった。
会社には「ロッカーにあるものは、すべて処分してください」とお願いした。
考えてみれば、家に持ち帰らなければならないようなものは、もうほとんどなかった。
長く働いていた場所なのに、最後に残っていたものは、そんな程度だった。
一方で、会社から返却を求められたものもある。
パソコンや社員証などだ。
こちらは着払いで送ってください、ということになった。
会社から私物を処分してもらい、会社の備品は自分から送り返す。
なんとも事務的なやり取りだった。
そして、健康保険証も退職日の翌日に返納することになった。
そうやって、私の退職日は過ぎていった。
特別なことが起きたわけでもない。
朝が来て、昼になり、夜になった。
カレンダーの上では、ただの一日。
でも、その日を境に、自分は会社員ではなくなった。
翌日から始まった「無職の手続き」
退職した翌日は、役所へ行ったり、保険の手続きをしたりしたように記憶している。
何しろ、通院は続いている。
だから健康保険だけは、早急に切り替えておかなければならない。
会社の健康保険から国民健康保険へ。
それまで会社がやってくれていたことを、今度は自分でやらなければならない。
そして年金の切り替え。
さらに、その後はハローワークにも行かなければならない。
ハローワーク。
名前はもちろん知っている。
でも、実際に行ったことはない。
何をする場所なのか。
どんな手続きをするのか。
どこで何を言えばいいのか。
正直、よくわからなかった。
会社を辞めるということは、仕事がなくなることだけではない。
会社員だったときには、会社という大きな仕組みの中で、知らないうちに処理されていたことが、突然すべて自分の前に並べられる。
健康保険。
年金。
雇用保険。
ハローワーク。
そして、これからの生活。
「さて、どうすればいいんだ?」
それが、退職して最初に感じたことだった。
こうして私は、長年いた会社を離れた。
そして、いよいよ本当の意味での「無職生活」が始まった。
