感想がないを言葉にする方法
「何も思わなかった」も感想です
最初は特に言葉が浮かばないことがあります。
それも立派な感想です。
とりあえず、「特に何も思わなかった」と書いてみる。ただ、それだけだと原稿用紙は埋まりません。
では、どうすればいいのでしょう。
例えば、なぜ何も思わなかったのだろう、と考えてみる。
これといって特徴が無かったからだろうか。予想通りだったからだろうか。何かを期待していたのだろうか。
「普通だった」と感じたなら、何と比べて普通だったのだろう。
興味が湧かなかったのだとしたら、それは自分の好みと関係しているのかもしれない。
そうやって振り返ってみると、「何も思わなかった」の中にも意外とたくさんの情報が隠れています。
そして、もしかすると感想文というのは、その隠れている部分を書くものだったのかもしれません。
なぜ僕は感想文を書けたのか
Xで「小中学校の感想文や作文が嫌いだった」という投稿を見かけました。
驚くほど多くの共感が集まっていました。
字数埋めが苦痛だった。
何を書けばいいのか分からなかった。
感想なんて無かった。
そんな意見が並んでいました。
僕は少し不思議でした。
というのも、僕は感想文そのものが嫌いではなかったからです。
むしろ困った記憶があるとすれば逆でした。
原稿用紙五枚以内。
それが難しかった。
放っておくと八枚くらいになる。どこを削るかで悩んでいました。
最近になって、その違いが少し分かった気がしています。
僕は感想を「面白かった」「つまらなかった」だとは思っていなかったのかもしれません。
感想は違和感から始まる
今回のサムネイルの画像を見てください。

古いアパートの和室。
テーブルの上には茶封筒。
向こうにはスーツ姿の中年男性。
少女はキッチンに立ち、お茶を淹れています。
それだけの場面です。
でも僕は考えてしまう。
なぜこの子はこんなに慣れているのだろう。
この男性は誰だろう。
先生だろうか。
父親にしてはよそよそしいか。親戚だろうか。
何か事情があるのだろうか。
作者は何も説明していません。
それでも何かが引っかかる。
今思うと、その引っかかり自体が感想だったのかもしれません。
小学生の頃、ガンダムを見ていて不思議な場面がありました。
ミライが編み物をしている。
そこへブライトが入ってくる。
何となく気まずい。
でも理由が分からない。
恋愛も大人の事情も分からない年齢でした。それでも何か違和感を感じた。
「あれは何だろう」
そう思った。
今振り返ると、分からないことをそのままにせず考え始めたのは、あの頃からだったのかもしれません。
感想とは分解である
例えば工場見学です。
「面白かったです」だけなら一行で終わります。
でも、
テレビで見たことがあったので興味があった。
思ったより静かだった。
機械ばかりだと思っていたら人の手作業が多かった。
そう書いていくと、その時点でかなりの文章量になります。
最後に、
「だから面白かった」が来る。
あるいは、
「だけど特に新しい発見はなく、何も思わなかった」でもいい。
感想は自由です。
面白かったでもいい。
つまらなかったでもいい。
普通だったでもいい。
大事なのは、その結論に至るまでに何を見たのかです。
食レポも同じです。
「美味しかった」だけでは番組になりません。
どんな店だったのか。
なぜ来たのか。
何を頼んだのか。
香りはどうだったのか。
食感はどうだったのか。
予想との違いはあったのか。
そうした観察が積み重なった最後に、
「美味しい」が来る。
あるいは、
「普通だった」でも成立します。
感想の本体は最後の一言ではありません。
その前にある観察や比較や違和感の方なのだと思います。
AI時代に残るもの
AIが文章を書いてくれる時代になりました。
絵まで描いてくれます。
けれど、一つだけ代わってもらえないものがあります。
何に違和感を持ったのか。
何が気になったのか。
どこで立ち止まったのか。
そこだけはひとの仕事です。
AIは整理を手伝うことはできる。
説明を手伝うこともできる。
でも最初の引っかかりまでは代わってくれません。
だから僕は、感想文の価値はむしろ上がったと思っています。
終わりに
感想文が嫌いだった人は多い。
それは事実でしょう。
でも今になって思います。
本当に感想が無かったわけではなかったのかもしれません。
考えてみれば、エッセイもそうです。
プロの文章を読んでも、「わざわざ人に話すほどでもないこと」ばかりだったりします。
サザエさんのような作品だってそうです。
特別な事件が起きるわけではありません。
ただ、その中にある小さな違和感や面白さを拾い上げている。
感想文も同じだったのかもしれません。
何か大きな感動を書くものではなく、自分が何を見て、何に引っかかり、何を考えたのかを振り返るもの。
そして創作とは、その逆方向の営みなのだと思います。
誰かが分解したくなるように、世界を積み上げていく。
だから今なら少し分かる。
感想がなかったのではない。
感想だと思っていなかっただけだったのかもしれません。
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