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ごみ箱なんぞに

リビングのごみ箱を捨てることにした。

フタつきのプラスティック製、ペダルを踏んで開閉する、45リットルゴミ袋がちょうど納まる大きさだ。

外側もペダルも壊れていないのだが、中のごみ袋の留め具がずいぶん前から割れてしまっていた。
輪ゴムでだましだまし使っていたのだが、いよいよゴミ袋が外れがちになり、買い替えることにした。

気づけば、このごみ箱にしてから10年が経っていた。
当時にしては、ごみ箱らしからぬ外観でスタイリッシュ。色もブラウンで、リビングの床になじんでいて、とても気に入ったのを覚えている。

一方、今度のニューフェイスは、スタイリッシュさにさらなる磨きがかかったステンレス製、まるで空気清浄機のようなルックスだ。
フタは音を立てずに、ゆるやかに閉まってゆく。
ごみ箱というより、ダストボックスと呼んでやるのにふさわしい。
日進月歩とはよく言ったものだ、10年の歳月はごみ箱すらこんなにも進化させているとは───

今日は粗大ごみ回収の日。

最後のごみ袋をひっぱり出して、空っぽになった中を覗き込んだ。
生活臭がプンと立ちのぼる。

リビングの端っこに鎮座して、家族の10年分の出来事をじっと見てきたんだなぁと、しみじみ思う。

捨てるというのに、雑巾でほこりを丁寧にふき取る。

あの日のことも、あの出来事も、ぜんぶここで見てたんだな────

いつもペダルにあごをのせて寝そべっていた、亡くなった愛犬の姿も、にわかによみがえってくる。

鼻の奥がつんとした。

ふと我にかえると、ごみ箱なんぞにしんみりしてしまう自分が、妙に可笑しい。

鼻をふいたティッシュを、新しいダストボックスに投げ込んで、

きれいになったごみ箱を、てきぱきと外へ運び出した。

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