【マーケティングの本質】マーケティング思考で”価格”を考える〜初参加の『まちゼミ』で、私が参加者から悟らされたこと〜
この7月4日から8月11日までの期間、東京都北区の地域活性化などを目的とした「まちゼミ」が開催されています。これは、街のお店や事業者が協力してファンを増やしたり、地域を盛り上げるための取り組みです。
私の事務所もシェアオフィスを運営している関係で、今回、初めてこの「まちゼミ」に参加させていただくことにしました。
私が用意したのは「値決めの極意・値上げの極意」というタイトルの講座。1時間という限られた時間の中で、その神髄をお伝えし、参加者お一人おひとりの悩みに寄り添うミニセミナーを企画したのです。
先日、その初めてのセミナーが無事に終了しました。残念ながら当日、体調不良によるキャンセルがお一人出てしまいましたが、ご参加いただいた皆様と、非常に濃密で熱い時間を過ごすことができました。
今回は、この初めての「まちゼミ」での対話を通じて、私が参加者の言葉から深く悟らされたこと、私自身も大きな学びを得た「マーケティング思考で”価格”を考える」という視点。そしてセミナーで最も強調した「重要な経営視点」についてお話しします。
1. 値段を決めることは、売上を決めることではない
「値決め」に関する書籍やセミナーは世の中にたくさんあります。しかし、その多くは「どうやって値段を決めるか?どうやって高く売るか?」というテクニック(How-to)に終始しがちです。
私はこのセミナーを通じて、参加者の皆様にどうしてもお伝えしたいことがありました。 それは、「値段を決めるとは、単に価格の数字を決めることではなく、固定費も含めた原価を踏まえて『利益』を確定させることだ」という本質です。
多くの人が見落としがちな、或いは分かっていても重要視していない、しかし経営者が常に意識しておくべきポイントは以下の3つに集約されます。
価格は「マーケット」が決めるものであること。
利益は「経営計画」で決めるものであること。
そして、企業の付加価値の源泉は「固定費」にあること。
売値というものは、お客様のニーズや評価といった市場(マーケット)が自然と決める傾向が強く、企業が好き勝手にコントロールできる時代ではありません。だからこそ、値決めした商品やサービスに対する原価(変動費と固定費)を客観的なフレームワークで厳密に評価し、残る利益をあらかじめ経営計画として「コントロール」できるようにする必要があるのです。
2. 価値を生み出す源泉は「固定費」の中にある
セミナーのなかで、私は参加者の皆様に一つの問いを投げかけました。「自社の商品やサービスの価値を生み出す源泉は、どこにあると思いますか?」と。
多くの人は、材料費などの変動費に目を奪われがちです。しかし、本質は全く違います。価値を生み出す源泉は、すべて「固定費」の中に眠っているのです。
ものづくりの現場を動かす設備、サービスを提供するスタッフの技術や人件費、店舗という空間の維持費——これらすべてが「固定費」です。お客様が本当にお金を払ってくれているのは、単なる材料(変動費)ではなく、その材料に自社ならではの価値を吹き込んでいる「固定費」の働きに対してなのです。
セミナーでは、この「固定費と価値のつながり」を客観的に見つめ直すためのフレームワークを解説しました。これに沿って考えるだけで、自社の価格設定がただの勘ではなく、確固たる理由を持った経営戦略へと変わるからです。
しっかりとした「コストの裏付け」と「価値の源泉」が頭に入ると、今多くの経営者を悩ませている「値上げ」に対する恐怖はスッと消えていきます。お客様に対して、「なぜこの価格になるのか」を自社の価値(固定費)の視点から自信を持って説明できるようになるからです。
先日ご参加いただいた皆様からも、「ものすごく目から鱗が落ちました」「本当に無料でいいんですか?」とまで言ってくださり、コンサルタントとしてこれ以上ない最高の褒め言葉をいただいたと、深く感謝しております。
マーケティングというと、どうしても「どう売るか(売上重視)」ばかりに目を奪われがちです。しかし、本当に大切なのは「どう利益を残すか(利益重視)」です。
「売る」という行為は、突き詰めれば「利益を確定させる」という行為に他なりません。そして、その利益を生み出すための付加価値は、あなたが日々支払っている「固定費」の中にこそ存在しています。
火曜日の朝、皆様が取り組んでいる価格設定やマーケティング活動の中に、「固定費こそが価値の源泉である」という本質的な経営視点が組み込まれているか、もう一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。
📊 参考理論・キーワード
限界利益と固定費回収(Marginal Gain vs. Fixed Cost Recovery): 売上から変動費を引いた「限界利益」が、いかに効率よく固定費を回収し、純利益を残していくかという管理会計の基本概念。値決めとは、このバランスをコントロールする行為そのものです。
戦略的コストマネジメント(Strategic Cost Management): コストを単なる「削減すべき悪」と捉えるのではなく、企業の強みや付加価値を生み出すための「投資(固定費)」として戦略的に配置・評価する思考法です。
(終わり)
