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介護生活で「このままで大丈夫なのか」と感じる不安の正体|理学療法士が考察

「このままで、大丈夫なのかな」

以前、介護を行っているご家族から、相談を受けました。

「何か大きな問題が起きているわけじゃないんです」

「毎日のことは、なんとかこなせています」

「でも、ふと、このままでいいのか分からなくなるんです」

具体的に何が心配なのか聞いてみても、はっきりした答えは返ってきません。

転倒が心配なわけでもない、介助の方法が分からないわけでもない、それでも、この漠然とした不安だけが、消えずに残っている。

この記事では、そうした「理由がはっきりしない不安」がどこから来ているのか整理していきます。

「不安」という、見えないものにはたくさんの理由があると思います。

「不安」を感じていない方もいらっしゃると思います。

あくまでわたしの考えなので、参考程度にお願いします。


「大丈夫なのか」という言葉の中に、複数の不安が混ざっている

「このままで大丈夫なのか」という言葉は、実は一つの不安を指しているわけではありません。

多くの場合、いくつかの違う種類の不安が、一つの言葉の中に混ざり合っています。

一つは、今の状態がこれ以上悪くならないかという、

身体面への不安

一つは、この生活をいつまで続けられるのかという、

期間の見えない不安

一つは、自分の対応がこれで合っているのかという、

やり方への不安

一つは、この生活であっているのかという、

自分自身への不安

これらが一つの言葉にまとめられてしまうと、「なんとなく大丈夫じゃない気がする」という、輪郭のはっきりしない不安として、心の中に残り続けます。

不安の正体をつかむためには、まず、この混ざり合った状態を、少しずつ分けて見ていく必要があります。


なぜ、具体的な問題がないのに不安になるのか

不思議なことに、この不安は、何か具体的な問題が起きたときよりも、むしろ落ち着いて生活が回っているときにこそ、強く感じられることがあります。

これには、いくつかの理由が考えられます。

一つは、目の前の対応に追われている間は、不安を感じる余裕そのものがないということです。

介助や通院、書類の手続きなど、やるべきことが次々にある時期は、忙しさの中で不安を感じる時間がありません。

生活が落ち着いてくると、初めて、その不安と向き合う余白が生まれます。

もう一つは、終わりが見えないことへの不安です。

病気やけがのリハビリには、多くの場合、ある程度の見通しがあります。

一方、介護には、はっきりした終わりの時期が見えません。

先が見えない状態が続くこと自体が、人にとって大きな不安になります。

具体的な問題が今はなくても、「この状態がいつまで続くのか分からない」という感覚そのものが、不安の土台になっていることが多いと感じます。


「今は大丈夫」と「この先も大丈夫」は、別のことである

もう一つ、大事な視点があります。

「今の生活は、なんとか回っている」

ということと、

「この先も、このやり方で大丈夫」

ということは、実は別の話です。

多くのご家族は、今の生活が回っていることを確認しても、不安が消えません。

それは、無意識のうちに、今のやり方がこの先も通用するかどうかを、心のどこかで問い続けているからではないかと思います。

介護される側の状態は、今のまま止まっているわけではありません。

身体の状態は、少しずつ変化していきます。

介護される側だけでなく、ご家族も変化していきます。

ご家族の側の体力や気力にも、限りがあります。

「今は大丈夫」という現在の状態の確認だけでは、「この先も大丈夫」という将来への安心にはつながりません。

この二つを、同じものとして扱ってしまうと、いくら今の状態を確認しても、不安が晴れないという状態が続いてしまいます。


不安を分けて、それぞれに小さな対応を考える

不安をそのまま抱えていると、対応の仕方も見えてきません。

先ほど分けた4つの不安それぞれに対して、できることを私なりに整理してみます。

身体面への不安に対しては、今の状態を定期的に確認できる場を持つこと。

訪問リハビリやデイサービスのスタッフ、かかりつけ医に、変化があれば教えてもらえる関係を作っておくと、変化に気づいたときにすぐ相談できます。

期間の見えない不安に対しては、すべての見通しを立てる必要はありませんが、直近3ヶ月から半年程度の見通しだけでも、ケアマネジャーと一緒に確認しておくことをお勧めします。

先のことすべてが見えなくても、少し先までの道筋が見えるだけで、不安の質は変わります。

やり方への不安に対しては、一人で正解を探そうとせず、担当のセラピストやケアマネジャーに、今の対応の仕方を実際に見てもらう機会を作ることが役立ちます。

自分では気づけない改善点や、逆に「今のやり方で十分です」という確認をもらえることも、大きな安心材料になります。

自分自身への不安に対しては、介護以外の時間を、意識的に確保することが必要です。

これは後回しにされがちですが、支える側の生活が保たれていることは、介護そのものを続けていくための土台になります。


不安がゼロになることを目指さない

ここまで整理してきましたが、最後に一つ、お伝えしておきたいことがあります。

不安をすべて解消して、ゼロにすることを目指す必要はありません。

介護生活には、常にある程度の不確実さが含まれています。

その不確実さそのものを完全に消すことは、現実的には難しいことです。

目指すべきは、不安をゼロにすることではなく、「今、自分が何に不安を感じているのか」を、自分で分かっている状態を作ることです。

輪郭のはっきりしない不安のまま抱え続けるのと、「これが不安の正体だ」と分かった上で抱えるのとでは、心にかかる負担がまったく違います。


まとめ

「このままで大丈夫なのか」という不安は、一つの原因から生まれているわけではなく、身体面・期間・やり方・自分自身への不安が重なり合って生まれているものだと感じています。

すべてを一度に解消することは難しくても、どの部分に不安を感じているのかを整理できれば、少しずつ対処できることが増えていきます。

そしてもう一つ、忘れずにいてほしいことがあります。

それは、介護をしているご家族自身が体調を崩さないことです。

介護を続けていくためには、支える側の心身の健康が土台になります。

不安と向き合うことは大切ですが、それ以上に、ご自身の生活や休息を後回しにしすぎないでいただきたいと思っています。

これはあくまで、現場で介護をされている家族と接してきた中で私が感じていることであり、正解というわけではありません。

ご家庭ごとに事情も体力も違うので、一つの考え方として、参考にしていただければと思います。

これからも、不安をゼロにすることを目指すのではなく、無理なく付き合っていく方法を、一緒に探っていけたらと思っています。

お読みいただき、ありがとうございました。


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