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認知症の方へのリハビリって?|理学療法士が現場で感じていること

認知症になったら、リハビリしても意味ないんじゃないの?

現場で働いていると、ご家族からこの言葉を聞くことが割とよくあります。

「もう覚えられないし」

「すぐ忘れてしまうから、やる意味あるの?」

そう感じてしまう気持ち、すごくよくわかります。

ただ、現場でたくさんの認知症の方と関わってきた中で、自分の中で確信していることがあります。

認知症の方へのリハビリには、ちゃんと意味がある

今日はその理由を、現場のリアルを交えながらお話しします。


はじめに

認知症の方へのリハビリについて、ご家族からこんな相談をよく受けます。

・覚えられないのに、リハビリして意味があるの?

・本人が嫌がるんだけど、続けた方がいい?

・どこまで回復が期待できるの?

・進行を遅らせることはできるの?

・家でできることはあるの?

不安と疑問が、たくさん混ざっている状態だと思います。

自分も最初は、「認知症の方のリハビリって、どう関わればいいんだろう」と悩んだ時期がありました。

ただ、現場で関わる時間が増えるにつれて、見える景色が変わってきました。

今日はその経験を、できるだけ正直にお話しします。


認知症のリハビリには、ちゃんと意味がある

最初に結論からお話しします。

認知症の方へのリハビリには、大きく分けて3つの意味があります。

身体機能の維持(歩く、立つ、動くを保つ)

進行の緩やかさ(運動が認知機能に良い影響を与える)

生活の質の維持(その人らしい時間を保つ)

つまりリハビリは「治す」ためだけのものではありません。

今あるものを、できるだけ長く保つ

これも、立派なリハビリの目的です。

ここを理解してもらえると、認知症の方へのリハビリの見え方が大きく変わると思います。


意味①:身体機能を保つことが、認知症の方には特に大事

認知症の方は、身体機能が落ちるスピードが速いことが多いです。

理由はいくつかあります。

動く機会が減る(外出が減る、活動量が減る)

運動の意味を理解しにくい(自分から運動しようと思いにくい)

転倒への恐怖から動かなくなる(一度転ぶと動くのが怖くなる)

周りが「危ないから動かないで」と止めてしまう(結果的に動かなくなる)

こうして気づかないうちに、どんどん筋力や体力が落ちていきます。

そして筋力が落ちると、転びやすくなります。

転ぶと骨折のリスクが上がります。

骨折すると入院になり、入院すると認知症が一気に進むことが多いです。

動けなくなる → 認知症が進む

この負のスパイラルを止めること。

これが、認知症の方へのリハビリの大きな目的の一つです。

現場で関わっていても、定期的に体を動かしている方は、明らかに進行が緩やかな印象があります。


意味②:運動は、認知機能にも良い影響を与える

研究で、運動は認知機能にも良い影響を与えることがわかってきています。

特に、

有酸素運動(歩行、自転車こぎなど)

筋力トレーニング(立ち座り、足上げなど)

バランス運動(片足立ち、ステップ運動など)

これらを組み合わせると、認知機能の維持に効果があると言われています。

理由はいくつか考えられています。

・運動で脳の血流が増える

・運動が脳の神経成長因子を増やす

・体を動かすことで、脳のいろいろな部位が同時に働く

動くこと自体が、脳を使うこと

これは現場でも、すごく実感する部分です。

リハビリ中に少し体を動かしただけで、表情が明るくなったり、会話が増えたりする方が多いです。

「運動」と「認知機能」は、思っている以上に深くつながっています。


意味③:「その人らしい時間」を保つこと

そして、自分が一番大事だと思っているのがこれです。

リハビリは、検査結果を良くするためだけのものではありません。

・好きな散歩を続けられること

・トイレに自分で行けること

・お風呂に入れること

・家族と食卓を囲めること

・好きなテレビを見て笑えること

こういう「その人らしい時間」を保つこと。

これも、リハビリの大切な役割です。

認知症の方も、ご本人なりに「今を生きている」感覚を持っています。

その時間を、できるだけ長く、できるだけ快適に保つ。

これが、現場で自分が一番大事にしている視点です。


現場でのリアル:嫌がる方も多い

ただ正直、すべてがうまくいくわけではありません。

認知症の方のリハビリでは、こんなことがよくあります。

・「今日はやりたくない」と拒否される

・運動の意味が伝わらず、途中でやめてしまう

・覚えていないので、毎回最初からの説明になる

・気分の波が大きく、できる日とできない日の差が激しい

・ご家族との関係性で、機嫌が左右される

こういうとき、無理に行っても逆効果です。

運動が嫌なもの」と記憶に残ってしまうと、その後の関わりがさらに難しくなります。

なので現場では、

・本人が嫌がらない範囲で

・楽しいと感じてもらえる工夫をしながら

・短時間でも、毎日続けられる形で

こういう工夫を、その人ごとに考えています。

できる時に、できる範囲で

これが、認知症の方へのリハビリでは何より大事です。


現場で工夫していること

少しだけ、自分が現場で工夫していることをお話しします。

①「リハビリ」と言わずに誘う

「リハビリしましょう」と言うと、構えてしまう方が多いです。
別に体に悪いところがないと思っている方もいます。

一緒に歩きませんか

今日は天気がいいので、お散歩しましょうか

こんな自然な誘い方をすると、すんなり動いてくれることが多いです。

② 昔の話をしながら体を動かす

昔の記憶は、認知症の方でも残っていることが多いです。

若い頃、どんなお仕事をされていたんですか?

そんな話をしながら一緒に歩くと、表情がふっと明るくなって、自然と歩く時間が長くなったりします。

③ 同じ動作を、毎回同じ流れで

毎回違うことをすると、混乱してしまいます。

同じ時間、同じ場所、同じ流れで運動する。

これだけで、ご本人の安心感がまったく違います。

④ 成功体験で終わる

「できなかった」で終わると、次回への意欲が下がります。

今日も歩けましたね

しっかり立てましたね

最後は必ず、成功体験で締めるように意識しています。

⑤ ご家族の関わり方も一緒に考える

リハビリはセラピストだけがやるものではありません。

ご家族の関わり方が、毎日の生活そのものに影響します。

こういう声かけだと動きやすいですよ

こんな環境にすると、転びにくいですよ

こうしたことを、一緒に考えるのも自分たちの役割だと思っています。


ご家族に知っておいてほしいこと

ご家族向けに、知っておいてほしいことをまとめます。

① 完璧を求めない

毎日リハビリをしなくても大丈夫です。

今日は気分が乗らないみたい

そんな日があっても、責めなくていいです。

続けることが大事で、完璧にやることが大事なわけではありません。

② 「できないこと」より「できること」を見る

認知症が進むと、できないことが目立って見えます。

ただ、できることもちゃんと残っています。

まだ自分で歩ける

まだ自分でお茶を飲める

そういう「できていること」を、ご家族が認めてあげることが、本人の意欲にもつながります。

③ 1人で抱え込まない

ご家族の精神的・身体的な負担は、本当に大きいです。

デイサービス、訪問リハビリ、ショートステイなど、使えるサービスはたくさんあります。

専門家に任せられる部分は、任せる

これは、ご本人にとっても、ご家族にとっても大事な選択です。


まとめ

「認知症の方へのリハビリって意味あるの?」という疑問に対して、自分なりの答えをお話ししました。

整理すると、

・認知症のリハビリには「身体機能の維持」「進行の緩やかさ」「生活の質の維持」という3つの意味がある

・運動は認知機能にも良い影響を与える

・「その人らしい時間」を保つことも、立派なリハビリの目的

・無理にやらせない、楽しんでもらえる工夫が大事

・ご家族の関わり方も、リハビリの大きな一部

覚えられないからやっても無駄

このイメージは、現場の感覚とはちょっと違います。

覚えていなくても、体は反応します。

覚えていなくても、その時間は楽しめます。

覚えていなくても、その人らしい時間は確かに存在します。

リハビリは、過去を取り戻すためだけのものではなく、

今この瞬間を、できるだけその人らしく過ごしてもらうため

のものでもあると、自分は思っています。

ご家族が悩んだときに、この記事が少しでも参考になれば嬉しいです。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

少しでも参考になれば嬉しいです。


自分は理学療法士として、病院・デイサービス・訪問リハビリの現場で働いてきました。

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