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転倒しやすい人の特徴7つ|理学療法士が予防策と一緒に解説

「気をつけているのに、また転んでしまった」

「最近、つまずくことが増えた気がする」

「親が転ばないか、いつも心配」

こういった相談を、利用者さんやご家族からよくいただきます。

地域で暮らす高齢者の年間転倒発生率は、10〜25%と報告されています。

つまり、4〜10人に1人は1年のうちに1回は転んでいる、ということです。

決して珍しい出来事ではありません。

一度転倒した方は、再び転びやすくなる傾向もあります。

転倒→骨折→寝たきり、というルートに入ってしまう方も、少なくありません。

ただ、転倒しやすい方には、身体の状態、薬、環境という観点から、いくつか共通する特徴があります。

この記事では、理学療法士として実際に評価している視点と、信頼できる文献の情報も交えながら、転倒しやすい方の特徴を解説していきます。

「うちの親、当てはまるかも」と感じた方は、ぜひ最後まで読んでみてください。


はじめに

こんな悩みはありませんか?

・最近、よくつまずくようになった

・家の中で何度かヒヤッとしたことがある

・親の足元がおぼつかない

・一度転んでから、歩くのが怖くなった

・転倒予防のために、何をチェックすればいいか知りたい

転倒の原因は、大きく2つに分けて考えられます。

内的要因:身体の状態、病気、飲んでいる薬など、本人の中にある要因

外的要因:家の中の段差、照明、履物など、まわりの環境にある要因

この2つは別々に働くのではなく、組み合わさって転倒につながります(国立長寿医療研究センター)。

日本理学療法士協会のハンドブックでも、

身体の状態に問題がなくても、家の中に危険が3つあれば転びやすくなる

と指摘されています。

つまり、身体だけでなく、環境のチェックも同じくらい大事だということです。


転倒しやすい方に共通する7つの特徴

理学療法士として評価しているなかで、転倒しやすい方には次の7つの特徴があります。

・足やお尻まわりの筋力低下

・バランスを崩したときに立て直せない

・歩く速度が遅い、歩幅が小さい

・サルコペニア・フレイルがある

・薬をたくさん飲んでいる

・転倒への恐怖感、または逆に過信がある

・家の中の環境が整っていない

一つずつ、根拠と一緒に見ていきます。


① 足やお尻まわりの筋力低下

転倒しやすい方を評価していて、多く感じるのが下肢の筋力低下です。

特に重要なのが、次の2つの筋肉です。

腸腰筋(ちょうようきん):太ももを持ち上げる筋肉

中殿筋(ちゅうでんきん):お尻の横にあり、骨盤を支える筋肉

なぜ重要なのか

腸腰筋が弱ると、歩くときに足が上がらなくなります。

本人は「足を上げているつもり」でも、つま先が床から数mmしか上がっていない、ということがよくあります。

この状態だと、わずかな段差や絨毯の縁でもつまずきます。

中殿筋が弱ると、片足で立ったときに骨盤が傾き、横へのバランスを崩しやすくなります。

サルコペニアという考え方

加齢で筋肉が落ちていく状態を、「サルコペニア(加齢性筋肉減少症)」と呼びます。

50歳を過ぎたあたりから、年1〜2%ずつ筋肉量が減るとされています。

特に、瞬発力を出す筋肉(速い動きに使う筋肉)から先に減っていくため、

「とっさに足が出ない」という状態になりやすくなります。

ご家庭でできるチェック

・椅子から手を使わずに立ち上がれるか

・30秒間に何回、椅子から立ち座りできるか(8回未満は要注意)

・握力(男性28kg、女性18kgが目安)

予防のポイント

・スクワット、椅子からの立ち座り運動

・段差を使った昇り降り運動

・タンパク質をしっかり摂る(卵、豆腐、魚、肉)

サルコペニアの改善には、運動だけでなく栄養も一緒にが大原則です。

運動だけ、食事だけでは効果が出にくいとされています。


② バランスを崩したときに立て直せない

若い頃は、よろけてもとっさに足を踏み出して立て直せました。

でも、加齢とともに、この「立て直す反応」が遅くなっていきます。

専門的には

バランスを崩したときに反射的に足を踏み出す動きを、ステップ反応と呼びます。

高齢者では、

・このステップ反応が出るまでの時間が遅くなる

・足を出す幅が狭くなる

ことが分かっています。

つまり、「よろけてから足を出すまでの一瞬の遅れ」が、転倒につながります。

ご家庭でできるチェック

・片脚で何秒立てるか(5秒未満は転倒リスクが高め)

・手を前にどれだけ伸ばせるか(15cm未満は注意)

予防のポイント

・片足立ちの練習(壁や手すりにつかまって、10秒×左右)

・つま先立ち、かかと立ち

・歩きながら計算をするなど、「ながら動作」の練習

単純なバランス練習より、予想外の動きへの対応練習のほうが、転倒予防効果が高いとされています。


③ 歩く速度が遅い、歩幅が小さい

歩き方は、転倒リスクをとてもよく表します。

臨床でよく使われる評価が、「Timed Up and Go test(TUG)」です。

TUGテストとは

椅子から立ち上がり、3m歩いて、戻ってきて、また椅子に座るまでの時間を測ります。

目安は次の通りです。

13.5秒以上:転倒リスクが高い

20秒以上:日常生活で介助が必要なレベル

30秒以上:かなり介助が必要

歩行速度の目安

1.0m/秒未満:転倒リスクが高い

横断歩道を青信号で渡るのに必要な速度が、約1.0m/秒です。

「青信号で渡りきれない」と感じる方は、要注意のサインです。

転倒しやすい方の歩き方の特徴

・歩幅が小さい(ちょこちょこ歩き)

・足を引きずるように歩く

・身体が左右に大きく揺れる

・腕の振りが小さい

・かかとから着地できず、足の裏全体で着く

予防のポイント

・「いつもより少し大きめの歩幅で」を意識する

・床にテープを貼って、歩幅の目安にする

・歩くときに、腕をしっかり振る

自分の歩き方は、ご家族に動画で撮ってもらうと客観的に見られておすすめです。


④ サルコペニア・フレイルがある

サルコペニアは、前述したように加齢による筋肉の減少です。

一方、フレイルは、身体・精神・社会的な「虚弱状態」を指します。

フレイルは「健康な状態」と「要介護状態」の中間段階で、放っておくと要介護に進みますが、適切な介入で健康な状態に戻すこともできる、可逆的な段階です。

フレイルかどうかの目安(J-CHS基準)

次の5項目のうち、3つ以上当てはまれば「フレイル」、1〜2つで「プレフレイル」

・体重減少:6ヶ月で2kg以上

・筋力低下:握力が男性28kg未満、女性18kg未満

・疲労感:理由もなく疲れた感じが続く

・歩行速度低下:1.0m/秒未満

・身体活動量低下:定期的な運動をしていない

なぜ転倒と関連するのか

フレイルでは、筋力やバランスだけでなく、判断力、栄養状態、人とのつながりまで同時に低下します。

つまり、「身体の力」も「とっさの判断」も同時に落ちているため、転倒リスクが大きく上がります。

予防のポイント

・週2〜3回の筋力トレーニング

・ウォーキングなどの有酸素運動

・タンパク質、ビタミンD(魚、きのこ、日光浴)

・人と話す機会を持つ(デイサービス、地域の集まり)


⑤ 薬をたくさん飲んでいる

意外と知られていないのが、「薬と転倒の関係」です。

5種類以上の薬を併用している状態を、ポリファーマシーと呼びます。

これは、転倒リスクを大きく上げる要因として、厚生労働省のガイドラインでも明記されています。

転倒リスクを上げやすい薬

・睡眠薬、抗不安薬(特にベンゾジアゼピン系)

・抗うつ薬

・抗精神病薬

・降圧薬(血圧の薬)

・利尿薬

・痛み止めの一部(オピオイドなど)

なぜ転倒につながるのか

これらの薬には、ふらつき、めまい、眠気、注意力の低下、急に立ったときの血圧低下(起立性低血圧)といった副作用があります。

特に、睡眠薬は翌朝まで効果が残ることがあり、夜間や早朝のトイレ移動中の転倒原因になりやすいです。

注意したいサイン

・薬が増えてから、ふらつきが増えた

・夜中にトイレに起きたときに、ふらっとする

・薬を飲んでから1〜2時間が、特に不安定

対応のポイント

・主治医や薬剤師に、「転倒リスクが心配」と伝える

・「お薬手帳」を一冊にまとめる

自己判断で中断するのは危険(必ず医師に相談)

最近は、薬を整理する「ポリファーマシー外来」を持つ病院や、相談に乗ってくれる「かかりつけ薬剤師」もいます。

活用できる制度は、上手に使ってほしいと思います。


⑥ 転倒への恐怖感、または逆に過信

身体だけでなく、心の状態も転倒に大きく関わります。

①恐怖感が強いタイプ

一度転倒した方の半数以上は、「また転んだらどうしよう」という恐怖を抱えます。

この恐怖感が強くなりすぎると、

・動かなくなる

・外に出なくなる

・筋肉が落ちる

・さらに転びやすくなる

という悪循環に陥ります。

②過信しているタイプ

逆に、「自分はまだ大丈夫」と思いすぎるのも、転倒の原因です。

・脚立に登って電球を替える

・重い物を持って階段を上る

・急いで電話に出ようとする

こういった「ちょっとした無理」が、転倒のきっかけになります。

特に、軽い物忘れがある方は、自分の能力を実際より高く見積もる傾向があるので、注意が必要です。

対応のポイント

・恐怖感が強い方には、小さな成功体験を積み重ねる(短い距離から少しずつ)

・過信しているご家族には、客観的なテスト結果を共有する(TUGの秒数など)

「気持ち」の部分にも、丁寧にアプローチすることが大事です。


⑦ 家の中の環境が整っていない

転倒の約半数は、住み慣れた自宅で起きています(消費者庁の調査より)。

「家の中だから安全」というのは、実は誤解です。

転倒が起きやすい場所と原因

居室・寝室:絨毯の端、電気コード、ベッド周りの物

階段:暗い照明、手すりがない、段差が見えにくい

浴室・脱衣所:濡れた床、温度差で血圧が変動する

トイレ:夜間の暗さ、便座からの立ち上がり

玄関:上がり框(あがりがまち)、靴の脱ぎ履き

家の中のチェックリスト

・床に物が置かれていないか

・カーペットの縁が浮いていないか

・夜間の照明は十分か(センサーライトがおすすめ)

・浴室、トイレに手すりがあるか

・履物は、滑りにくいか、サイズは合っているか

対応のポイント

退院前訪問や訪問リハビリで、専門職に自宅を見てもらう

介護保険の住宅改修制度(20万円まで)を活用

福祉用具レンタルで手すりやスロープを設置

身体の機能を上げるには時間がかかりますが、環境を整えるのは今日からできる対策です。

即効性のある転倒予防として、まず取り組んでほしい部分です。


ご家庭でできる転倒リスクチェック

専門的な評価をしなくても、ご家庭で簡単にできるチェックを紹介します。

・椅子から、手を使わずに立てるか

・片足で5秒立っていられるか

・横断歩道を、青信号で渡りきれるか

・最近、つまずくことが増えていないか

・薬が5種類以上ある方は、ふらつきがないか

複数の項目が当てはまる場合、転倒リスクが高くなっている可能性があります。

一度、ケアマネジャーや理学療法士に相談してみてください。


ご家族にお願いしたいこと

ご家族にも、お伝えしたいことが2つあります。

1つ目は、「変化のサインを見逃さない」ということです。

・歩く速度が遅くなった

・つまずきが増えた

・椅子からの立ち上がりに時間がかかる

・最近、外出を嫌がるようになった

これらは、身体機能の低下、薬の影響、フレイルの初期サインかもしれません。

「気のせいかな」と感じたときこそ、専門職に相談してみてください。

2つ目は、「過保護にしすぎないでほしい」ということです。

「危ないから動かないで」と制限しすぎると、ますます筋力が落ちて、結果として転びやすくなります。

環境を整えたうえで、できる範囲で動いてもらう

このバランスが、最も転倒予防に効果的です。


まとめ

今回は、転倒しやすい方に共通する7つの特徴を、専門的な視点と一緒にお伝えしました。

・足やお尻まわりの筋力低下

・バランスを崩したときに立て直せない

・歩く速度が遅い、歩幅が小さい

・サルコペニア・フレイルがある

・薬をたくさん飲んでいる

・転倒への恐怖感、または過信

・家の中の環境が整っていない

転倒は、運や偶然ではなく、複数の要因の組み合わせで起こります。

逆に言えば、要因を一つずつ減らしていけば、確実に予防できます。

「気になる項目があった」という方は、まず一つでも、今日からできることを始めてみてください。


参考文献

・国立長寿医療研究センター「転びやすくなる原因は?」

https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/22.html

・日本理学療法士協会「転倒を予防していつまでも元気に」

https://www.japanpt.or.jp/activity/asset/pdf/handbook18_whole_compressed.pdf

・厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/kourei-tekisei_web.pdf

・日本サルコペニア・フレイル学会

https://www.jasf.jp/


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

少しでも参考になれば嬉しいです。


私は、理学療法士として、病院・デイサービス・訪問リハビリの現場で働いてきました。

このnoteでは、リハビリや介護に関する情報を、できるだけわかりやすくお伝えしています。

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